こっちの会社はずっと黒字であっちの会社はずっと赤字・・・赤字の会社を吸収合併したら過去の欠損金も引き継げるのでは・・・?
と考えられている方、ちょっと待ってください。
合併して被合併法人から欠損金を引き継ぐためには乗り越えなければならないハードルが3つあります。
今回はそのハードルについてざっくり解説していきます。
適格合併となるためには以下1から3いずれかの要件をすべて満たす必要があります。
1.100%支配関係がある会社同士の合併の場合
・金銭不交付要件
被合併法人の株主に合併法人の株式のみが交付されること
・株式継続保有要件
被合併法人の株主が継続して合併法人株式を保有することが見込まれていること
2.50%超支配関係がある会社同士の合併の場合
1の要件に加えて・・・
・従業者引継要件
被合併法人の従業員のだいたい80%以上を引き継ぐこと
・移転事業継続要件
被合併法人の事業を継続して行うことが見込まれていること
3.50%以下支配関係の会社同士の合併の場合
1と2の要件に加えて・・・
・事業関連要件
相互に関連する事業を行っていること
・事業規模要件or経営参画要件
一定の指標を用いた事業規模の割合がだいたい5倍を超えないこと
被合併法人の役員が合併法人の役付役員に就任すること
見て頂いたら分かるとおり支配関係が希薄になるにつれてハードルが上がっていきます。
まずこのどれかに該当しないと話の土台に上がりません。
1.50%以下支配関係の会社同士の合併の場合
特にありません。
2.50%超支配関係がある会社同士の合併の場合(100%含む)
① 5年超支配関係が継続している場合
特にありません。
② ①以外の場合
ハードルその1の3の要件に加えて事業規模要件を採用していた場合は、
A.被合併事業の規模継続要件
被合併事業が、支配関係の生じた時から合併の時まで継続して営まれており、支配関係発生時と合併時の規模の割合がだいたい2倍を超えないこと
B.合併事業の規模継続要件
合併事業が、支配関係の生じた時から合併の時まで継続して営まれており、支配関係発生時と合併時の規模の割合がだいたい2倍を超えないこと
上記双方の要件を満たす必要があります。
この要件を満たしていない場合は一定の欠損金について引継ぎに制限がかかります。
合併などの組織再編成については特別に「行為計算の否認」という規定があります。
これは、法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められる行為又は計算が行われたときに、税務署長がその行為又は計算にかかわらず法人税額等を計算することができると定められているものです。
欠損金を引き継ぐためだけに経済的合理性のない合併を行ってハードル1と2の形式だけをクリアしていてもそれが不当に法人税を減少させていると税務署が判断した場合は欠損金の引継ぎが否認されます。
最後のハードルが結構レベル高いです。
特にグループ会社間で合併を行って欠損金を引き継ぐ場合は合併することの理由を明確に説明できないと税務調査で痛い目を見ることになるかもしれません。
あすか税理士法人
【国内税務担当】高田和俊
プロフィールはこちらをご覧下さいませ。