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国内税務会計・ファイナンス・監査2025.02.26 企業会計基準委員会 防衛特別法人税の税効果会計での取扱いを公表

2025年2月、企業会計基準委員会は(ASBJ)は、補足文書「2025年3月期決算における令和7年度税制改正において創設される予定の防衛特別法人税の税効果会計の取扱いについて」(以下、補足文書)を公表しました。今回は、この内容についてお話させて頂きます。

 

 

1.防衛特別法人税とは?


 

2024年12月27日に閣議決定された令和7年度税制改正大綱において、防衛力強化に係る財源確保のための税制措置の1つとして「防衛特別法人税(仮称)」の創設が掲げられ、これに関する規定を含む改正税法の法案が2025年2月4日に国会に提出され、国会で審議中となっています。

(余談ですが、防衛力強化に係る財源確保のもう1つの税制措置はたばこ税の見直しとなっています。)

 

防衛特別法人税の概要は、以下の通りとなっています(補足文書において、改正税法の抜粋が掲載されていますので、合わせてご確認ください)。

 

1.納税義務者

各事業年度の所得に対して法人税を課される法人

 

2.税額の計算

防衛特別法人税の額

=各課税事業年度の課税標準法人税額(基準法人税額-基礎控除額)×4%-税額控除

 

3.基準法人税額とは?

次の制度を適用しないで計算した各事業年度の所得に対する法人税額(附帯税の額を除く)とされています。

・所得税額の控除

・外国税額の控除

・分配時調整外国税相当額の控除

・仮装経理に基づく過大申告の場合の更正に伴う法人税額の控除

・戦略分野国内生産促進税制のうち特定産業力基盤強化商品に係る措置の税額控除及び同措置に係る通算法人の仮装経理に基づく過大申告の場合等の法人税額の加算

・控除対象所得税額等相当額の控除

 

 

4.基礎控除額とは?

年500万円とされています。なお、グループ通算制度を適用する通算法人の基礎控除額は、年500万円を各通算法人の基準法人税額の比で配分した金額となります(通算法人全体で年500万円になると考えられます)。

 

5.税額控除

防衛特別法人税の額を算出するにあたっては、以下の税額控除を行うことが認められています。

・外国税額の控除

・分配時調整外国税相当額の控除

・控除対象所得税額等相当額の控除

・仮装経理に基づく過大申告の場合の更正に伴う防衛特別法人税額の控除

 

 

6.申告及び納付等

①防衛特別法人税の申告期限及びその申告に係る防衛特別法人税の納期限は、各事業年度の所得に対する法人税の申告期限及び納期限と同一となります。また、電子申告の特例についても、各事業年度の所得に対する法人税と同様となります。

 

②法人税ついていわゆる欠損金の繰戻還付がある場合には、

法人税の還付金の額×4%×(課税所得年度の課税標準法人税額)÷(課税所得年度の)基準法人税額

によって算出された金額が併せて還付されます。

 

7.適用時期

防衛特別法人税は令和8年(2026年)4月1日以後開始する事業年度から適用されます。

 

 

 

2.税効果会計での取扱い


 

現在、防衛特別法人税を創設するための法案は国会で審議中ですが、補足文書の公表は、この法案が令和7年(2025年)3月31日までに成立する場合を想定して、令和7年(2025年)3月31日に決算日を迎える企業の防衛特別法人税の取扱いを明らかにし、実務に資するための情報を提供することを目的としています。

 

 

(1)税効果会計における実効税率に関する規定

 

税効果会計に係る会計基準の適用指針(企業会計基準適用指針第28号 以下、税効果会計適用指針)によれば、税効果会計における実効税率に関する規定として、以下のものがあります。

 

第4項(11)

「法定実効税率」とは、グループ通算制度を適用する場合を除き、次の算式によるものをいう。

   法定実効税率=   法人税率×(1+地方法人税率+住民税率)+事業税率

  +事業税率(標準税率)×特別法人事業税率     

1+事業税率+事業税率(標準税率)×特別法人事業税率

 

 

第46項

法人税、地方法人税及び特別地方法人税(基準法人所得割)について、繰延税金資産及び繰延税金負債の計算に用いる税率は、決算日において国会で成立している法人税法等(法人税、地方法人税及び特別法人事業税(基準法人所得割)の税率が規定されている税法をいう。)に規定されている税率による。

 

 

(2)防衛特別法人税の税効果会計の適用における取扱い

 

補足文書において、防衛特別法人税は、税効果会計適用指針第46項に掲げられている税金には明示されていないものの、法人税に対する付加税として課されるものであるため、法人税その他利益に関連する金額を課税標準とする税金である法人税等に該当するとの見解が示されています。

 

従って、改正税法が成立した場合には、法人税、地方法人税及び特別法人事業税(基準法人所得割)と同様に取り扱うことになり、その結果、法定実効税率の算式は、以下のように修正されると考えられます。

     法定実効税率=   法人税率×(1+地方法人税率+防衛特別法人税率+住民税率)

 +事業税率+事業税率(標準税率)×特別法人事業税率    

1+事業税率+事業税率(標準税率)×特別法人事業税率

(注)防衛特別法人税の計算においては、基礎控除額年500万円が予定されていますが、上記の算式は、それを考慮していないとのことです。

 

 

上記の結果、防衛特別法人税が実際に課されるのは、もう少し先のこととなりますが、税効果会計の適用においては、この3月決算から防衛特別法人税の課税を見込んだ税率を用いて繰延税金資産・負債の計算を行うこととなる点にご留意ください。

(なお、先にも述べた通り、補足文書は改正税法が令和7年(2025年)3月31日までに成立する場合を想定していますので、法案審議の状況にも十分ご留意ください。)

 

 

 

あすかコンサルティング株式会社

【会計コンサルティング担当】津田 佳典

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