以前より移転価格税制に係る文書整備(文書化)が義務付けられていることは皆さんご存じのことと思います(平成22年度改正)。
移転価格税制の対象となる取引を明確にし、どのように価格決定を行ったのか等を記載する文書できっちり作ると膨大な量になります。
文書化を大手事務所に依頼することは費用面で中小企業には負担が大きいため、中小会計事務所がより低価格でのサービス提供を展開しています。
費用負担が大きいから何もしない、は一番まずいです。
文書量が少なくても良いので何がしか準備しておくことが肝要だと感じます。
そんな移転価格税制の文書化(ドキュメンテーション)ですが平成28年4月1日以後開始事業年度以降、随時大きな改正が入っていることをご存知でしょうか。
今日は、平成28年度税制改正で変わった移転価格文書についてブログを書きたいと思います。
移転価格税制では届出一つと文書三つがルールになっています。
【届出】
・「最終親会社等届出事項」の提出
【文書】
・「ローカルファイル」の同時作成及び保管
・「CbCレポート」の1年内作成及び提供
・「マスターファイル」の1年内作成及び提供
以後簡単に説明しますね。
「最終親会社等届出事項」の提出
特定多国籍グループ(連結売上1,000億円以上のグループ。以下同じ)内の日本法人が提出します。
最終親会社(グループのトップのイメージ)の名称、本店又は主たる事務所の所在地、法人番号、代表者の氏名を事業年度末までにe-taxにて記入し電子送信する必要があります。(日本法人のすべてではなく代表を定めることも可能)
平成28年4月1日以後開始事業年度からスタートとなっています。
手続き面はこちらをご参照ください。
「ローカルファイル」の同時作成及び保存
これは今までの文書化で求められていたものと近いのですが、作成義務がある部分、免除される部分及びそれらの税務調査での提示期限が明確になりました。
この文書には国際関連者間での取引における価格たる独立企業間価格(ALP, Arm’s length price)を算定するために必要とされることを記載します。
これらの書類を確定申告書提出期限までに作成する必要があることから「同時文書化」と呼ばれています。
なお、前事業年度ベースで一の国外関連者との「取引金額合計が50億円未満」かつ「無形資産(ロイヤリティなど)取引金額合計が3億円未満」である場合には同時作成は義務ではなりません(作成義務が免除、ではありません)。
上記、税務調査での提示期限は45日~60日となっています。
指摘を受けてからでの文書作成はとてもではありませんが間に合いません。
事前準備が肝要です。
ローカルファイルの例示についてはこちらをご参照ください。
「CbCレポート」の1年以内作成及び提供
CbCレポート(国別報告事項)は最終親会社等情報、各国関連会社の事業内容・決算数値等を特定多国籍企業グループの日本法人に報告させる書類です。(こちらを参照)
最終親会社等が日本法人である場合は、当該日本法人が提出した情報が各国関連会社の所在地国へ「情報交換制度」により提供されます。
また、最終親会社等が外国法人である場合は、原則として手続き不要(情報交換制度により日本税務当局が情報収集出来るため)ですが、情報国間制度が整っていない国など特定の国に関連会社がある場合は、日本法人に提出義務が課せられる場合がある点に注意が必要です。
平成28年4月1日以後開始事業年度よりe-taxにて提出義務(があり、提出しなければ罰則もあります。提出期限は最終親会社等の事業年度終了の日の翌日から一年以内で使用言語は英語です。
「マスターファイル」の1年以内作成及び提供
マスターファイル(事業概況報告事項)は特定多国籍企業グループが、組織構造、財務状況等を記載した書類となります。(詳細はこちらをご参照ください)
平成28年4月1日以後開始事業年度よりe-taxにて提出義務があり、提出しなければ罰則もあります。提出期限は最終親会社等の事業年度終了の日の翌日から一年以内です。
国際税務については中小企業への負担が大きいと感じます。
しかし何も対策をとらないことは非常に危険で、逆を言えば準備をある程度行っておけばとりあえず及第点ではないかと思います。
国際税務に不安がある企業様は是非、セカンドオピニオンでのダブル税理士導入をご検討くださいませ。