以前のブログで「非居住者が事業譲渡類似株式を譲渡した場合の取扱い」について解説しました。
今回は逆のパターンです。
外国で会社を設立し事業を行っており、日本に帰国又は移住した後5年以内に当該外国法人の株式を譲渡した場合、日本では課税されるのでしょうか。
今回は非永住者が外国の非上場株式(事業譲渡類似株式)を譲渡した場合の取扱について解説いたします。
非永住者が日本で課税される所得は「①国外源泉所得以外の所得(非国外源泉所得)、②国外源泉所得で国内において支払われたもの、及び③国外源泉所得で国外から送金されたもの」です。
ここでいう①の非国外源泉所得は外国税額控除の規定(所得税法95条1項)で定められている所得となります。
今回のテーマである国外にある資産の譲渡(所得税法95条4項3号)は、次のものが国外源泉所得に該当すると規定されています(所得税法施行令225条の4)。
1)国外にある不動産
2)国外にある不動産の上に存する権利、国外における鉱業権又は国外における採石権
3)国外にある山林
4)外国法人の発行する株式又は外国法人の出資者の持分で、その外国法人の発行済株式又は出資の総数又は総額の一定割合以上に相当する数又は金額の株式又は出資を所有する場合にその外国法人の本店又は主たる事務所の所在する国又は地域においてその譲渡による所得に対して外国所得税が課されるもの
5)不動産関連法人の株式(出資及び投資信託及び投資法人に関する法律第2条第14項(定義)に規定する投資口を含む。次号及び次項において同じ。)
6)国外にあるゴルフ場の所有又は経営に係る法人の株式を所有することがそのゴルフ場を一般の利用者に比して有利な条件で継続的に利用する権利を有する者となるための要件とされている場合における当該株式
7)国外にあるゴルフ場その他の施設の利用に関する権利
非永住者が日本で課税されるか否かは上記1の4)の通り①外国法人が発行する株式であるか、②当該譲渡について現地で外国所得税が課税されるかどうかという2点で判断を行います。
まず①外国法人が発行する株式であるかという点について、
これは外国の法令に準拠して設立された法人の株式又は出資であれば該当します。
次に②外国所得税が課税されているかとう点について、
これは以前のブログでご紹介したように租税条約や現地の国内法の確認が必要となります。
租税条約において、事業譲渡類似株式の規定があり、双方の国で課税ができるという規定になっている場合は外国所得税が課税されるものと判断できます。
ただし、海外現地の国内法において自国の非居住者やキャピタルゲインについては課税をしないという取扱いがある国については外国所得税が課税されないものに該当すると考えられます。
従いまして、シンガポールなど事業譲渡類似株式の譲渡について自国でも課税を行うとされている国の株式の譲渡については国外源泉所得に該当し、日本で申告は不要となります。
一方で、アメリカや香港など事業譲渡類似株式を含む株式の譲渡については居住地国でのみ課税を行うと規定されている国の株式の譲渡については、非国外源泉所得として日本で課税の対象になります。
なお、外国の金融商品市場において株式を譲渡した場合(上場株式など)は、2017年(平成29年)4月1日以後の取得かつ、過去10年以内の非永住者期間に取得したものが非国外源泉所得となり、日本で課税の対象となります。
この期間の取得に該当しないものは国外源泉所得となり、非永住者は日本へ送金しない限り課税されないこととなります。
いかがでしょうか。
外国非上場株式の譲渡については海外現地の課税状況を確認の上、日本で課税判断が必要となります。
非永住者の方は国外株式の譲渡=国外源泉所得のため日本で申告不要と判断しないようご注意ください。
あすか税理士法人
【国際税務担当】街 有帆
プロフィールはこちらをご覧下さいませ!