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国際税務2024.10.23 海外進出する際の選択肢とは?

 

1.はじめに


 

日本での商流が安定し海外への進出を検討しているが、どの形態を選択すればいいのか、何が違うのか、、と悩まれる場合があるかと思います。
今回は、税務的な観点からの相違点を簡単にまとめていきます。

 

 

 

2.進出形態の種類


 

法人が海外進出する際の形態には、主に「駐在員事務所」「支店」「子会社」の3つがあります。
 
「駐在員事務所」は、本社への連絡事務所として位置付けられています。
現地での情報収集・市場調査・広告宣伝・連絡業務などの日本親会社のための補助的・準備的な活動を行うことが認められ、原則として直接的な営業活動は認められていません。

直接的な活動とは具体的に、契約交渉や販売活動を行ったり、それらから収益を得ることをいいます。つまり、駐在員事務所は、収益活動を行うことができない事業体となります。

 
「支店」は、日本法人の一部として位置付けられています。
駐在員事務所とは異なり、現地での営業活動が認められており、
一般的に日本法人のPE(恒久的施設)として扱われます。

 
「子会社」は、独立した法人格として取り扱われます。
つまり、支店とは異なり、日本法人とは別人格の法人となります。

 

 

 

3.進出形態の比較


 

【登記の必要性】
 
「駐在員事務所」日本において駐在員事務所の登記の必要はありません。
 
「支店」日本において海外支店の登記が必要です。
 
「子会社」現地の法令に従った登記が必要です。
 
 
【法人税の税務申告の有無】
 
「駐在員事務所」
一般的に、現地での税務申告義務はありません。
駐在員事務所で生じた各種費用は、日本法人の法人税申告書上で損金として取り扱われます。
 
「支店」
一般的に、駐在員事務所とは異なり、海外支店のみの課税所得の計算を行い、現地で税務申告義務が発生します。
日本では、日本法人(本社)と海外支店の所得を一体として課税所得を計算します。
海外支店の所得がマイナスである場合には、日本の本店の所得と相殺が可能です。
現地と日本で現地の所得について二重課税となるため、二重課税を排除する仕組みとして、外国税額控除制度が設けられています。

 

「子会社」
一般的に、現地の法令に従って、海外子会社の課税所得の計算を行い、現地で納税申告義務が発生します。原則として、支店とは異なり、海外子会社の所得のマイナスを日本親会社の利益と相殺することはできません。
 
 
【リスク】
 
「駐在員事務所」
PEとして取り扱われることによる課税のリスクがあります。
一般的にPEには該当しないものとされ、「PEなければ課税なし」といった国際税務のルールに基づき、駐在員事務所はその国で法人税の課税義務が生じないとされていますが、進出先の国や駐在員事務所が行う活動内容や機能によっては、PEとして認定され、現地において課税される可能性もあるため、注意が必要です。
 
「支店」
海外支店の所得がいくらであるかということがポイントとなります。
本店との内部取引も多いことが予想されますので、海外支店と国内本店との間の利益操作も比較的容易となってしまい、適正な価格の設定を行っているかなど注意が必要です。
 
「子会社」
海外子会社に出向した社員の給与を日本親会社・海外子会社がそれぞれどこまで負担するかの負担割合や、
海外子会社の設立費用をどこまで日本親会社負担とすべきか否かなど、
それらの支払いが海外子会社への寄付金として認定課税されるリスクがあるため、その際は注意が必要です。
詳しくは、こちらをご覧ください。
 
他にも、親子会社・兄弟会社間での取引価格は適正であるかなどの問題が論点になりやすいため、こちらも注意が必要です。
きちんと契約書を締結することや、取引金額の根拠を明確にすることが大切です。
 
 

4.まとめ


 

いかがでしたでしょうか。
海外進出の初期段階としては、駐在員事務所の設置が最も取組みやすいかと思います。
その後、販路拡大が見込まれると判断した場合に、上記の内容も踏まえ、支店若しくは子会社設置を検討頂くという流れが良いかと思います。

 

あすか税理士法人

【スタッフ】渋谷優果