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国際税務2023.08.03 【国際税務】租税条約と異なる税率での源泉徴収があった場合の申告対応

海外と取引していると必ず挙がるテーマの一つに「源泉徴収」があります。

借入利息を支払う際、ロイヤリティを支払う際など様々なタイミングで源泉徴収が必要となり、その必要性の有無について実務担当者が悩まれることも多いと思います。

 

今回は、そんな源泉徴収について租税条約で定められた限度税率以上に源泉徴収された場合の取扱いと、租税条約に定める限度税率が日本の法人税で定める率より高い場合の取扱いについて確認したいと思います。

 

 

1.租税条約で定められた限度税率以上の税率での源泉徴収


 

現在、日本は153の国と地域で租税条約(協定)を締結しています。

(出展:財務省HP「租税条約に関する資料」)

 

租税条約は2国間にまたがる課税関係について、課税国・課税範囲・税率等を定めています。

租税条約に基づいて源泉徴収された税金は、日本で法人税申告する際に「外国税額控除」を通して調整され、国際的な二重課税にならない仕組みとなっています。

外国税額控除につきましては別途何本かBlogをアップしていますので、こちらもご確認下さい。

【国際税務】外国税額控除①~対象となる外国法人税とは?~

 

この外国税額控除は「租税条約で定められた限度税率」までの税率で課税された外国税金が対象となり、限度税率を超える税率で現地課税された場合は、その限度税率超過税額は外国税額控除が出来ません(その部分は損金扱いとなります)。

例を見ながら検討します。

例えばA社(日本法人)はB社(X国法人)と金銭貸借契約を締結しB社から金利1,000を受け取る取引があったと仮定します。

B社は自国の法律に基づき25%の税率で250源泉徴収して、源泉天引き後の金利750をA社に支払いますが、租税条約上の限度税率は10%だったと仮定します。

 

この場合の外国税額控除対象額は、1,000×10%=100 となります。

実際に源泉徴収された250との差額150については、外国税額控除出来ないのでご注意下さい。この差額分については、法人税法上「損金処理」となります。

 

もっと実務的な話をしますと、

1,000が益金処理、100が損金不算入の上で外国税額控除、150が損金処理となります。

 

なお、外国税額控除対象額となる100につきましては、外国税額控除を選択せずに、損金処理することも可能ですが、損金処理・外国税額控除の選択は外国税額の一つずつで判定するのではなく、事業年度毎に対象税額の全体について判定する必要があります。

グループ通算制度の適用を受けている場合は、グループ全体で処理を統一する必要があることにも御留意下さい。

しかし、今回の外国税額控除の対象外となった150は、そもそも外国税額控除制度の対象から外れいている税金ですので、100は外国税額控除、150は損金処理(こちらは選択肢が有りません)を受けることが可能となります。

 

限度税率を超える税率で源泉徴収された後で、限度税率超過部分についてその全部又は一部が還付された場合は、その還付されることとなった日の属する事業年度の益金の額に算入されます。

 

 

2.租税条約に定められた限度税率が高い場合の源泉徴収


 

次に、租税条約で定められた源泉徴収税率が、国内法(日本の法人税等)規定する税率より高い場合の源泉徴収の取扱いについて確認します。

こちらも例を見ながら検討します。

A社(日本法人)はB社(X国法人)と商標の使用許諾契約を締結し使用料1,000を支払うものとします。日本の法人税法では源泉徴収税率20%(仮定)となっていますが、租税条約では25%が限度税率と定められています。

この場合、A社は何%で源泉徴収すれば良いと思いますか。

 

正解は20%です。使用料については国内法よりも租税条約の方が高い税率となっている場合、国内法が優先して適用されることとなります。

根拠は、租税条約等実施特例法第3条の2第1項がとなります。

 

租税条約等実施特例法第3条の2第1項

相手国居住者等が支払を受ける配当等(租税条約に規定する配当、利子若しくは使用料(当該租税条約においてこれらに準ずる取扱いを受けるものを含む。)又はその他の所得所得税法の施行地にその源泉があるものをいう。以下同じ。)又は譲渡収益(資産の譲渡により生ずる収益で同法の施行地にその源泉があるものをいい、配当等に含まれるものを除く。以下同じ。)のうち、当該相手国居住者等に係る相手国等との間の租税条約の規定において当該相手国居住者等の所得として取り扱われるもの(次項において「相手国居住者等配当等」という。)であつて限度税率を定める当該租税条約の規定の適用があるものに対する同法第百七十条、第百七十九条若しくは第二百十三条第一項又は租税特別措置法第三条第一項、第八条の二第一項、第三項若しくは第四項、第九条の三、第九条の三の二第一項、第三十七条の十一の四第一項、第四十一条の九第一項から第三項まで、第四十一条の十第一項、第四十一条の十二第一項若しくは第二項若しくは第四十一条の十二の二第一項から第三項までの規定の適用については、当該限度税率が当該配当等又は譲渡収益に適用されるこれらの規定に規定する税率以上である場合を除きこれらの規定に規定する税率に代えて、当該租税条約の規定により当該配当等又は譲渡収益につきそれぞれ適用される限度税率によるものとする。

 

所得税法第179条では使用料に対する所得税率を20%(実際は復興税が付加されます)と定められており、租税条約における25%の方が高税率なので、租税条約等実施特例法第3条の2第1項により、本取引については租税条約の税率が適用されないこととなります。

 

租税条約を提携している国との取引については、租税条約で定める内容が最優先と誤解しがちなので、御留意下さい。

 

本日は租税条約と異なる税率で源泉徴収された場合や、国内法より租税条約で定める税率が高い場合の取扱いについて確認致しました。

 

実務の参考になれば幸いです。

 

あすか税理士法人

【国際税務・国内税務担当】高田和俊

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