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国内税務2019.11.27 償却資産税見直しのススメ~還付を受けるために~

1.意外と間違いの多い償却資産税申告

 

毎年12月になると年末調整、翌年1月になると法定調書合計表や給与支払報告書(住民税が決まる書類)の提出があります。

経理部署の方はバタバタする時期ですよね。

 

そして、1月の忙しさを増幅させる、もう一つのイベントがあります。

 

そう、償却資産税の申告です。

 

前任の経理責任者から引継ぎを受け、前年の資産の増減(購入や売却・廃棄など)を粛々と申告している方も多いのではないでしょうか?

 

でも、その償却資産税申告、正しいでしょうか!????

 

正しく申告出来ているケースの方がレアかも!?と個人的には思っています。(弊社のクライアントは除きます!)

 

しかも、必要以上に税金を支払っているケースが多いように感じます。

必要以上に税金を支払っていても、市役所は自動的には返還してはくれません。

何故なら、皆さんが自主的に申告した数値に基づいて自動的に課税するのが市役所等の仕事だから。

 

そこで今回は、誤解を生みやすい償却資産税のポイントを説明します。

読んでいただいた皆さんで、節税を狙いましょう!(正しく納税しましょう!)

 

 

2、償却資産税とは?

 

償却資産税=毎年1月1日現在、償却資産を保有する事業者(法人、個人事業主)に課される税金

 

償却資産=土地、家屋以外の事業で使い得る有形固定資産(遊休・未稼働資産を含む)

 

1月1日現在に保有する償却資産について、その市区町村毎に申告する必要があり、その評価額(取得価額ではありません)が150万円以上となれば償却資産税が課税されます。税額は評価額×1.4%です。

 

具体的には法人や個人事業主が保有する次のようなものに課税されます。

 

  • 構築物:門、塀、舗装路面、立体駐車場、立体駐車場など
  • 機械装置:加工機械、製造機械、建設工業機械など(法人税・所得税と同じ)
  • 船舶・航空機:レジャーボート、ヨット、ヘリコプターなど
  • 車両運搬具:大型特殊自動車(フォークリフトなど)
  • 工具器具備品:事務机、応接セット、パソコン等OA機器、壁掛けエアコンなど

 

3、こんな事例、ありませんか??

基本的な償却資産税の対象資産を見てきました。

ここからは「ミスが多い事例トップ6」を見ていきましょう。

 

(1)建物附属設備

自社保有建物に対して行った「附属設備」に区分される資産は、『家屋』として固定資産税が課税されるため、償却資産税は課税されません。

これらの例示は次の通りです。

床、壁、天井仕上げ、動力配線設備、屋内コンセント配線設備、屋内照明設備、電話配線設備、屋内給排水設備、屋内ガス設備、大小便器、家屋一体型冷暖房設備(天井埋め込み等)、換気設備、火災報知設備、消火栓設備、スプリンクラー、エレベーター、エスカレーターなど

 

例えば、保有社屋に取り付けた天井埋め込み式のエアコン、償却資産に含めて申告してしまっていませんか??

今すぐ修正申告書提出しましょう!!!

 

(2)除却処理漏れ・タイミング間違い

設備を廃棄した場合は、会社の帳簿から除却処理を通して削除されることとなります。

黒字法人はこの除却処理が漏れるケースはレアですが、赤字法人は除却処理が漏れているケースが見受けられます。いずれにしても法人税・所得税が変わらないため失念しやすいからですね。

確かに赤字法人が除却処理を失念しても法人税等の金額は基本的に変わりませんが、償却資産税は違います!

除却処理漏れが発覚したら、今すぐ修正申告しましょう!!!

 

また、法人については除却処理のタイミングも大切です。

例えば2020年3月決算法人が、2019年12月に資産の廃棄を行ったとします。

中小企業の税務会計では2020年3月に廃棄を行ったとして除却処理を行っても、2020年3月期の課税所得(利益)が変わらないため有利不利が発生しません。

この会計処理に基づいて2020年の償却資産税を申告すると、2020年1月時点における当該資産は、実際には存在しないにもかかわらず帳簿上は存在してしまっているため、結果として1年分無駄に償却資産税を支払っている可能性があります。

除却タイミングを間違えた場合は、今すぐ修正申告しましょう!!!

 

(3)少額資産

償却資産税は租税特別措置法による「@30万円未満」の少額資産は償却資産税の課税対象となります。

一方、法人税法・所得税法による「@20万円未満」の一括償却資産は償却資産税の課税対象外となります。

会社が選択した償却方法(通常の資産として償却するのか、一括償却資産として3年均等償却するのか、少額資産として一時損金等にするのか)に準じて償却資産税を申告することになります。

あまり深く考えずに30万円未満少額資産を選定した結果、一括償却資産として処理できる資産が、通常の資産として償却しているケースが散見されます。

そのような場合は、会社の経理方法をしっかり検討しましょう!!!

 

(4)提出先間違え

償却資産税はその資産が所在する市区町村毎に申告が必要で、評価額150万円未満は免税(免税点と言います)という判定もその市区町村ごとに行います。

従って、提出先を適当に申告する(例えばまとめて一つの市区町村へ提出)をしてしまうと、免税点のメリットを適切に受けることが出来ないため、結果として損してしまうことになります。

提出先を改めて確認し、必要に応じて修正申告しましょう!!!

 

(5)車両運搬具

車両運搬具のうち償却資産税の対象となるのは「大型特殊車両」だけです。

自動車税や軽自動車税が課税されるものは償却資産税が課税されません。

原付バイクなどを償却資産に含めて申告してしまっていませんか?

今すぐ修正申告しましょう!!!

 

(6)無形資産や繰延資産

「無形資産」や「繰延資産」は償却資産税の対象外です。

対象資産として申告してしまっていませんか?

今すぐ修正申告しましょう!!!

 

(おまけ)償却資産税の軽減(減免)措置

「生産性向上特別措置法」に基づく償却資産税の軽減制度があります。

ざくっとこの制度のイメージをお伝えすると、「先端設備等導入計画」を役所へ提出し、その計画の認定をうけてから、設備投資実行、そして償却資産税の申告時に所定の手続きをとれば償却資産税が3年間免除等される制度です。

東京都が公開している情報も参照してみてください。

こちらは事後的な手続き不可ですので、大規模設備投資がある場合は事前に認定経営革新等支援機関へご相談されることをお勧めいたします。

 

いかがでしたでしょうか?

償却資産税は毎年課税される税金で、一度資産を登録したらその後見直すこともおざなりになりがちです。

償却資産税を正しく理解し、正しく申告することで大きな節税に繋がり得ますので、是非見直しにチャレンジして下さい!!