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会計・ファイナンス・監査2021.12.22 グループ通算制度を適用する場合の会計処理及び開示に関する取扱い(その2)

先日、当ブログで2022年4月よりスタートするグループ通算制度の概要について、ご説明をしましたが、企業会計基準委員会(ASBJ)では、グループ通算制度の開始に伴い「グループ通算制度を適用した場合の会計処理や開示の取扱い」(実務対応報告第42号、以下「実務対応報告」)を公表しています。

今回は表示・開示の取扱いと経過措置の内容についてご説明したいと思います。

 

 

1.表示及び開示について


 

(1)個別財務諸表における通算税効果額の表示

 

会計処理の取扱いのところでも述べましたが、グループ通算制度において損益通算や欠損金の通算を行った場合に、通算による税金の減少額(通算税効果額といいます)について、グループ企業間で金銭の授受を行うことは任意とされています。

 

ただし、実務報告は、この金銭の授受を行うことが前提として作成されており、授受された通算税効果額については、当該事業年度の所得に対する法人税及び地方法人税に準するものとして取り扱うこととされています。(第7項)

 

このため、授受された通算税効果額の損益計算書上の表示についても法人税及び地方法人税を示す科目(一般的には「法人税、住民税及び事業税」かと思います)に含めて表示することとされています。また、通算税効果額に係る債権及び債務は未収入金や未払金に含めて貸借対照表に表示することとされています。(第25項)

 

 

(2)繰延税金資産及び繰延税金負債の表示

 

個別財務諸表における表示については、特段の定めはありません。一方、連結財務諸表においては、法人税及び地方法人税に係る繰延税金資産・負債のみ、通算グループ全体の繰延税金資産の合計と繰延税金負債の合計を相殺して、連結貸借対照表の投資その他の資産または固定資産の区分に表示することとされています(第27項)。

 

連結財務諸表における繰延税金資産・負債の表示の基本的な考え方は、同一納税主体の繰延税金資産・負債は相殺する一方、異なる納税主体の繰延税金資産・負債は相殺せずに表示することとなっています。グループ通算制度では、制度の対象となる会社は異なる納税主体となる(それぞれが申告書を作成して納税する)ものの、通算グループ全体に対して税効果会計を適用していることから、連結納税制度の取扱いを踏襲する形となっています。(第60項)

 

 

(3)注記事項

 

グループ通算制度の適用により、実務対応報告を適用している場合には、その旨を注記することとされています。(第28項)

 

また、会計処理の取扱いのところでも述べた通り、グループ通算制度の適用に伴う繰延税金資産の回収可能性の判断については、法人税及び地方法人税と住民税及び事業税を区分して判断することが求められていますが、繰延税金資産・負債の発生原因別の主な内訳の注記の記載においては、税金の種類ごとに区分せず、全体を注記することとされています。(第29項)

 

ただし、税金の種類によって回収可能性が異なるケースも想定されるため、その場合に評価性引当額について税金の種類ごとに区分して注記することを妨げるものではないとされています。(第62項)

 

(ご参考)グループ通算制度が適用される場合、グループ各社が納税すべき法人税及び地方法人税は、制度の対象となっている会社が連帯して納付する義務を負うことになりますが、グループ通算制度が適用されている旨の注記を行うこととされていることから、別途偶発債務の注記を行う必要はないとされています。(第30項及び第64項)

 

 

 

 

2.適用時期及び経過措置について


 

実務対応報告は、原則として、税法におけるグループ通算制度の適用に合わせて、2022年4月1日以後に開始する年度の期首から適用することとされています。ただし、税効果会計に関する会計処理や開示ついては、より早期に企業の実態を適切に反映させる観点から、2022年3月31日以後に終了する年度の期末から適用することができるとされています。(第31項及び第66項)

 

 

また、税効果会計の会計処理及び開示については、以下のような経過措置が定められています。

 

(1)連結納税制度を適用している企業がグループ通算制度に移行する場合

 

実務対応報告の適用は、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更に該当しますが、会計方針の変更に伴う影響はないものとみなし、会計方針の変更に関する注記は不要とされています。(第32項 (1) )

 

これは、実務対応報告が連結納税制度を適用した場合の税効果会計の取扱いの内容を踏襲しており、会計方針の変更によって重要な影響が生じないと考えられることを踏まえたものとされています。

 

なお、連結納税制度を適用している企業は、現在、以前に公表されていた「連結納税制度からグループ通算制度への移行に係る税効果会計の適用に関する取扱い」(実務対応報告第39号)が適用されています。このうち、特例的な取扱い(改正前の税法に基づいて税効果会計を適用しているケース)に該当する企業は、税制の変更による影響が考慮されていないことから、今回の実務対応報告の適用による影響額が発生し、これを損益等として計上することになるとされています。(第67項なお書き)

 

(2)単体納税制度を適用している企業がグループ通算制度に移行する場合

 

現在、単体納税制度を適用している企業が2022年4月1日以後開始する年度からグループ通算制度に移行する場合は、グループ通算制度を新たに適用する場合の取扱い(会計処理の取扱いをご参照ください)を適用せず、原則として2022年4月1日以後開始する年度の期首から実務対応報告を適用(税効果会計に関する会計処理や開示ついては、2022年3月31日以後に終了する年度の期末から適用可)することとされています。これは、税法によるグループ通算制度への以降が行われる年度においては一定の準備期間を要することへの配慮がなされたものです。(第32項 (2) 及び第68項)

 

(3)連結納税制度から単体納税制度に移行する場合

 

現在、連結納税制度を適用している企業が単体納税制度に移行する場合は、グループ通算制度を適用しない旨の届出書を提出した日の属する会計期間(四半期会計期間を含みます)から、2022年4月1日以後最初に開始する事業年度から単体納税制度を適用するものとして税効果会計を適用することとされています。(第33項)

 

 

いかがでしょうか。適用時期と経過措置の部分については、税効果会計の取扱いに重要な影響を与える可能性がありますので、くれぐれもお間違えの無いようにお気を付けください。

 

 

あすかコンサルティング株式会社

【会計コンサルティング担当】津田 佳典

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