前回までに引き続き、国際税務の基礎である各種所得の取り扱いについて紹介していきます。
今回は「不動産貸付等」による所得について解説いたします。
不動産貸付等とは、国内にある不動産,国内にある不動産上に存する権利若しくは採石法の規定による採石権の貸付け、鉱業法の規定による租鉱権の設定又は居住者若しくは内国法人に対する船舶若しくは航空機の貸付けによる対価をいい、これらは所得税法において国内源泉所得とされ源泉徴収の対象となります。
一般的にイメージする土地や建物だけでなく、船舶や航空機についてもここに含まれることに注意が必要です。
また、「船舶若しくは航空機の貸付けによる対価」というのは,船体又は機体の賃貸借であるいわゆる裸用船(機)(bare boat charter)契約に基づき支払を受ける対価をいいます。
裸用船(機)(bare boat charter)契約は税金対策でよく利用される航空機リースやコンテナリースをイメージしてもらうとわかりやすいと思います。
乗組員とともに利用させるいわゆる定期用船(機)(time charter)契約又は航海用船(機)(trip charter)契約に基づき支払を受ける対価は,これには該当せず、国際運輸業所得に該当することが一般的です。
その国内業務に係る国内源泉所得の範囲は,法人税法第138条第3項及び法人税法施行令182条の規定(下記条文参照)に基づいて判定されます。
また,船舶又は航空機の貸付けに伴い,貸主がその船舶又は航空機の運航又は整備に必要な技術指導を行うための役務の提供をした場合に支払を受ける対価については,契約書等において船舶又は航空機の貸付けによる対価と当該役務の提供による対価とが明らかに区分されている場合を除き,その総額が船舶又は航空機の貸付けによる対価に該当するものとされます。
外国法人が居住者又は内国法人に対して貸付を行った船舶又は航空機の使用場所がもっぱら国外であっても国内源泉所得に該当します。
つまり、使用される場所のいかんは,源泉地の判定上関係がないことを意味しています。
〈法人税法第138条第3項〉
恒久的施設を有する外国法人が国内及び国外にわたつて船舶又は航空機による運送の事業を行う場合には,当該事業から生ずる所得のうち国内において行う業務につき生ずべき所得として政令で定めるものをもつて,国内源泉所得とする。
〈法人税法施行令182条〉
法人税法第138条第3項(国内源泉所得)に規定する政令で定める所得は、外国法人が国内及び国外にわたつて船舶又は航空機による運送の事業を行うことにより生ずる所得のうち、船舶による運送の事業にあつては国内において乗船し又は船積みをした旅客又は貨物に係る収入金額を基準とし、航空機による運送の事業にあつてはその国内業務(国内において行う業務をいう。以下この条において同じ。)に係る収入金額又は経費、その国内業務の用に供する固定資産の価額その他その国内業務が当該運送の事業に係る所得の発生に寄与した程度を推測するに足りる要因を基準として判定したその外国法人の国内業務につき生ずべき所得とする。
1)不動産
租税条約では,不動産の賃貸料による所得については,その不動産の所在地国にも課税権を認めているのが一般的です。
2)船舶及び航空機の賃貸料
租税条約においては,船舶及び航空機の裸用船(機)契約に基づく賃貸料を不動産の賃貸料として取り扱っていないのが一般的です。
多くの条約では,使用料条項において,「設備の使用料」又は「船舶・航空機の裸用船(機)料」と規定されています。なお,使用料条項にこれらの規定がない場合には,通常,事業所得条項が適用されます。
また,国際運輸業所得については,その事業を営む企業の本国でのみ課税し,源泉地国での課税は免除しているのが一般的です。
例えば、日米租税条約においては、日米租税条約第6条2項で航空機(裸用機)は不動産とはみなさないと規定されています。
また、日米租税条約12条2項(使用料の規定)においても、規定されていないことから、使用料にも該当しません。
このことから、日米租税条約においては航空機のリース料は事業所得に該当(日米租税条約第7条)し、所得が日本の恒久的施設に帰属しない限り、日本では免税となります。
恒久的施設帰属所得については、こちらのブログを参考にしてください。
いかがでしょうか。
土地や建物などについては非常にシンプルですが、船舶や航空機については国内法と租税条約で取扱が異なるケースがあります。
租税条約の適用を受けるためには租税条約に関する届出を提出する必要があり、提出が漏れると国内法に照らして源泉徴収が必要となりますのでご注意ください。
あすか税理士法人
【国際税務担当】街 有帆
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