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国際税務2022.02.02 【国際税務】新国際課税ルール~2021年10月最終合意 Pillar Two ~

前回のBlogで、2021年10月に合意に至った新国際課税ルール(Two-Pillar:二本の柱)のうち第一の柱(Pillar One)について確認しました。

第一の柱は『自動化されたデジタルサービス(Automated Digital Services)を提供する企業と、消費者向け企業(Consumer Facing Businesses)を提供する多国籍企業について、超過利益の一部をその市場国に分配する』ことが掲げられていました。

【国際税務】新国際課税ルール~2021年10月最終合意 Pillar One ~

 

今回は、第二の柱(Pillar Two)について確認したいと思います。
 
 

1.第二の柱(グローバル・ミニマム課税)


 

(1)Overall design(全体像)

第二の柱は下記で構成されています。

①GloBE Rules(Global anti-Base Erosion Rules: グローバル税源浸食防止ルール)

下記二つの密接に関連する国内法に基づくルールとなります。

A)Income Inclusion Rule(IIR:所得合算ルール)

軽課税国に所在するグループ企業の所得に関して、親企業に一定税率(ミニマム税率)まで追加税を課する。

B)Undertaxed Payment Rule(UTPR:軽課税支払いルール)

軽課税国所在のグループ企業へ控除可能支払を行う企業について、親会社税負担が最低税率は負担するように子会社所在地国での課税、又は支払控除拒否を認める。

 

②STTR(Subject to Tax Rule:租税条約に基づくルール)

軽課税国にある関連当事者への支払について、源泉地国が、最低税率までの限定的な源泉課税を課すことを許可する。

 

(2)Rule status(位置づけ)

GloBEルールはコモンアプローチの位置づけとなります。これは下記二つのことを意味します。

・GloBEルール採用は求められないが、もしGloBEルールを採用するならば、第2の柱の下で提供される成果物と整合性がとれるように実施し、管理する。

・GloBEルールの適用については、ルール適用の順番や適用除外の取り決めについて受け入れる。

 

(3)Scope(対象会社)

GloBEルールの対象企業は、BEPS行動計画13(国別報告)に基づく定義と同じで、総グループ連結収益が7億5,000万ユーロ以上の多国籍企業となります。

なお、この基準を満たしていない本店所在地国においても、IIRを事由に適用することが出来る。

政府機関、国際機関、非営利団体、年金基金等はGloBE適用対象企業から除外されています。

 

(4)Rule design(制度設計)

IIRは親会社から優先順位が与えられる形(トップダウンアプローチ)で上積税(top-up tax)を配分する。

UTPRは軽課税国からの上積税を配分する。ただし、国際的活動の初期段階にある多国籍企業(海外有形資産5,000万ユーロ以下、海外活動地域5ヵ国以下)について、GloBE導入から5年間(又は対象企業となって5年間)に限って適用除外。

 

(5)ETR calculation(実効税率計算)

GloBEルールは、対象税目と財務諸表上の収入に基づき、国毎に実効税率を算定する実効税率テストを使用して、上積税を課することとなります。

 

(6)Minimum rate(最低税率)

IIR、UTPRの計算に用いられる最低税率は15%とする。

 

(7)Carve-outs(適用除外)

GloBEルールは、「有形資産簿価+給与」の5%をルール対象となる所得から控除することを認めています。

経過措置として、初年度は「有形資産簿価の8%+給与の10%」の控除が認められています。その後5年間は各年0.2%ずつ控除率が減少していき、6~10年目は各年0.8%(又は0.4%)ずつ控除率が減少していきます。

 

(8)Other exclusions(その他の適用除外)

GloBEルールはOECDモデル条約の国際海運に係る収入には適用されない。

 

(9)STPR(租税条約に基づくルール)

STPRに基づく最低税率に満たない適用税率を採用するIF(OECD/G20 Inclusive Framework on BEPS)参加国は、途上国に所在するIF参加国から要請があれば、STPRを租税条約に含めるようにする。

STPRの最低税率は9%とする。

 

(10)Implementation(実施)

第二の柱は2022年に法制化、2023年実施、UTPRは2024年に実施されるべき。
 
 

2.まとめ


 

第二の柱は「大規模な多国籍企業は、親会社の活動がどこで行われていようと最低限の税金を納付しよう」という趣旨で出来ています。

その趣旨を実現するために、IIR(所得合算ルール)とUTPR(軽課税支払ルール)が設けられています。
 
IIRは親会社が軽課税国に所在する子会社所得を計算に取り込んで一定税率まで課税を行い、UTPRはIIRが適用されない場合に、一定税率までの税が軽課税国所在子会社へ経費支払い等を行う関連企業に配分する仕組みです。
 
更に、IIRとUTPRを補完する形でSTTRがあり、STTRにより軽課税国へのグループ内経費支払について租税条約の恩典を認めない仕組みになっています。

 

いかがでしょうか。

非常に複雑な文章となってしまいましたが、軽課税国を使ったグローバルな節税策に対して、全世界的に最低限税金を納めるように働きかけている、とイメージしていただければと思います。

 

 

 

あすか税理士法人

【国際税務担当】高田和俊