令和6年度税制改正により消費税で「プラットフォーム課税」が導入されました。
これは令和7年4月1日以後の取引より開始されることになります。
後にも述べる通り、このプラットフォーム課税は直接的には「デジタルプラットフォーム」を運営する大手事業者と国外事業者の消費税申告に影響するもので、一般消費者や国内事業者には大きな影響はありません。
しかし、国内事業者にとっては特に仕入税額控除で一部間接的に注意が必要な点も考えられます。
今回はプラットフォーム課税の概要とデジタルサービスの消費税の取り扱いを整理し、国内事業者が注意するべき点をまとめました。
プラットフォーム課税とは、国外事業者が日本国内において「特定プラットフォーム事業者」を介して行う「消費者向けのデジタルサービス」は特定プラットフォーム事業者がサービス提供したものとみなして、デジタルサービスを提供した国外事業者の代わりに、特定プラットフォーム事業者が消費税の申告・納税を行うというものです。
これは2025年4月1日以降に行われる取引から対象となります。
現状のリバースチャージ方式と類似している制度であるといえるでしょう。
プラットフォーム課税は、「国外事業者が特定プラットフォーム事業者を介して行う消費者向け電気通信利用役務の提供」が対象となります。
プラットフォームを利用した全ての取引が対象となるわけではありません。
(出典:国税庁)
特定プラットフォーム事業者
アプリストアやオンラインモールなどのデジタルプラットフォームを運営する事業者のうち、国税庁から「特定プラットフォーム事業者」として指定されている事業者をいいます。
この指定はプラットフォーム事業者の課税期間において、国外事業者がプラットフォームを介して行うデジタルサービスの金額の合計額が50億円を超える※プラットフォームが対象となります。
※金額判定にはそのプラットフォーム事業者が自ら行う消費者向け電気通信利用役務の提供は含みません。
大規模なプラットフォームが特定プラットフォーム事業者として指定されるというイメージでOKです。
特定プラットフォーム事業者は2024年12月末までに国税庁が指定し公表されます。
消費者向け電気通信利用役務の提供
「電気通信利用役務の提供」とは、アプリ配信、音楽配信や電子書籍配信などを電気通信回線(インターネット)を介して行うサービスをいいます。
そのうち、インターネット広告配信など、買い手が事業者に限られるもの以外の電気通信利用役務の提供を「消費者向け電気通信利用役務の提供」としています。
日本のデジタルサービス市場は拡大を続けており、国外事業者の国内市場への参入も増加しているところです。
現にオンラインゲームを中心とした国内のスマホアプリ市場は2024年には5兆円を超える市場規模になると予想されています。
しかし日本でデジタルサービスを提供する国外事業者は日本国内に事業拠点(PE)を置かずに事業を行うことが可能です。
そのため税務当局は日本国内に拠点を持たない国外事業者から日本国内で行ったデジタルサービスにどのように消費税を徴収するか?という点が大きな課題となっていました。
また現在はいわゆるGAFAをはじめとした大規模なデジタルプラットフォーム事業者が世界経済を席巻しています。
ヨーロッパや北米、アジアの国々ではそのようなプラットフォーム事業者に申告納税の義務を代わりに行わせる仕組みが導入されています。
このような背景で日本の消費税においてもプラットフォーム課税制度が導入されることになりました。
プラットフォーム課税ではプラットフォームを介して行うデジタルサービスを、「事業者向け」のものと「消費者向け」のものに分けて検討することが必要となります。
現状のデジタルサービスに関わる消費税について事業者向けと消費者向けに分類したうえで、プラットフォーム課税によって影響が及ぶところをまとめたいと思います。
1. 特定プラットフォームを介して行う事業者向けデジタルサービス
(ネット広告など事業者が受けることが前提のデジタルサービス)
1.1 国内事業者が事業者向けに行うデジタルサービス
→サービスを行う国内事業者が消費税を申告・納税
1.2 国外事業者が事業者向けに行うデジタルサービス
→サービスを受ける事業者が消費税を申告・納税(リバースチャージ方式)
2. 特定プラットフォームを介して行う消費者向けデジタルサービス
(電子書籍・オンラインゲームなど事業者向け以外のデジタルサービス)
2.1 国内事業者が消費者向けに行うデジタルサービス
→サービスを行う国内事業者が消費税を申告・納税
2.2 国外事業者が消費者向けに行うデジタルサービス
→サービスを行う国外事業者が消費税を申告・納税
→特定プラットフォーム事業者が消費税を申告・納税
事業者向けのデジタルサービスに変更はなく、「特定プラットフォーム事業者」を介して「国外事業者」が行う「消費者向け」のデジタルサービスに変更があります。
直ちに影響があるのは「特定プラットフォーム事業者」と「国外事業者」のため、一般消費者や国内事業者には特に影響はありません。
ここまでみたように、プラットフォーム課税は「特定プラットフォーム事業者」とそれを利用してビジネスを行う「国外事業者」に影響が及びます。
そのため、国内の一般消費者や国内事業者には特に大きな影響はありません。
しかし、プラットフォーム課税の施行によって、本来受けることのできたはずの仕入税額控除の適用が漏れてしまう可能性があります。
例として、以前から大手プラットフォームを介して国外事業者から消費者向けサービス提供を受けていた場合を考えます。
国外事業者が日本でインボイス事業者登録していなかったため、これまでは仕入税額控除は受けることができませんし、80%・50%の経過措置も受けることができませんでした。
しかし、2025年4月からプラットフォーム課税が開始されます。
大手プラットフォームが「特定プラットフォーム事業者」の指定を受けている場合は2024年12月末までに指定が行われ、国税庁が公表します。
その場合、特定プラットフォーム事業者を介して国外事業者から受けるデジタルサービスは「大手プラットフォーム」が提供したものとみなされ、大手プラットフォームが消費税の納税義務者となります。
そのため、大手プラットフォームがインボイスを発行することになります。
そのインボイスは適格請求書であると考えられますので、仕入税額控除を受けることができるということです。
プラットフォームを利用している事業者は、2025年4月の請求書を注意して確認するべきかと思います。
・2025年4月1日以後の取引からプラットフォーム課税の対象となる
・プラットフォーム課税は特定プラットフォーム事業者とそれを利用して消費者向けサービスを行う国外事業者が対象
・事業者向けのデジタルサービスは従来通りの処理でOK
・国内事業者は2025年4月から仕入税額控除漏れに注意するべき
あすか税理士法人
【スタッフ】西浦 翔太