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国際税務2021.09.08 輸出業者の消費税還付申請。税務署は何を見る?

コロナ禍の影響による税務調査の効率化により、実地調査が減少しています。
一方で、消費税の還付については税務署へ関係書類を郵送することによる調査が増えている印象です。

初めて消費税の還付申請をする場合は不正が多いことから一定の調査が行われることがほとんどです。
今回は何らかの物品を輸出している事業者の還付申請の調査において、どのような書類が求められ、どのような点が見られるのかを解説したいと思います。

 

商売が軌道に乗っておらず、還付の要件は満たす(商品は輸出している)が取引に関する書類が整理しきれていない事業者の方は参考にして頂ければと思います。

 

1.売上に関する書類


 

①注文書
架空取引による消費税の不正還付事例が多いことから、税務当局は商売の一連の流れを把握し、取引実態を証明する書類を求めます。
クライアントが発行した注文書がある場合は問題ありませんが、メール、LINE等のSNSで受注しているような場合はそのメールを印刷したり、画面のスクリーンショットが必要となります。
口頭契約の場合は証明が難しいので注意が必要です。この場合は請求書や代金の受領を示す領収書などを必ず整備しましょう。

 

②請求書
請求書への記載事項は消費税法で規定されています。
書類作成者や取引先の名称、取引年月日、取引内容、税率毎に区分した税込対価の合計です。
これらの事項が記載された請求書があるかどうか確認してください。

 

③輸出許可通知書 or 輸出したことが確認できる書類
輸出免税の適用を受ける場合はこの書類が非常に重要になります。
20万円以上の物品を輸出する場合、通常は輸出許可書が発行されますので、必ず保管してください。
なお、輸出許可書に記載された品目、数量、金額などが請求書やパッキングリストと一致していることが重要です。
特に請求書と実際の入金額が異なるケース(いわゆるアンダーバリューなど)がよくありますが、許可申請に虚偽があった場合は関税法違反として最悪の場合輸出免税の適用がなくなるので注意してください。

 

20万円未満の物品の輸出はEMSなどの国際郵便で行うことができます。
この場合輸出申告をして許可を受ける必要がないので、書類管理が甘くなりがちです。
国際郵便の輸出免税の取扱も厳しくなり、帳簿への輸出事項の記載でよかったものが、2021年10月1日以降はEMSの場合は郵便局の引受票と発送伝票の控えの保存が要件となりました。
その他の国際郵便でも同様で、輸出者と輸出先の名称及び住所、品名毎の数量や価額、引受年月日が記載された書類の保存が必要となります。

 

④船荷証券
輸出をする時は貨物を証券化した船荷証券(B/L)が発行されます。
輸入先が貨物を受け取るために必ず必要となる書類であるため、輸出の手続きをしていれば保管されているはずです。
輸出許可書と同じく、輸出の実態を証明するために必要な書類ですので必ず保管しましょう。

 

⑤代金受取が確認できる書類
銀行へ振り込まれる場合は相手先が印字しているページのコピーで問題ありません。
外貨建取引の場合は通帳のコピーでは相手先がわからないケースがほとんどです。通帳のコピーに加え、銀行で発行される被仕向送金の案内も必要となります。

 

日本で前金を受け取り、後日輸出を行うというケースがあると思います。
現金で受領する場合は領収書を必ず発行しましょう(印紙を忘れずに)。

最近はWeChatなどのSNS上で決済が完了するケースもあります。
この場合、入金額から個別の取引を把握することは困難なことが多いため、決済時の画面のスクリーンショットを保管するなど、どの請求に対する決済なのかをすぐに調べられるようにしておきましょう。

 

⑥総勘定元帳
売上、仕入、売掛金、買掛金の計上額が請求書や支払と合致しているかを確認するために求められます。
会計処理の方法は会計事務所によってバラバラですが、輸出入などの海外取引に精通していないと輸出書類との整合性に気づかないまま処理してしまい、税務調査で指摘されるという事態が起こり得ます。

 

 

2.仕入に関する書類


 

売上に関する書類に仕入バージョンです。ほとんど同じですので自社で発行する書類の参考にしてもらうとよいかと思います。

①納品書
納品日、商品名、数量が記載されたものを保管しましょう。
取引先によっては請求書兼納品書という場合もありますが問題ありません。

 

②請求書
取引年月日、自社と仕入先の名称、商品名、数量、単価、税区分別の税込合計額の記載があるものを保管しましょう。
記載不備があると消費税の還付対象の仕入としてみなされない可能性が生じます。

 

③代金の支払が確認できる書類
基本的には銀行振込で対応することがベストです。
銀行振込の場合は通帳のコピーや窓口で処理した振込依頼書で取引先名や金額が確認できるのでこれらを保管しましょう。

事業を開始して銀行口座の開設ができておらず、現金でやりとりする場合もあると思います。
現金で支払う場合は必ず領収書を発行してもらいましょう。
領収書は日付、金額、発行者の氏名、宛名、押印、但書き(商品の内容を簡単に記載しましょう)を記載してもらいましょう。
記載事項と請求書の内容が合致していれば、取引事実の証明が可能となります。

 

 

いかがでしょうか。どれも当たり前の書類ばかりと思われるかもしれません。
しかし、取引の形態は企業によって様々で、発行される書類や注文から納品までの流れもそこに紐つく書類や資金の流れもバラバラです。
海外取引については不慣れな税理士事務所も多く、還付申請に必要な書類整備の指導ができていないケースが多いと感じています。

日本は東南アジアなどの諸外国と異なり、きっちり書類を整えておけば必ず還付されます。
初めて還付される方はしっかり対応してもらえる専門家を選んでください。

 

 

あすか税理士法人

【国際税務担当】街 有帆

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