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国内税務2022.01.05 電子取引のデータ保存、やむを得ない事情って?

電子帳簿保存法に関するQ&Aが公表されました。

 

 

 

税制改正大綱で電子取引のデータ保存について「やむを得ない事情」があれば2年間猶予を設けると明記されましたが、「やむを得ない事情」がどの程度のものなのかはっきりされていませんでした。

 

 

 

令和4年度税制改正大綱についてはこちら

 

 

【令和4年度税制改正大綱】主なもの「ざっくり」紹介

 

 

 

今回Q&Aの中で少し「やむを得ない事情」について触れられた部分がありますので紹介します。

 

 

 

(問1)当面、電子取引の取引情報に係る電子データ保存への対応が間に合いませんが、どのような対応をすればいいでしょうか。

 

 

 

【回答】

令和4年度税制改正で経過措置として整備された宥恕措置を踏まえ、令和5年 12 月 31 日までに行う電子取引については、保存すべき電子データを書面に出力して保存し、税務調査等の際に提示又は提出ができるようにしておいていただければ差し支えありません。

なお、令和6年1月1日以後に行う電子取引の取引情報については要件に従った電子データの保存が必要ですので、そのために必要な準備をお願いします。

 

 

 

【解説】

令和3年度税制改正で、従前認められていた、電子取引の取引情報に係る電子データを出力することにより作成した書面等の保存をもって、その電子データの保存に代えることができる措置(電子データの出力書面等による保存措置)が廃止されましたが、令和4年度税制改正においては、その電子データの保存要件への対応が困難な事業者の実情に配意し、引き続きその出力書面等による保存を可能とするための措置が講じられています。

具体的には、電子取引の取引情報に係る電子データの保存に関する当面の宥恕措置として、令和4年1月1日から令和5年 12 月 31 日までの間に申告所得税及び法人税に係る保存義務者が行う電子取引につき、その電子取引の取引情報に係る電子データを保存要件に従って保存をすることができなかったことについて、納税地等の所轄税務署長がやむを得ない事情があると認め、かつ、その保存義務者が税務調査等の際にその電子データの出力書面(整然とした形式及び明瞭な状態で出力されたものに限る。)の提示又は提出の求めに応じることができるようにしている場合には、その保存要件にかかわらず、その電子データの保存をすることができることとする経過措置が講じられたものです。

 

 

 

(参考)

この宥恕措置の適用にあたっては、保存要件に従って保存をすることができなかったことに関するやむを得ない事情を確認させていただく場合もありますが、仮に税務調査等の際に、税務職員から確認等があった場合には、各事業者における対応状況や今後の見通しなどを、具体的でなくても結構ですので適宜お知らせいただければ差し支えありません。

 

 

 

→「対応が間に合わない」という理由でOKということです。

ただ、税務調査があった際には対応状況や今後の見通しを「具体的でなくても構わない」のでお知らせください、とあります。

これだけ読むと「データ保存できていない→今は何もしてないけど今後は対応していく予定です」という受け答えだけでいいと読み取れてしまいます。

 

 

 

(問2)電子データを授受した場合であっても、令和5年 12 月 31 日までの間は、やむを得ない事情があれば、出力することにより作成した書面による保存が認められるのでしょうか。

 

 

 

【回答】

令和4年1月 1 日から令和5年 12 月 31 日までの間に電子取引を行う場合には、授受した電子データについて要件に従って保存をすることができないことについて、納税地等の所轄税務署長がやむを得ない事情があると認め、かつ、保存義務者が税務調査等の際に、税務職員からの求めに応じ、その電子データを整然とした形式及び明瞭な状態で出力した書面の提示又は提出をすることができる場合には、その保存要件にかかわらず電子データの保存が可能となり、また、その電子データの保存に代えてその電子データを出力することにより作成した書面による保存をすることも認められます。

なお、上記の取扱いを受けるに当たり税務署への事前申請等の手続は必要ありません。

 

 

 

【解説】

電子データの保存要件への対応が困難な事業者の実情に配意し、引き続きその出力書面等による保存を可能とするよう、令和4年1月 1 日から令和5年 12 月 31 日までの間に行う電子取引については、保存に係るシステム等や社内のワークフローの整備が間に合わない等のように、その電子取引の取引情報に係る電子データを保存要件に従って保存することができなかったことについて、納税地等の所轄税務署長がやむを得ない事情があると認め、かつ、保存義務者が税務調査等の際に、その電子データの出力書面等(整然とした形式及び明瞭な状態で出力されたものに限ります。)の提示又は提出の求めに応じることができるようにしている場合には、その保存要件にかかわらず電子データの保存が可能となり、また、その電子データの保存に代えてその電子データを出力することにより作成した書面等による保存をすることも認められます。

この取扱いは令和5年 12月 31 日までと期間を区切って認められているものであることから、事業者の皆様におかれては、令和6年1月 1 日以後に行う電子取引の取引情報については保存要件に従ってその電磁的記録の保存ができるよう必要な準備をお願いします。

 

 

 

(参考1)

上記の「やむを得ない事情」には、その時点までに要件に従って電磁的記録の保存を行うための準備を整えることが困難な事情等が該当します。

 

 

 

(参考2)

電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則の一部を改正する省令(令和3年財務省令第25号)附則第2条第3項((経過措置))の規定により読み替えて適用される規則第4条第3項ただし書((電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存に関する宥恕措置))では、この宥恕措置における「やむを得ない事情」が生じなかった場合において、保存要件に従って電子データの保存をすることができなかったと認められるときは、この限りではないとされています。この規定が適用される場面としては、例えば、令和6年1月1日以後に行う電子取引の取引情報についても保存要件に従って電子データの保存を行わないことを明らかにしている場合等が該当します。

 

 

 

→(問1)の「対応が間に合わない」というのは「保存に係るシステム等や社内のワークフローの整備が間に合わない等」ということですよということだろうと思います。

(参考1)の「やむを得ない事情」の解説が解説になってないですね。

(参考2)については猶予期間が終わった後の令和6年1月1日以後もデータ保存なんかしません!と言い切ってしまうと「やむを得ない事情」とはしませんよということです。

税務調査時に誠意は見せましょう。

 

 

 

(問3)やむを得ない事情が認められ、かつ、整然とした形式及び明瞭な状態で出力された書面の提示又は提出の求めに応じることができれば、電子データによる保存をしていなくても要件違反にならないとのことですが、「整然とした形式及び明瞭な状態で出力された書面」とはどのようなものでしょうか。また、「保存義務者が国税に関する法律の規定による当該電磁的記録を出力することにより作成した書面…の提示又は提出の要求に応じることができるようにしている」とありますが、具体的にはどのような対応が求められるのでしょうか。

 

 

 

【回答】

規則第2条第2項第2号において、電磁的記録の画面及び書面への出力は「整然とした形式及び明瞭な状態で、速やかに出力することができる」必要があると規定されており、電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則の一部を改正する省令(令和3年財務省令第 25 号)附則第2条第3項((経過措置))の規定により読み替えて適用される規則第4条第3項((電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存に関する宥恕措置))の規定による宥恕措置における「整然とした形式及び明瞭な状態で出力された書面」についても、同号における「整然とした形式及び明瞭な状態」と同様に、書面により作成された場合に準じた規則性を有する形式で出力され、かつ、出力された文字を容易に識別することができる状態をいいます。

また、「保存義務者が国税に関する法律の規定による当該電磁的記録を出力することにより作成した書面…の提示又は提出の要求に応じることができるようにしている」については、税務調査等の際に、税務職員の求めに応じ、その電子データを出力することにより作成した書面の提示又は提出をしていただく必要があります。

 

 

 

【解説】

電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則の一部を改正する省令(令和3年財務省令第 25 号)附則第2条第3項((経過措置))の規定により読み替えて適用される規則第4条第3項((電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存に関する宥恕措置))に規定する、「整然とした形式及び明瞭な状態」とは、書面により作成される場合に準じた規則性を有する形式で出力され、かつ、出力される文字を容易に識別することができる状態をいいます。

また、「保存義務者が国税に関する法律の規定による当該電磁的記録を出力することにより作成した書面…の提示又は提出の要求に応じることができるようにしている」については、税務調査等の際に、税務職員の求めに応じ、その電磁的記録(電子データ)を出力することにより作成した書面の提示又は提出に応じていただく必要があります。

なお、令和3年度税制改正前(令和4年1月1日前)においては、電子取引の取引情報に係る電子データを出力することにより作成した書面については、その取引情報の受領が書面により行われたとした場合又はその取引情報の送付が書面により行われ、その写しが作成されたとした場合に、国税に関する法律の規定により、その書面を保存すべきこととなる場所に、その書面を保存すべきこととなる期間、保存を行うこととされていました。令和4年度税制改正で整備された宥恕措置により、税務調査等の際に、税務職員の求めに応じて提示又は提出をしていただく必要がある書面についても、令和3年度税制改正前の取扱いや、その提示又は提出を遅滞なく行っていただく必要があることを踏まえると、税務調査等が行われうる期間、適正な場所で保存を行っていただく必要があります。

 

 

 

→今までどおり紙でもらった書類と同等に保存してね、ということです。無茶苦茶な保存をしている場合は怒られるかもしれません。

 

 

 

(問4)やむを得ない事情が認められ、かつ、出力することにより作成した書面の提示又は提出に応じることができれば、電子データによる保存をしていなくても要件違反にならないとのことですが、事前に税務署への申請等をすることは必要でしょうか。

 

 

 

【回答】

やむを得ない事情の有無や出力された書面については、必要に応じて税務調査等の際に確認することとしており、事前に税務署への申請等をすることは必要ありません。

 

 

 

→猶予について事前に税務署への申請は不要ということです。税制改正大綱のとおりです。

 

 

 

この手の話は厳しくしてしまうと猶予の意味をなさないものとなってしまいますので、比較的緩いニュアンスとなっています。

令和6年1月1日以降はちゃんとしてねと明記されていますので今は対応が難しい方も期日に向かって準備を行うことが肝心かなと感じます。

とはいえ、2年後にはまた取り扱いが変わっている可能性もありますが・・・

いずれにせよデータ保存しろという方針は変わらないと思いますので準備を進める必要性はあります。

 

 

 

あすか税理士法人

【国内税務担当】高田和俊

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