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国内税務2024.07.31 インボイス_帳簿のみ保存について

インボイス制度が施行されて気づけば1年を経過しようとしております。

 

 消費税の計算上、課税仕入れ等に係る税額控除を受けるためには、適格請求書又は簡易請求書など及び帳簿の保存が必要となります。

しかし、請求書等の交付を受けることが困難なである理由により、一部の取引についてはその実態を踏まえて特例的に帳簿のみの保存でよいとされています。

 今回、インボイス制度が施行された後、改めて要件や記載内容、追加された実務対応などを確認していきたいと思います。

 

1.帳簿のみの保存を要件とする取引


 

まずは帳簿のみの保存で仕入れ税額控除が可能となる取引及びその記載事項などを確認したいと思います。

 

⑴次の課税仕入れである場合

 ① 適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の公共交通機関による旅客の運送

 ② 適格簡易請求書の記載事項(取引年月日を除きます。)が記載されている入場券等が使

  用の際に回収される取引(①に該当するものを除きます。以下「回収特例」といいま

  す。)

 ③ 古物営業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの古物の購入

 ④ 質屋を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの質物の取得

 ⑤ 宅地建物取引業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの建物の購入

 ⑥ 適格請求書発行事業者でない者からの再生資源又は再生部品の購入

 ⑦ 適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の自動販売機及び自動サー

  ビス機からの商品の購入等

 ⑧ 適格請求書の交付義務が免除される郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス

  (郵便ポストにより差し出されたものに限ります。)

 ⑨ 従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費等(出張旅費、宿泊費、日当及び

  通勤手当)

 

《帳簿への記載事項》

帳簿への記載事項は次のとおりです。

 イ 課税仕入れの相手方の氏名または名称

 ロ 課税仕入れを行った年月日

 ハ 課税仕入れに係る資産または役務の内容(その課税仕入れが軽減対象課税資

   産の譲渡等に係るものである場合には、内容およびその旨)

 ニ 課税仕入れに係る支払対価の額(消費税額および地方消費税額に相当する

   額を含みます。)

 ホ 課税仕入れの相手方の住所または所在地

   ①、②のうち課税仕入れの金額が3万円未満のもの、③から⑤(その業務に

   必要な帳簿に相手方の氏名及び住所が記載されている場合に限る)⑥(事業

   者以外からの買取り)⑦から⑨については住所又は所在地の記載は不要で

   す。

   3万円未満判定方法ですが1回の取引で購入し使用する金額により行います。

   例:3,000円の入場券を10枚購入し、使用した場合は30,000円となります

     ので住所又は所在地の記載が必要となります。

 へ 特例との対象となる旨 例:①公共交通機関特例

                ②回収特例

                ③~⑥古物等の購入

                ⑦自販機

                ⑧切手類

                ⑨出張旅費特例

 

《注意点》

 ・令和5年10月1日から適格請求書等保存方式が開始したことに伴い、それま

  で認められていた、税込みの支払額が3万円未満の場合や、3万円以上であって

  も請求書等の交付を受けなかったことにつきやむを得ない理由がある場合に帳簿

  のみの保存で仕入税額控除が可能とされる特例は廃止されました。

 

 ・金または白金の地金の課税仕入れを行った場合、当該課税仕入れの相手方の

  本人確認書類の保存が必要です。

 

 ・令和5年10月1日から令和11年9月30日までの間に適格請求書発行事業者以外

  の者からの課税仕入れで、仕入税額相当額の一定割合を仕入税額とみなして

  控除できる経過措置の適用を受ける場合、帳簿の記載事項に関し、通常必要な記

  載事項に加え、経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨の記載が必要と

  なります。

   例:「80%控除対象」、「免税事業者からの仕入れ」

 

 

⑵特定課税仕入れ

 特定課税異性入れとは

 ・国内において国外事業者から受けた事業者向け電気通信利用役務の提供

 ・国内において国外事業者から受けた特定役務の提供

 をいいます。

《記載事項》

 イ 特定課税仕入れの相手方の氏名または名称

 ロ 特定課税仕入れを行った年月日

 ハ 特定課税仕入れの内容

 ニ 特定課税仕入れに係る支払対価の額

 ホ 特定課税仕入れに係るものである旨

 

⑶令和5年10月1日から令和11年9月30日までの間に基準期間における課税売上高

 が1億円以下又は特定期間における課税売上高が5千万円以下である課税期間に行

 う税込価額が1万円未満である課税仕入れ

《記載事項》

 ⑴イから二と同様

 

 1万円未満の基準は1商品ではなく、1取引となります。

  例えば、6,000円の商品と5,000円の商品をまとめて購入(合計11,000円)と

  なる場合、適格請求書又は適格簡易請求書の交付を受けなければなりません

  のでご注意ください。

 

 

《保存期間》

 申告期限より7年間保存

 

ここまで、対象となる取引や記載事項を述べてまいりました。

 

次にインボイス施行後に発表された実務上において疑問が生じていた取引につい

て対応が判明したものについて触れたいと思います。

 

2.追加された実務対応


 

 ここからは、国税庁へ寄せられた問い合わせへの回答をいくつか紹介してきたい

と思います。

 

1.タクシーチケット

 タクシーチケットを使用した場合、一部ではインボイス対応をしている会社も

あるようですが、まだまだ未対応の会社も多いようです。この場合の実務処理と

して国税庁のQ&Aにて次の回答が発表されました。

 

【問】108-2

クレジットカード利用明細書しか送られてこず、また、タクシーチケット自体取

引先等に手交していることから、タクシーを利用した際に交付を受ける適格簡易

請求書の保存をすることも出来ません。この場合、仕入税額控除の適用を受ける

ためにはどうすべきでしょうか?

 

【答】クレジットカード会社が発行しているタクシーチケットにつき、その使用

された金額について仕入税額控除の適用を受けるためには、原則として、その使

用に当たってタクシー事業者(当該タクシー事業者に係る事業者団体など、個々

の契約等により当該タクシー利用に係る課税売上げを計上すべきこととされてい

る者を含みます。以下同じです。)から受領した適格簡易請求書の保存が必要と

なります。しかしながら、ご質問のようにタクシーチケットは取引先等に手交さ

れることも多いことを踏まえれば、適格簡易請求書の保存が困難といった事情が

あると考えられます。そのため、受領したクレジットカード利用明細書及び以下

の資料に記載された内容等に基づき、利用されたタクシー事業者が適格請求書発

行事業者であることが確認できる場合には、適格簡易請求書の記載事項(取引年

月日を除きます。)が記載されている証票が使用の際に回収される取引として、

帳簿のみの保存により仕入税額控除の適用を受けることとして差し支えありませ

ん。

 ・ 利用されたタクシー事業者のホームページ

 ・ クレジットカード会社のホームページ等に掲載されている利用可能タクシ

  ー一覧

 なお、適格請求書発行事業者以外のタクシー事業者の利用であったことが確

認された場合には、当該タクシー利用時に受領した領収書(未収書等)や、別途

当該タクシー事業者から発行を受けた書類など、区分記載請求書の記載事項を満

たした書類及び 一定の事項を記載した帳簿の保存があれば、仕入税額相当額の

一定割合(80%、50%)を仕入税額とみなして控除できる経過措置の適用を受け

ることができます。

 

つまり、タクシーチケットもいわゆる回収特例を準用として、帳簿の保存のみで

仕入れ税額控除を受けることができるということになりました。

 

2.古物商・質屋

 

リユースショップなどの古物商等を営む事業者が顧客より品物を買い取る際、イ

ンボイス制度においては本来、適格請求書等及び帳簿の保存が仕入税額控除の要

件となりますが、古物商や質屋などが適格請求書発行事業者以外からの買取りな

どについては、次の①から④の要件を満たすことにより適格請求書等の保存が不

要(帳簿のみの保存)で仕入税額控除を行うことが出来ます。

 ①古物商又は質屋であること

 ②適格請求書発行事業者でない者から仕入れた古物・質物であること

 ③仕入れた古物・質物が、その古物商・質屋にとって棚卸資産(消耗品を除

  く)であること

 ④一定の事項が記載された帳簿を保存すること

 

 ①について

  古物商・質屋を営むにはそれぞれ許可が必要となります。

 ②について

  適格請求書発行事業者でない者とは一般消費者又はインボイス登録をしてい

  ない個人事業主及び法人をいいます。

 ③仕入れた古物・質物を自ら営む事業で、消耗品や固定資産として使用する場

  合(中古車買取り業者が自社の社用車として使用など)には、適格請求書が必要

  となります。

 帳簿に記載すべき一定の事項とは次のとおりです。

 ①取引の相手方の氏名又は名称及び住所又は住所地

 ②取引年月日

 ③取引内容(軽減対象である場合にはその旨)

 ④支払対価の額

 ⑤古物商特例又は質屋特例の対象となる旨

 ただし、古物商・質屋を営むうえで義務づけられている古物台帳等には①から④

の事項が記載されるものであるため、当該古物台帳等と⑤の事項が記載された帳

簿を合わせて保存することにより要件を満たすことも可能です。

(その場合、古物台帳等についても帳簿同様、申告期限より7年間の保存が必要

となります)

 また先日、古物商がフリマアプリやインターネットオークションなどを通じて商品を

仕入れる場合の対応方法も掲載されていました。

古物商が、フリマアプリ等を通じて商品を仕入れることがありますが、取引の相

手方が匿名である場合の対応方法です。

 

 適格請求書発行事業者以外の者から販売用商品として古物を仕入れた場合におい

て、購入金額が1万円未満の場合には、古物商特例の適用を受けることができま

す。(自動二輪車、家庭用ゲーム、CD・DVD、書籍の買い受けの場合、1万

円未満であっても古物営業法上、本人確認や帳簿への記載の義務が生じる物以外

が対象となります。)

購入金額が1万円以上の場合、本人確認等の情報把握が出来る場合にのみ古物商

等特例の適用を受けることができます。

1万円以上であってもいわゆる準古物の買取りに該当する場合、80%・50%経過

措置の適用を受けることは可能のようです。

また、古物商以外の事業者が購入する場合、課税仕入れ等の税額控除を受けるた

めには適格請求書等の交付を受ける必要があります。ただし、80%・50%の経過

措置の適用を受けることは出来るようです。

 

 

 

3.実費精算の出張旅費等【国税庁Q&A令和6年4月追加】

 

 社員に支給する出張旅費、宿泊費、日当等のうち、その旅行に通常必要であると

認められる部分の金額については、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入

税額控除の適用を受けることができます。

この場合、概算払いによるもののほか、実費精算されるものであっても通常必要

と認められる部分の金額についても含まれます。

ただし、会社が宿泊先に直接支払をする場合は、適格請求書等の保存が必要とな

ります。

 

いわゆる、出張旅費特例を適用するということですね。

この特例を適用すれば、話題となっているアゴダやブッキングなどの海外サイト

にて予約した場合に適格請求書等が交付できないということにも対応できるので

はないでしょうか?

 

 

 

 このように帳簿のみの保存の対象取引や帳簿への記載事項のお話をさせていただきましたが、

インボイス制度は浸透・対応するのにはまだまだ時間が必要となるかと思いま

す。

国税庁にて公表されるQ&Aも毎月更新されているようですので確認が必要です

ね。

あすか税理士法人
スタッフ 白川 達也