日本国籍を有していない外国人の方が、国外にある不動産を売却した場合に、日本ではどのように課税されるのかを今回は確認したいと思います。
非永住者とはどういった人をいうのか、非永住者の課税の範囲については、今回は割愛させていただきます。
詳しくは、こちらをご覧ください。
非永住者の意義は1.で確認した通り、「居住者のうち、日本の国籍を有しておらず、かつ、過去10年以内において国内に住所又は居所を有していた期間の合計が5年以下である個人をいう」とされています。
それでは具体的に居住形態の判定を行い、非永住者に該当する場合を確認していきましょう。
具体例1)前提
判定日:2023.10.01
入国日(初):2018.11.15(その後出国なし)
判定
過去10年以内:2013.10.01~2023.09.30
住所又は居所を有していた期間の合計:2018.11.16~2023.9.30→4年10カ月と15日
結論:過去10年以内に国内に住所又は居所を有していた期間が5年以下であるため、非永住者
具体例2)前提
判定日:2023.10.01
入国日(初):2014.4.1
出国日(初):2017.6.30
入国日(2度目):2021.3.15(その後出国なし)
判定
過去10年以内:2013.10.01~2023.09.30
住所又は居所を有していた期間の合計:(初)2014.4.2~2017.6.30→3年2カ月と29日、(2度目)2021.6.16~2023.9.30→2年3カ月と15日→合計5年超
結論:過去10年以内に国内に住所又は居所を有していた期間が5年超であるため、非永住者以外の居住者(永住者)
【過去10年以内の計算】所得税法基本通達2-4の2
【国内に住所又は居所を有していた期間の計算】所得税法基本通達2-4の3
海外にある土地・建物等の不動産の譲渡による所得は、日本では国外源泉所得に該当します。
(1)永住者の課税関係
永住者と判断された場合には、国内源泉所得・国外源泉所得、国内払い・国外払い問わずすべての所得が課税対象となります。
つまり、日本ではない海外に所在する不動産の譲渡益に対して国内で所得税が課税されます。
ここで、「あれ?日本でも課税されて、その不動産が所在する国でも課税されてしまうのではないのか?」と疑問が湧いてくるかと思います。
海外における不動産所得について、該当国でどのように課税されるのかは、日本と該当国との租税条約を確認する必要があります。
租税条約を確認後、譲渡益に対して該当国である海外でも課税される場合には、該当国で課された所得税については、日本で分離課税による確定申告書を提出することにより外国税額控除を受けることができます。
(2)非永住者の課税関係
非永住者の国外源泉所得については、日本国内で支払われたものと国外から日本へ送金されたものに対して日本で課税対象となります。
つまり、国外から日本へ送金されない限り日本国内で課税されることはありません。
その場合、永住者のように日本で確定申告書を提出することにより外国税額控除を受けることはできません。
なぜなら、国内払いでないものや国外から日本へ送金されていないものは、そもそも日本と該当国で二重課税となっていないためです。
一方で、国外から国内へ送金され、租税条約を確認の上、該当国でも課税される場合には永住者の場合と同様に、日本で分離課税による確定申告書を提出することにより、外国税額控除を受けることができます。
【非永住者の外国税額控除の対象となる外国所得税の範囲】所得税法基本通達95-29
具体例1)
海外不動産譲渡額:1,000万円
海外不動産譲渡益:500万円
海外からの送金額:1,000万円
(1)国外源泉所得 500万円
(2)海外からの送金額1,000万円>譲渡益500万円
∴500万円が課税対象
具体例2)
海外不動産譲渡額:1,000万円
海外不動産譲渡益:500万円
海外からの送金額:400万円
(1)国外源泉所得 500万円
(2)海外からの送金額400万円<譲渡益500万円
∴400万円が課税対象
いかがでしたでしょうか。
まずは、居住者(永住者?非永住者?)・非居住者どの区分に該当するのかをご確認いただき、その上で、課税所得の範囲をご確認いただくことがポイントです。
非永住者に該当する場合には、国外源泉所得の中でも国内に送金されるものや国内で支払われるものに対して日本で課税されることになりますので、その点も注意が必要です。
二重課税になった場合には、確定申告書を提出する際に外国税額控除を受けるようにしましょう。
あすか税理士法人
【スタッフ】渋谷優果