マスコミ報道によると、「カレーハウスCoCo壱番屋」の創業者が取締役を務める資産管理会社「株式会社ベストライフ」が名古屋国税局による税務調査を受け、20億円の申告誤りを指摘され、過少申告加算税を含む追徴税額約5億円を納付されたそうです。
資産管理会社が、その所有する「ストラディバリウス」を減価償却し損金(経費)として処理したところ、国税局から損金処理が認められないと指摘されたとのこと。
「ストラディバリウス」は一丁で10数億円ほどするものもあるそうで、音楽に詳しくなくても、その名前を聞いたことがある方も多いのではと思います(正月に、タレントが高級な“本物”を見極めるテレビ番組でもよく出てますよね)。
会社が保有している建物や機械、車両等は減価償却費として損金性が認められているのに、なぜストラディバリウスは減価償却が認められなかったのでしょうか?
損金として減価償却することが認められている資産を「減価償却資産」と言います。
減価償却資産とは、建物、構築物、機械及び装置、船舶、車両及び運搬具、工具、器具及び備品、鉱業権その他の資産で償却をすべきものを指します(事業の用に供していないもの及び時の経過によりその価値の減少しないものを除く)。
そして「時の経過によりその価値の減少しないもの」の例示として次に掲げる美術品等が挙げられています。
1、古美術品、古文書、出土品、遺物等のように歴史的価値又は希少価値を有し、代替性のないもの
2、上記以外の美術品等で、取得価額が1点100万円以上であるもの(時の経過によりその価値が減少することが明らかなもの(注)を除く。)
(注)「時の経過によりその価値が減少することが明らかなもの」とは、不特定多数の者が利用する場所の装飾用や展示用(有料展示を除く)で、かつ移設することが困難で当該用途にのみ使用されることが明らか、そして他の用途に転用すると仮定した場合にその設置状況や使用状況から見て美術品等としての市場価値が見込まれないものを指します。
つまり
・歴史的価値又は希少価値が無い(代替性がある)
又は
・100万円未満(価値が減少しないことが明らかなものを除く)
なら減価償却の損金が認められる、ということですね。
ここでスタートの話に戻りますが、ストラディバリウスは歴史的価値・希少価値が無いのでしょうか?
バイオリンは数万円から高級なもので1,000万円以上する価格帯のようです。その中で10数億円するバイオリンがある場合、それは「歴史的価値」「希少価値」があると言わざるを得ないように感じます。
結果、法人税法上は減価償却が認められないこととなります。
今回はバイオリンについてのお話でしたが、法人で保有するものとしては「高級絵画」の方が多いと思います。
絵画は減価償却資産としてその償却費を損金処理できるのでしょうか。
この問いについては国税庁HPに掲載されているQ&Aが役立ちます。
・100万円未満の絵画
・100万円以上の絵画のうち、エントランスや応接室に移設困難な状態で飾ってあるもの等
であれば減価償却資産として認められることになります。ちなみに耐用年数は8年です。
節税を狙った設備投資を図ったにもかかわらず、減価償却資産に該当しないことが購入後に判明した、なんてことにならないよう、事前に余裕を持ったタックスプランニングが重要だと思います。