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国内税務2023.01.18 【令和5年税制改正大綱】外国子会社合算税制やインボイス制度はどう変わる?

毎年大きな税制改正がありますが、令和5年も様々な改正が入る見込みです。まだ確定した税制大綱ではありませんが、先取りで令和5年の税制改正大綱について国際税務の分野を中心に確認してみたいと思います。

 

 

 

1.外国子会社合算税制の見直し


 

(1)トリガー税率の引き下げ

ペーパーカンパニーやキャッシュボックス、又はブラックリスト国に所在する特定外国関係会社については、従来法人税等の負担率が30%未満である場合、会社単位の合算課税対象となっていました。

令和5年の税制改正大綱によれば、30%のトリガー税率が27%に引き下げられる見込みです。

この改正が通れば、ドイツやカリフォルニア州に子会社がある法人で影響が出る可能性があります。

改正の適用時期は2024年4月1日以後に開始する内国法人の事業年度となる 予定です。

 

(2)書類提出要件の簡素化

現行法令では、トリガー税率未満のすべての外国関係会社について財務諸表や税務申告書を提出する義務がありました。海外子会社が多いグローバル企業にとっては、この添付資料の多さが非常に大変でした(電子申告する際の添付データの容量も気にしなくてよくなるかもしれませんね)。

2024年4月1日以後に開始する内国法人の事業年度より、合算課税の適用がない外国関係会社(経済活動基準を満たす外国関係会社)に関しては、財務諸表を添付ではなく保存で良くなる見込みです。この改正の対象となる合算課税の適用がない外国関係会社には、部分適用対象金額(日本で加算される特定の所得)が2,000万円以下のため結果として加算対象から除外される外国関係会社も含みます。

ただ、注意が必要なのは「保存要件は残ること」です。申告添付なので頑張って財務諸表を収集していた場合でも、税制改正があったとしても海外子会社からは必要な書類を変わらず提供してもらうよう働きかけることには変わりがないと考えた方が良いと思います。

 

 

2.グローバル・ミニマム課税


 

以前のBlogでも触れましたが、国際的な法人税率の不均衡による過度な節税策に対する政策のひとつとして、グローバル・ミニマム課税を導入することが主要国間で合意され、そこには日本も加わっています。当該合意に基づいて、日本でも税制改正が行われる予定です。

 

税制改正大綱では『各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税(仮称)』の創設とされています。

 

この新たに創設される税制では、軽課税国に所在する子会社の実効税率が15%(※)になるまでの差額を親会社(日本)で納めることとなります。

(※)15%×90.7%が国税、15%×9.3%が地方税(地方法人税)となります。

 

例えば現地の実効税率が10%である場合は、日本で15%-10%=5%の追加納付が行われることとなります。この納付が生じる場合だけ申告すればよい制度になっており申告納期限は1年3カ月と通常に比べると長い期間となっています。

 

適用対象法人は、直前4事業年度(対象会計年度)のうち連結総収入金額が7.5億ユーロ以上の年度が2年度以上ある多国籍企業グループ等に属する日本法人で、軽課税国に所在する子会社等の持分を直接又は間接に有する最終親会社です。

 

連結総収入金額が7.5億ユーロ以上とのことで、かなり大きいグループ企業だけが対象となる可能性があります。

この制度も、外国子会社合算税制の見直しと同様、2024年4月1日以後に開始する対象事業年度から適用されます。

 

 

3.国際税務以外の事項


 

続きまして、国際税務以外の主たる税制改正大綱の内容をザっと確認したいと思います。

 

(1)所得税 

 

  • 選択制だった一般NISAと積立NISAを一本化し「積立投資枠」年間120万円とし、新たに「成長投資枠」年間240万円が設けられます。投資期間や非課税期間が無期限となるなど拡充・促進させる改正となる予定です(2024年1月以降)。

 

  • 税制適格ストックオプションについて、非上場かつ設立5年未満の会社が付与した新株予約権について、税制適格要件を満たすための権利行使期間が10年から15年に伸長される予定です。

 

  • 超高額所得者に対してのみ、分離課税所得がある場合に追加納付が必要となる改正が2025年から導入予定です。分離課税があることにより実質税負担率が5%を下回る方については22.5%まで課税されるイメージです。

 

(2)法人税

 

  • 活発な市場が存在する暗号資産については、法人税法上期末時価評価が求められてきましたが、自己発行暗号資産で発行時から継続保有かつ譲渡制限があるものにつては期末時価評価対象資産から除外される予定です。

また自己発行暗号資産の取得価額は、その発効に要した費用により構成されることが明文化される見込みです。

 

  • スタートアップ企業への出資(増資のみ)の25%相当額を損金算入できた制度について、出資形態を増資のみから発行済み株式の取得も認められるようになる見込みです。但し投資下限が5億円以上、議決権割合の過半数取得など従来より厳しい要件になる予定です。

 

  • 試験研究税制について、現行制度では過去3年の試験研究費との比較増減率で控除率が変動しますが、その変動傾斜がきつくなる見込みです。つまり増加・減少共に控除率により大きな影響を及ぼすようになります。なお、中小企業向けの試験研究税制については控除率が小さくなる企業が出る改正が入る見込みです。

 

(3) 相続税

 

  • 相続時精算課税制度選択後も、110万円以下の贈与については申告が不要となります。同制度選択後は相続税計算の際に年数に関係なく贈与財産額を加算しましたが、各年の110万円以下部分については加算対象から除外されることとなります。これらは2024年1月以後の贈与に取得する財産に係る相続税・贈与税から適用されます。

 

  • 暦年課税贈与の相続税に織り込む年数を、相続開始前3年から7年に伸びる(増税)見込みです。但しその伸びた期間に受けた贈与のうち合計100万円まで相続財産には加算しません。この改正は2027年1月以後の相続から順次1年ずつ長くなるため、7年間に至るのは2031年1月以後となります(つまりすぐに7年間になるわけではありません)。

 

  • 教育資金贈与について、贈与者死亡時に教育資金贈与を費消していなくても一定の場合には相続税が課税されませんでしたが、2023年4月1日以後取得する信託受益権から、贈与者の遺産額が5億円超となるときは相続税が課税されることとなります。

 

(4) 消費税

 

  • インボイス制度導入により、免税事業者が適格請求書発行事業者となった場合等には、課税売上に係る消費税額から80%を控除額を納税すればよい(つまり20%納税でも良い)とする激変緩和措置が2023年10月1日~2026年9月30日までの日の属する事業年度において適用予定です。この措置の適用を受けるための届出は不要で、申告書に付記すればよい形になる見込みです。

 

  • 基準期間の課税売上高が1億円以下の事業者、又は特定期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者については、税込1万円未満の取引についてはインボイスの取得保存が免除されます。これは2029年9月30日までの経過措置となる予定です。

 

  • インボイス制度下の『振込手数料先方負担問題』について朗報です。税込1万円未満の返還インボイスの交付義務は免除となりました。売り手側は課税仕入ではなく、売上返還として処理が必要となりますのでご注意ください。

 

 

如何でしたでしょうか。

私個人的には「外国子会社合算税制見直し」「相続時精算課税で110万円非課税」「暦年贈与課税の持ち戻し計算を7年に伸長」「税込1万円以下返還インボイス発行不要」が大きな改正になるかなと感じました。実際の改正、通達の整備等を見守り、新しい情報が入ればBlogしたいと思います。

 

 

あすか税理士法人

【国際税務・国内税務担当】高田和俊

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