前回は非居住者が課税される国内源泉所得のうち、恒久的施設帰属所得について解説しました。
今回は国内源泉所得のうち、「国内にある資産の運用又は保有による所得」、「国内にある資産の譲渡による所得として政令で定めるもの」、「国内にある土地等又は建物等の譲渡による対価」について解説いたします。
どの所得も日常的に発生する所得ですので、参考にしてください。
国内にある資産は概ね次の資産が国内にあるかどうかにより判定します。
①動産→その所在地。ただし,国外又は国内に向けて輸送中の動産については,その目的地とします。
②不動産又は不動産の上に存する権利→その不動産の所在地
③登録された船舶又は航空機→その登録機関の所在地
④鉱業権,租鉱権又は採石権(これらの権利に類する権利を含む。)→その権利に係る鉱区又は採石場の所在地
ただし、次に該当するものは上記の所得から除かれます。
これは所得税の源泉徴収のみで課税を完結させることから、法人税の課税対象とならないようにするためです。
(イ) 債券利子等
(ロ) 配当等
(ハ) 貸付金利子等
(ニ) 使用料等
(ホ) 事業の広告宣伝のための賞金
(ヘ) 生命保険契約に基づく年金等
(ト) 給付補塡金等
(チ) 匿名組合契約等に基づく利益の分配金等
その他、非居住者の居住者に対する貸付金の利子並びに個人が国内で生活の用に供する動産の使用料も含まれます。
政令では次の①から⑦までに掲げる所得が,国内にある資産の譲渡による所得として掲げられています。
① 国内にある不動産の譲渡による所得
② 国内にある不動産の上に存する権利等の譲渡による所得
国内にある不動産の上に存する権利,鉱業法の規定による鉱業権又は採石法の規定による採石権の譲渡による所得が該当します。
③ 国内にある山林の伐採又は譲渡による所得
④ 内国法人の発行する株式の譲渡による所得で次に掲げるもの
内国法人の発行する株式その他内国法人の出資者の持分の譲渡による所得で,「株式等の買集めによる所得」又は「株式等の事業譲渡類似の譲渡による所得」に該当するもの
⑤ 不動産関連株式の譲渡による所得
⑥ 国内にあるゴルフ場の所有等に係る法人の株式の譲渡による所得
⑦ 国内にあるゴルフ場等の利用権の譲渡による所得
租税条約において譲渡収益については,原則として譲渡者の居住地国のみにおいて課税できることとされています。
国内源泉所得として日本で課税されるのは,上記①~⑦からわかるように国内に資産や権利が所在する場合です。
なお株式のみ、居住地国課税が原則ですが、不動産関連株式(その価値の50%超が不動産から構成される法人の株式)の譲渡収益については不動産の所在地国においても課税できることとされていますので注意してください。
国内にある土地若しくは土地の上に存する権利又は建物及びその附属設備若しくは構築物の譲渡による対価は,所得税法において国内源泉所得とされ,源泉徴収の対象となります。
日本の居住者が非居住者に対して不動産の譲渡対価を支払う場合には源泉徴収漏れがよくおきます。
源泉徴収を忘れた場合は、支払者に罰則が適用されますので非居住者と取引する場合はご注意ください。
ただし,その譲渡対価が1億円以下であり,かつ,譲受人である個人がその土地等を自己又はその親族の居住の用に供する場合の対価は除かれます。
外国法人が国内にある不動産を譲渡した場合の所得は,法人税の課税対象となる国内源泉所得に該当し,申告納税が必要となります。
日本に恒久的施設がない外国法人であっても、法人税の確定申告が必要となる点に注意が必要です。
譲渡対価の10%の源泉徴収が行われますので、外国法人は法人税の確定申告を行うことで源泉徴収された税額の精算を行います。
損失の場合に確定申告をしないケースも見受けられますが、この場合は源泉徴収税額の還付を受けることになるので、必ず申告してください。
いかがでしょうか。
国内に資産が所在する≒国内源泉所得として日本で課税というイメージをまずは持ってください。
特に注意すべきは源泉徴収です。
非居住者に対して国内源泉所得の支払いをする場合は源泉徴収が必要となるケースが多々あります。
今回ご紹介した不動産等の譲渡対価に係る源泉徴収は対価の額が高額になることから、源泉徴収税額も高額になりがちです。
忘れてしまうと罰則も多額となるので非居住者と取引を行う際はご注意ください。
次回以降も引き続きその他の国内源泉所得について解説していきたいと思います。
あすか税理士法人
【国際税務担当】街 有帆
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