これまで国内源泉所得の支払者を経由して書面で税務署へ提出していた「租税条約に関する届出書」が電子申請できるようになりました。
少しずつですが税務行政のICT化が進んでいるように感じます。
今回は書面提出に代えて、令和3年4月1日より電磁的方法により提出できるようになった制度について解説します。
例えば日本法人などから非居住者や外国法人が配当や利子を受け取る場合、通常は20.42%の源泉徴収がされます。
この源泉徴収税率について、非居住者が居住している国と日本との間で租税条約が締結されている場合、減免又は免除となることが少なくありません。
ただし、これらの優遇規定は何もせずに受けられるわけではなく、これまでは「租税条約に関する届出書」という書類を非居住者は配当や利子を支払う法人など(源泉徴収義務者)に書面で提出し、それを源泉徴収義務者が税務署へ提出することが必要でした。
この手続きが簡略され、下記のようなイメージで電磁的方法によって提出することが可能になります。
おそらく税理士の方が代行で書類作成を行うことが多いと思いますが、e-Taxで提出できることにより時間短縮と利便性が確実に向上します。
以下、「非居住者が源泉徴収義務者に提供する場合」と「源泉徴収義務者が税務署に提供する場合」に分けて解説します。
電磁的利用を行うために満たす要件は大きく下記の2点です。
(1)非居住者は氏名又は名称を明らかにする措置を講ずること
(2)源泉徴収義務者は非居住者より情報の提供を受けられる環境を整え、非居住者を特定し、PDFによる電磁的記録で提供を受けること
(1)について、
具体的には、電子証明を付して源泉徴収義務者へ送信する、あるいは、源泉徴収義務者から通知されたIDとパスワードを利用して情報を送信することが必要となります。
つまり、源泉徴収義務者はIDにより非居住者を区別し、指定したパスワードで保護されたPDFを受け取る等の処置が必要になると考えられます。
(2)について、
情報の提供を受けられる環境というのは、簡単にイメージできるのはメールを受信できる環境とお考えください。
非居住者を特定するというのは、身分証明書や居住者証明により相手の情報と対象国で居住している実態を確認する作業が必要とお考えください。
PDFは解像度が200dpi以上、赤・緑・青の階調が24ビットカラー以上という指定がありますが、普通にPDFに変換すれば要件は満たすと考えられます。
源泉徴収義務者(国内源泉所得の支払者)は届出に記載すべき事項をスキャナにより読み取る方法等により作成したイメージデータ(PDF)をe-Taxを利用して送信できることとなりました。
電子データを非居住者から受取り、税務署へ提出する方法と非居住者から書面で届出書を受領し、それをPDF化して送信するという方法が可能となっています。
少し面倒なのは源泉徴収義務者がe-Taxにより送信する際に電子署名を付す必要がある点です。
とはいえ、一度手続きを行ってしまえばそれほど難しい処理ではないので電子証明書については取得をお勧めいたします。
電子証明書の取得方法はこちら
なお、以前の書面提出の際は正副2部受領し、1部を控え用として保管することが通常でした。
今後電磁的な方法により取得した場合についてもデータはサーバーに保管する、あるいは印刷した上で紙ベースで保管するといった対応は引き続き必要と考えられます。
いかがでしょうか。
租税条約に関する届出は、誰が最終の提出者か、どこに印鑑を押せばいいのかなど、見慣れない書式でよくご質問を頂く手続きの一つです。
2021年6月16日時点では税理士が代理で送信できるという記載はありませんが、今後は対応していくことが想定されます。
こういった手続きはどんどん電子化し、業務の無駄を省いていってもらいたいものです。
あすか税理士法人
【国際税務担当】街 有帆
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