租税条約を締結している国の海外関連者へ支払う配当・利子・使用料等の源泉徴収税額について、減免を受ける場合は租税条約に関する届出書を支払日の前日までに提出しなければなりません。
コロナの影響により国際郵便物が届かない事態が生じています。
この場合、租税条約の適用は受けられないのでしょうか。
今回は国税庁の質疑応答事例を紹介します。
当社(源泉徴収義務者)は、外国法人(非居住者等)へ源泉徴収の対象となる著作権等の使用料を支払う予定です。
しかし、今般の新型コロナウイルス感染症の世界的拡大に伴う国際郵便物の引受停止等により、期限(支払日の前日)までに届出書の提出ができそうにありません。
このような場合、租税条約による源泉所得税の免除は受けられないのでしょうか。
A:新型コロナウイルス感染症の影響により、期限までに租税条約に関する届出書の原本を提出できない場合には、新型コロナウイルス感染症が沈静化するまでの当面の対応として、源泉徴収義務者が非居住者等からメール等により受領した届出書(その添付書類を含みます。)を出力したものを税務署に提出することとして差し支えありません。
なお、事態が沈静化し、非居住者等から原本の提出を受け取った場合、税務署へ直ちに原本の提出を行う必要はなく、税務署から提出を求められるまでは源泉徴収義務者(支払者)が原本を保管しておけばOKとなっています。
当社(源泉徴収義務者)から源泉徴収の対象となる配当の支払を受ける外国法人(非居住者等)が、租税条約による源泉所得税の免除を受けるためには、租税条約に関する届出書に外国の税務当局が発行する居住者証明書を添付する必要があります。
しかし、新型コロナウイルス感染症の影響により、その外国の税務当局における居住者証明書の発行が遅延しており、届出書の提出期限までに居住者証明書を取得することが困難な状況となっています。
このような場合、租税条約による源泉所得税の免除は受けられないのでしょうか。
A:外国の税務当局のによる居住者証明書の発行が遅延している旨の申し立てがあり、非居住者が条約相手国の居住者であることが確認できる場合は以下の方法によれば適用が可能となります。
1)源泉徴収義務者が概ね1年以内に発行された非居住者の居住者証明を保管している場合
源泉徴収義務者がその写しのコピーを作成し、その届出書に添付して提出することで適用が可能となります。
2)非居住者が源泉徴収義務者の関連会社であって、条約相手国の居住者であることが明らかな場合
届出書の余白部分にその旨を記載して提出することで適用が可能となります。
その旨は次のように記載することとなっています。「所得者は、支払者の親会社であり、〇〇国の居住者であることが明らかである。居住者証明書の発行が遅延しているため、当該証明書は後日提出する。」
なお、この方法の場合、居住者証明を取得した際は上記提出済みの届出書の控えとともに居住者証明を提出する必要があります。
いかがでしょうか。
コロナの影響で様々な弊害が生じていますが、税務当局も柔軟な対応を行ってくれるケースも多々あります。
租税条約の適用を知らずに20.42%の源泉徴収を行っていた場合でも、租税条約の適用可能であることを知った後、租税条約に関する源泉徴収税額の還付請求書を提出することで源泉徴収された所得税の還付を受けることができます。
実務においては適用の可否判断が難しい場合はとりあえず20.42%の源泉徴収を行い、後日適用可否を判断することが肝要です。
源泉徴収漏れは罰則に繋がるので注意してください。
あすか税理士法人
【国際税務担当】街 有帆
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