前回のブログでアメリカの証券口座における配当金の源泉徴収税率が異なる理由を説明しました。
今回はこの配当金(外国証券会社)の日本での確定申告について説明いたします。
大前提として、日本居住者はアメリカやその他外国の証券会社で源泉徴収されているか否かに関わらず配当や株式譲渡などの全世界の所得について日本で確定申告しなければなりません。
つまり、日本居住者が海外の証券口座あるいは外国企業から受けた配当金は日本で確定申告が必要となります。
日本における上場株式の配当については総合課税と申告分離課税の2種類の課税の方法があります。
総合課税は他のすべての所得と合算して確定申告を行う方法です。
申告分離課税はその名前の通り、他の所得とは分離して、配当に対して15.315%の所得税、5%の住民税を課税し、税計算を完結させる方法です。
未上場株式は総合課税、上場株式は総合課税か申告分離課税を選択できます。
では、外国証券会社経由で受け取る配当金はどのような取り扱いになるのでしょうか。
前回のブログで説明した以下のアメリカで流通している株式をベースに説明したいと思います。
①米国上場株式
②ADR
③Master Limited Partnership
④REIT
⑤OTC
申告分離課税の選択が可能な「上場株式等」の範囲の中に「外国金融商品市場において売買されている株式等」が含まれいます(措置法37条の11)。
株式等の「等」の中には、受益権の募集が公募の方法により募集される投資信託や債券なども含まれるとご理解ください。
つまり上記①~⑤は金融商品取引所に上場されている株式あるいは公募の方法で募集された投資信託と考えられることから申告分離課税の選択は可能と考えられます。
③や④については、米国においてパススルー課税を選択できることから、投資内容に応じて事業所得や不動産所得として申告しているケースが見受けられます。
しかし、日本の裁判例を見てみると米国LLCや米国LPSは法人格があるものとしてパススルー課税の適用はなく、LLCやLPSの投資先が何であれ、受け取った金額は配当と判断されています。
LLCやLPSからの配当が上場株式等の配当に該当するか否かの判断は銘柄や募集方法によって慎重に行う必要があり、内容によっては上場株式等に該当せず総合課税という判断になる可能性もあるので注意が必要です。
外国で源泉徴収された配当を日本でも確定申告すると日本でも課税されることとなり、二重課税の問題が生じます。
この二重課税解消のために外国で源泉徴収された税額を日本の所得税から控除する仕組みが外国税額控除です。
外国税額控除は租税条約で定められた税率を限度とすると規定されています(所得税法施行令222条の2)。
日米租税条約では一般的な個人投資家が保有する株式の配当に係る源泉税率は10%を限度とすると規定されています(日米租税条約10条)。
つまり10%を超える源泉徴収がされた場合、超える税率分は外国税額控除の適用はないこととなります。
例えば租税条約では10%が限度と規定されているが、アメリカで売買可能な株式のうち上記③LPSや④REITは非居住者は37%の源泉徴収がされます。
この場合差額の27%は外国税額控除できないというのが原則です。
一方でアメリカで課税される37%はアメリカでは事業所得等として課税されていることが考えられることから、日本でも同様の区分に応じて外国税額控除の適用が可能と考えると日本の総合所得の最高税率は45%ですので全額外国税額控除の対象となります。
この場合、日本ではその配当について総合課税で申告することが求められる可能性がありますので、慎重にご判断ください。
いかがでしょうか。
海外の株式等については内容も課税の方法も日本とは異なります。日本の税法に当てはめた際にどういった取り扱いとなるかをしっかり検討することを忘れないでください。
今回は配当の説明でしたが、外国の証券会社で発生した配当と株式譲渡損が損益通算できるかという点についてはこちらのブログを参考にしてください。
あすか税理士法人
【国際税務担当】街 有帆