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国内税務2022.04.06 給与と外注費の違いを解説!

1.給与と外注費の判断について


 

従業員に支払う金銭は給与として処理をし、外注先(個人事業者)に支払う金銭は外注費として処理しますよね。

 

給与と外注費では税務上の取り扱いが変わってくる部分があるため、この給与と外注費の判断については税務調査でよく指摘される論点であり、その判断にあたっては以下の通達を理解しておく必要があります。

 

所得税基本通達1-1-1では、給与と外注費の区分について次のように記載されています。

 

 

事業者とは自己の計算において独立して事業を行う者をいうから、個人が雇用契約又はこれに準ずる契約に基づき他の者に従属し、かつ、当該他の者の計算により行われる事業に役務を提供する場合は、事業に該当しないのであるから留意する。したがって、出来高払の給与を対価とする役務の提供は事業に該当せず、また、請負による報酬を対価とする役務の提供は事業に該当するが、支払を受けた役務の提供の対価が出来高払の給与であるか請負による報酬であるかの区分については、雇用契約又はこれに準ずる契約に基づく対価であるかどうかによるのであるから留意する。この場合において、その区分が明らかでないときは、例えば、次の事項を総合勘案して判定するものとする。

(1) その契約に係る役務の提供の内容が他人の代替を容れるかどうか。

(2) 役務の提供に当たり事業者の指揮監督を受けるかどうか。

(3) まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失した場合等においても、当該個人が権利として既に提供した役務に係る報酬の請求をなすことができるかどうか。

(4) 役務の提供に係る材料又は用具等を供与されているかどうか。

 

 

赤字部分を会社の立場から簡単にまとめると以下のようになります。

 

出来高払の給与を対価とする役務の提供は事業に該当しない(つまり給与)

役務の提供の対価を雇用契約又はこれに準ずる契約に基づき支給しているのであれば給与

②の区分が明らかでないなら、(1)~(4)を総合的に勘案して、判定をする

 

 

上記②の雇用契約について掘り下げると、民法623条に定めがあり、

当事者の一方が相手方に対して労働を従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる

とされています。

 

一方、請負契約については民法632条に定めがあり、

当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる

とされています。

 

 

上記③は(1)~(4)を総合的に勘案する必要があるのでさらに説明を加えていきます。

 

(1)のポイントは、代替性。会社が役務の提供を受ける際、契約に基づいた内容であれば、誰がその役務の提供を遂行するのかを問わないものは外注費であるといえるでしょう。

(2)は、その言葉通り役務の提供にあたり会社の指揮監督の下にあるのであれば給与、本人の裁量の余地が大きい場合には外注費であるといえるでしょう。

(3)のポイントは、報酬と役務の提供の関係性。完成品の引渡しを前提に報酬を支払うことになっている、つまり②の民法上の言葉を借りると、仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約しているなら、たとえ不可抗力で滅失した場合であっても、滅失が生じるまでの役務の提供について報酬を支払う必要はありません。このような関係性であれば、外注費であるといえるでしょう。

(4)のポイントは、その言葉通り役務の提供に必要な材料や用具等を準備するのが誰であるか。材料や用具等を準備するのに必要な経費が自己負担なのであれば、外注費であるといえるでしょう。

 

給与とすべきか外注費とすべきか、①や②に該当せず判断に迷う際には、(1)から(4)どれかひとつを当てはめて判断するものではなく、総合的に判断することが必要であることをここで改めて強調しておきます。

 

 

 

 

2.給与と外注費で生じる違いについて


 

さらに、給与であるか外注費であるかによって、対応が異なる点がいくつかあるので注意が必要です。

 

 

イ 社会保険料の会社負担

給与の場合、健康保険・厚生年金保険・介護保険・労災保険・雇用保険といった社会保険の加入義務が生ずる場合や、社会保険料を会社が負担する必要があります(会社の負担割合等は各社会保険により異なります)。

一方、外注費の場合には、会社に社会保険の加入義務はなく、保険料を負担する必要もありません。

 

 

ロ 所得税の源泉徴収義務

給与の場合、支給額から通勤費(非課税部分)や社会保険料額を控除した金額に基づき、所得税の源泉徴収をする必要があります。従業員の給与から徴収した所得税は、その給与の支給をした月の翌月10日までに税務署に納付する必要があります。

一方、外注費の場合には、所得税法第204条に列挙されている報酬等のみ源泉徴収が必要とされています。報酬から徴収した所得税についても、その報酬の支払いをした月の翌月10日までに税務署に納付する必要があります。

参考:国税庁HP  https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2792.htm

 

 

ハ 消費税の取扱い

給与の場合、その支給は雇用契約に基づき支給されるものであり、消費税の課税対象取引ではなく不課税とされています。そのため、支払った金額を消費税の課税仕入れとして控除することは出来ません。

一方、外注費の場合には、消費税の課税対象取引に該当するため、支払った金額を消費税の課税仕入れとして控除することが出来ます。なお、2023年10月の適格請求書等保存方式(インボイス制度)導入後は、課税事業者の資格が”適格請求書発行事業者登録をした者”になるため、課税仕入れとして控除することができる外注費には一定の制限が加わることに注意が必要です。

 

 

3.まとめ


 

上述したように給与と外注費の判断については税務調査でもよく指摘される論点です。

 

そういった状況に備えて、契約書において事実関係を明確にし、実態もその契約書に基づいていることが必要だと考えられます。

 

 

あすか税理士法人

【スタッフ】今西麻侑子