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会計・ファイナンス・監査2018.04.09 ASBJ 収益認識に関する会計基準等を公表

企業会計基準委員会(ASBJ)は、3月30日、「収益認識に関する会計基準」及び「収益認識に関する会計基準の適用指針」を公表しました。

 

ご承知の方も多いと思いますが、国際会計基準委員会(IASB)と米国財務会計基準審議会(FASB)は、共同で収益認識に関する包括的な会計基準の開発を行い、IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」は2018年1月1日以降開始する事業年度から適用されます。
これを受け、ASBJにおいて日本の収益認識に関する包括的な会計基準の開発に向けた検討が行われ、今回の公表に至っています。

 

1.開発にあたっての基本的な方針

収益認識に関する会計基準の開発にあたっては、IFRS第15号の基本的な原則を取り入れることを出発点としつつ、日本の実務に配慮すべき項目がある場合には、IFRS等との比較可能性を損なわない範囲で代替的な取扱いを追加することとしています。
また、連結財務諸表と個別財務諸表においては、同一の会計処理を定める(連単分離はしない)こととしています。

 

2.会計処理の考え方

IFRS第15号の概要については、このブログでも触れさせて頂いていますので参照して頂ければと思いますが、今回公表された公開草案も同じ考え方を基礎としています。

 

基本となる原則
約束した財・サービスの顧客への移転を、当該財・サービスと交換に企業が権利を得ると見込む対価の額で描写するように、収益の認識を行う。

基本となる原則に従って収益を認識するための5つのステップ
 ① 顧客との契約を識別する。
 ② 契約における履行義務を識別する。
 ③ 取引価格を算定する。
 ④ 契約における履行義務に取引価格を配分する。
 ⑤ 履行義務を充足した時にまたは充足するにつれて収益を認識する。

 

3.特定の状況または取引における取扱い

以下の11項目については、適用指針の中で、より具体的な取扱いが示されています。

 

① 財・サービスに対する保証
② 本人と代理人の区分
③ 追加の財・サービスを取得するオプションの付与
④ 顧客により行使されない権利(非行使部分)

 ※①から④までの詳細はこちら

 

⑤ 返金が不要な契約における取引開始日の顧客からの支払
⑥ ライセンスの供与
⑦ 買戻契約

 ※⑤から⑦までの詳細はこちら

 

⑧ 委託販売契約
⑨ 請求済未出荷契約
⑩ 顧客による検収
⑪ 返品権付きの販売

 ※⑧から⑪までの詳細はこちら

 

4.重要性等に関する代替的な取扱い

「1.開発にあたっての基本的な方針」のところで述べたように、日本の実務に配慮すべき項目がある場合には、IFRS等との比較可能性を損なわない範囲で代替的な取扱いが追加されており、適用指針の中で示されています。(詳細はこちら)

 

また、これまで日本基準で定められていたか実務の取扱いとして行われていた以下の会計処理は、今後認められなくなります。

 

・顧客に付与するポイントについての引当金処理
・返品調整引当金の計上
・割賦販売における割賦基準に基づく収益計上

 

5.表示及び開示

企業の履行と顧客の支払との関係に基づき、契約資産、契約負債または債権を適切な科目をもって貸借対照表に表示することとされていますが、早期適用時の経過措置として、契約資産と債権を区分表示せず、それぞれの残高を注記しないことができる取扱いが設けられています。

また、収益の表示科目についても、現在一般的に用いられている「売上高」という科目については、仮にその名称を変更する場合に影響が広範に及ぶと考えられることから、この会計基準等が適用される時点(「6.適用時期」を参照)までに検討することとされており、早期適用する場合は、「売上高」の科目を継続して使用することができるとされています。

注記事項については、「企業の主要な事業における主な履行義務の内容及び企業が履行義務を充足する通常の時点(収益を認識する通常の時点)」を注記することとされていますが、一方で、IFRS第15号に定められている注記事項については有用性とコストの評価を十分に行うことができないため、必要最低限の定めを除き、注記事項は定めないこととされています。ただし、会計基準等が適用される時点までに注記事項の定めを検討することとされています。

 

6.適用時期

強制適用の時期は平成33年4月1日以降開始する事業(連結会計)年度とし、平成30年4月1日以後開始する事業(連結会計)年度及び平成30年12月31日から平成31年3月30日に終了する事業(連結会計)年度の期末から早期適用が認められています。

早期適用の時期については、冒頭述べた通り、IFRSや米国基準の適用時期に配慮したものと考えられます。

収益認識に関する会計処理は日常的な取引に対して行われるものであり、会計基準の適用により従来と収益を認識する時期または金額が大きく異なる場合、企業の経営管理及び業務プロセス(システム対応含む)を変更する必要性が生じる可能性もあるため、新しい(改正された)会計基準に対する通常の準備期間よりも長い準備期間が想定されています。企業の経理担当者の皆様におかれては、新しい収益認識基準の影響度(インパクト)をできるだけ早期に分析し、必要な対応策を検討する必要があるものと考えられます。