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国際税務2023.03.08 国際税務の基礎⑧~非居住者が課税される国内源泉所得その6(配当、貸付金利子)~

前回は公社債の利子について確認いたしました。

今回は他国に子会社があるケースではよく目にする配当、貸付金の利子について確認いたします。

 

1.配当


 

1)配当とは

源泉徴収となる配当は所得税法第24条第1項に規定する配当等のうち,次に掲げるものとされています(所法161条1項9号)。

① 内国法人から受ける所得税法第24条第1項に規定する剰余金の配当,利益の配当,剰余金の分配又は基金利息
② 国内にある営業所に信託された投資信託(公社債投資信託及び公募公社債等運用投資信託を除く。)又は特定受益証券発行信託の収益の分配

 

2)租税条約上の取扱い

租税条約上の配当金の定義は国内法と大きな違いはありませんが、一般的には以下のように定められています。

「この条において、「配当」とは、株式その他利得の分配を受ける権利(信用に係る債権を除く。)から生ずる所得及び支払者が居住者とされる締約国の租税に関する法令上株式から生ずる所得と同様に取り扱われる所得をいう」

 

また、配当については多くの租税条約で限度税率が定められています。アメリカの場合は通常は10%、関係会社からの配当については持分に応じて5%免税という取扱が規定されています。

 

租税条約に関する届出書を提出することで、通常の20.42%の源泉ではなく、租税条約に基づく限度税率の適用となるので提出を忘れないようにしてください。

 

 

2.貸付金利子


 

1)貸付金利子とは

貸付金の利子として源泉徴収の必要があるのは次のように規定されています。

「国内で業務を行う者に対する貸付金のうち,その者の国内において行う業務の用に供されている部分の利子(基通161-29)」

 

ただし,この貸付金には,いわゆる売掛金債権及びその対価の決済に関する金融機関の債権で,その履行期間が6か月以下のものは含まれません

この種の債権で,その成立の際の履行期間は6か月を超えなかったものがその後の事情の変更により6か月を超えることとなった場合は,その期間の延長が行われた後の部分の債権に係る利子のみが含まれます

 

また,逆に債権成立の当初から期間の更新や手形の書換え等によりその期間が6か月を超えることが予定されているような債権については,たとえ形式的な履行期間が短期であっても,実質的に債務が履行されるまでの期間によって判定されます。

 

履行期間が実質的に長期にわたるものは,金利等により見分けることができるのが通例です。
通常の商取引に伴って生ずる短期の売掛金の支払猶予,シッパーズ・ユーザンス又は通常の形式による輸入ユーザンスに随伴して支払われる利子は,ここにいう貸付金の利子に含まれず,所得税の源泉徴収の対象となりません。この種の短期債権の利子で源泉徴収の対象とならないものは,恒久的施設を通じて行う事業に帰せられるものでない限り,申告納税の義務はありません。

 

なお,船舶,航空機の購入のための貸付金については,いわゆる債務者主義(それ以外の貸付金は使用地主義)をとり,居住者又は内国法人の業務の用に供される船舶,航空機の購入のための貸付金のみがここにいう貸付金に該当することとされています(令283条2項)。

 

2)貸付金に準ずるもの

通達において、貸付金に準ずるもの(実質的に貸付金とみなすもの)が規定されています。

国内において業務を行う者に対する債権で以下のようなものは貸付金として取り扱われますので注意してください(基通161-30)。

⑴ 預け金のうち国内の営業所等に預け入れられた(令161の1の8ハ)預貯金以外のもの
⑵ 保証金,敷金その他これらに類する債権
⑶ 前渡金その他これに類する債権
⑷ 他人のために立替払をした場合の立替金
⑸ 取引の対価に係る延払債権
⑹ 保証債務を履行したことに伴って取得した求償権
⑺ 損害賠償金に係る延払債権
⑻ 当座貸越に係る債権

 

3)租税条約の取扱い

租税条約では、一般に、公社債の利子(所法161条1項8号)と貸付金の利子(所法161条1項10号)と区別することなく、利子所得として取り扱っています。

租税条約では、利子はその支払者の居住する国で生じたものとする旨を定めていることが一般的です。

他方で、一方の締約国で事業を行う者の借入金等の債務で、その債務がその事業を行う恒久的施設に関連して生じ、かつ、その利子がその恒久的施設によって負担されている場合には、その利子の発生地は、債務者の居住地国ではなく、恒久的施設が存在する他方の締約国とされる点に注意してください。

あすか税理士法人

【国際税務担当】街 有帆

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参考規定:

(国内業務に係る貸付金の利子)
令第283条 法第161条第1項第10号(国内源泉所得)に規定する政令で定める利子は,次に掲げる債権のうち,その発生の日からその債務を履行すべき日までの期間(期間の更新その他の方法(以下この項において「期間の更新等」という。)により当該期間が実質的に延長されることが予定されているものについては,その延長された当該期間。以下この項において「履行期間」という。)が6月を超えないもの(その成立の際の履行期間が6月を超えなかつた当該債権について期間の更新等によりその履行期間が6月を超えることとなる場合のその期間の更新等が行われる前の履行期間における当該債権を含む。)の利子とする。
一 国内において業務を行う者に対してする資産の譲渡又は役務の提供の対価に係る債権
二 前号に規定する対価の決済に関し,金融機関が国内において業務を行う者に対して有する債権
2 法第161条第1項第10号の規定の適用については,居住者又は内国法人の業務の用に供される船舶又は航空機の購入のためにその居住者又は内国法人に対して提供された貸付金は,同号の規定に該当する貸付金とし,非居住者又は外国法人の業務の用に供される船舶又は航空機の購入のためにその非居住者又は外国法人に対して提供された貸付金は,同号の規定に該当する貸付金以外の貸付金とする。
3 法第161条第1項第10号に規定する債券の買戻又は売戻条件付売買取引として政令で定めるものは,債券をあらかじめ約定した期日にあらかじめ約定した価格で(あらかじめ期日及び価格を約定することに代えて,その開始以後期日及び価格の約定をすることができる場合にあつては,その開始以後約定した期日に約定した価格で)買い戻し,又は売り戻すことを約定して譲渡し,又は購入し,かつ,当該約定に基づき当該債券と同種及び同量の債券を買い戻し,又は売り戻す取引(次項において「債券現先取引」という。)とする。
4 法第161条第1項第10号に規定する差益として政令で定めるものは,国内において業務を行う者との間で行う債券現先取引で当該業務に係るものにおいて,債券を購入する際の当該購入に係る対価の額を当該債券と同種及び同量の債券を売り戻す際の当該売戻しに係る対価の額が上回る場合における当該売戻しに係る対価の額から当該購入に係る対価の額を控除した金額に相当する差益とする。