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国際税務2025.03.26 【国際税務】国外出張を繰り返す日本勤務外国人の日本での課税

日本で勤務する外国人の方が年々増加しています。

こういった方の中には日本での勤務だけでなく、外国親会社やその他各国の子会社への出張を繰り返す人もいます。

 

今回は外国親会社によって日本子会社への出向を命じられた、あるいは結婚等の事由により日本に居住しながら外国法人の業務を行う方の課税関係を確認致します。

 

1.概要


 

・X氏は5年間の予定で香港企業(以下、香港親会社という)の日本子会社への勤務を命じられました。
・X氏は役員ではありません。
・X氏の給与は香港親会社よりドル払いにより支給される予定です。
・X氏は日本国籍を持っておらず、これまで日本へは観光でしか来たことはありません。
・X氏は香港の他にシンガポール子会社の管理も任されており、年間の勤務は日本が2/3、香港・シンガポールが1/3となっています。

この場合日本での課税関係はどのようになるでしょうか。

 

 

2.日本の取扱い


 

X氏は5年の予定で日本への勤務を命じられていることから、所得税法2条に規定する「国内に住所を有し、又は現在まで引き続き1年以上居所を有する個人」に当てはまることから日本の居住者に該当します。

また、X氏は居住者のうち「日本国籍を有しておらず、かつ、過去10年以内に日本に住所又は居所を有していた期間の合計が5年以下である個人」の規程にも当てはまることから、非永住者に該当します。
非永住者についてはこちら

 

X氏は非永住者に該当することから、課税範囲は国内源泉所得、国外源泉所得で国内において支払われた又は国外から日本へ送金されたものとなります。

 

国内源泉所得のうち、給与については所得税法161条において以下のように規程されています。
「俸給、給料、賃金、歳費、賞与又はこれらの性質を有する給与その他人的役務提供に対する報酬のうち、国内において行う勤務その他人的役務提供に基因するもの」

このことから、勤務した場所に所得の源泉があることとなります。

 

今回のケースでは日本の勤務が年間の2/3であることから、年収の2/3の金額が国内源泉所得となり日本で申告を行うこととなります。
各国での業務毎に給与が定められている場合など、勤務地での給与が客観的に把握できる場合は勤務日数によらず、業務毎に定められた金額にて国内源泉所得を計算することもできると考えられます。

 

なお、日本にPE等が存在しない香港親会社は日本での源泉徴収義務を負わないことから、X氏が自身で確定申告を行う必要があります。

 

 

3.香港の取扱い


 

給与の支払いが香港親会社からであるため、日香港租税条約14条に規定する短期滞在者免税の適用はなく、香港勤務分については香港で課税権が生じることから、香港税制に基づいた課税によることとなります。

 

また、香港において香港勤務分について課税された場合、非永住者については香港勤務分は国外源泉所得となり、日本で申告の必要がないことから香港納税分については外国税額控除の適用はないこととなります。

 

執筆時点で、年間60日以下の短期滞在であれば香港勤務分は非課税、独身者で132,000HKD(約260万円)の基礎控除あり、最大税率17%となっています。

 

 

2.シンガポールの取扱い


 

シンガポールでの勤務が年間183日以下、給与の支払いがシンガポール国外という点から日本・シンガポール租税条約15条の短期滞在者免税の適用を受けることが可能となり、シンガポール勤務分については免税となります。

 

 

いかがでしょうか。
今回は香港法人を前提に解説しましたが、例えば米国籍の従業員の場合は米国において市民権に基づく全世界課税が生じます。
米国においても米国外所得については一定の控除額が設けられていますが、現地の税制確認が必要となります。
国をまたがる勤務が発生する場合は租税条約・現地の税制についても合わせて確認するようにしてください。

 

 

あすか税理士法人

【国際税務担当】街 有帆

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