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会計・ファイナンス・監査2021.07.07 改訂コーポレートガバナンス・コードが公表されました

東京証券取引所は、6月11日に改訂コーポレートガバナンス・コードを公表しました。2018年に改訂が行われて以来3年ぶりの改訂となりましたが、今回の改訂のポイントについて解説したいと思います。

 

 

1.今回の改訂のポイント


 

東京証券取引所のホームページによれば、今回の改訂のポイントとして大きく以下の4点が挙げられています。

 

①取締役会の機能発揮
②企業の中核人材におけるダイバーシティ(多様性)の確保
③サステナビリティ(持続可能性)を巡る課題への取り組み
④東京証券取引所が予定している市場区分の見直しにおける「プライム市場上場会社」に求められる取り組み

 

今回のブログでは、特に①と③に焦点を当ててみたいと思います。

 

 

2.取締役会の機能発揮


 

コーポレートガバナンス・コードが導入された目的である「持続的な成長と中長期的な企業価値向上」のために、上場会社の取締役会には以下の機能が求められています。(基本原則4)

 

・企業戦略等の大きな方向性を示すこと
・経営陣幹部による適切なリスクテイクを支える環境整備を行うこと
・独立した客観的な立場から、経営陣・取締役に対する実効性の高い監督を行うこと

 

このような機能を充実させるために、従来のコーポレートガバナンス・コードにおいても、取締役会に関する様々な原則が示されてきましたが、今回、さらに以下の点が改訂されました。

 

①独立社外取締役の有効な活用(原則4-8)

 

今回の改訂によって、独立社外取締役を

プライム市場上場会社:取締役全体の3分の1以上

その他の市場の上場会社:2名以上

を選任することが求めれられました。

 

先に述べたような取締役会に求められる機能を発揮するためには、取締役会に企業外部の視点・意見を取り込むことが必要不可欠とされてきました。

 

これは、私の経験上も言えることですが、一定数の独立社外取締役がいることによって、取締役会等でも意見を述べやすくなる面はあると考えられ、経営に外部の視点・意見がより反映されるものと期待されます。

 

また、同様の趣旨から、独立社外取締役には、他社での経営経験を有する者を含めるべきである点も明示されました。(補充原則4-11①)

 

②取締役会メンバーのスキル等の組み合わせの開示(補充原則4-11①)

 

取締役会に求められる機能を発揮するために、経営戦略に照らして自らが備えるべきスキル等を特定した上で、取締役の選任に関する方針・手続の中で、経営環境や事業特性に応じた取締役の有するスキル等の組み合わせを開示することが求められました。これは、一部の企業では既にスキル・マトリックスという形で開示されており、この活用が今後進んでいくことが予想されます。

 

これによって、自社の取締役会メンバーにはどのような専門分野や能力等が必要であるのかを議論していくことが必要になると考えられ、今後非常に重要な取り組みになっていくのではないかと考えられます。また、当然ながら、そのようなスキル等を持った人材で取締役会メンバーが構成されるように取締役が選任されることも重要となります。この点は③指名委員会・報酬委員会の活用にも繋がるお話です。

 

③指名委員会・報酬委員会の活用(補充原則4-10①)

 

これまでも、監査役会設置会社や監査等委員会設置会社については、取締役の指名や報酬については、代表取締役社長に一任するのではなく、任意の仕組みとして指名委員会や報酬委員会を活用することが推奨されてきました。

 

今回の改訂では、指名委員会・報酬委員会に求められる役割として、経営陣幹部・取締役の指名には後継者計画が含まれること、ジェンダー等の多様性やスキルの観点を含めた関与・助言が含まれることが明示され、より積極的に活用することが求められるようになったと考えられます。

 

また、プライム市場上場会社の場合は、各委員会の構成員の過半数を独立社外取締役とすることを基本とし、その委員会構成の独立性に関する考え方・権限・役割等を開示することが求められるようになりました。これは、形式的な対応ではなく、より実効性の高い仕組みを構築する必要があるということが明示されたものと考えられます。

 

 

3.サステナビリティ(持続可能性)を巡る課題への取り組み


 

今回の改訂では、上場会社がサステナビリティに関する取り組みや開示を強化することを求める記述が見受けられます。しかし、サステナビリティへの取り組みといったような形でまとまった記述がなされている訳ではないため、私なりに少し整理してみました。

 

①サステナビリティに関する取締役会の役割(補充原則4-2②)

 

まず、取締役会は、自社のサステナビリティを巡る取り組みについての基本的な方針を策定することが求められました。また、人的資本・知的財産への投資等の重要性に鑑み、経営資源の配分や事業ポートフォリオに関する戦略の実行が企業の持続的成長に資するような実効的な監督を行うことも求められています。

 

②サステナビリティに関する開示の充実(補充原則3-1③・補充原則5-2①)

 

①を受けて、経営戦略等の開示においては、取締役会で決定された事業ポートフォリオに関する基本的な方針やその見直し状況、サステナビリティについての取り組み、人的資本や知的財産への投資等についての開示を行うことが求められています。

 

さらに、プライム市場上場会社においては、気候変動に係るリスクや収益機会が自社の事業活動等に与える影響について開示の質と量の充実を図ることも求められました。

 

いずれにしても、今後各社の取締役会において、自社のサステナビリティに関する取り組みをどのように考えるのかを十分に議論した上で、それを経営戦略や諸々の開示に結び付けることが重要になってきます。また、私個人としては、サステナビリティに関する知見が十分ではなく、議論に参加するための基本的な知識の習得ということも重要になってくると考えています。

 

 

先にも述べた通り、コーポレートガバナンス・コードは、上場会社の持続的な成長と中長期的な企業価値向上のために、取り組むべき方向性を示したものであり、各企業はその内容に対して真摯に向き合う必要があると考えられます。

 

その一方で、規則(ルール)とせずに原則(プリンシプル)しているのは、各社の事情に合わせてその採用を検討する必要があることも考慮されているということがあります。これは、言い方を変えれば、形式的な対応に終始していても、あまり意味がないということでもあり、コーポレートガバナンス・コード対応をどのように進めていくべきなのかといった議論も必要な局面に差し掛かっているのではないかと考えられます。

 

 

あすかコンサルティング株式会社

【会計コンサルティング担当】津田 佳典

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