2020年12月21日に2021年度税制改正大綱が閣議決定されました。
今回はその中で賃上げ・投資促進税制に関する部分をご紹介いたします。
1、現行法令
(1)大法人・中小企業共に適用可能な制度(要青色申告)
① 適用要件
・適用年度の雇用者給与等支給額>前期の雇用者給与等支給額
・適用年度の継続雇用者給与等支給額≧前期の継続雇用者給与等支給額×103%
・適用年度の国内設備投資額≧適用年度の減価償却費総額×95%
上記の3要件を満たしている場合は適用可能となります。
② 税額控除額
(雇用者給与等支給額-前期の雇用者給与等支給額)×15%(※)
(※) 適用年度の教育訓練費の額≧比較教育訓練費の額×120%の場合・・・20%
・控除額は適用年度の法人税額の20%を上限とする
(2)中小企業のみ適用可能な制度(要青色申告)
① 適用要件
・適用年度の雇用者給与等支給額>前期の雇用者給与等支給額
・適用年度の継続雇用者給与等支給額≧前期の継続雇用者給与等支給額×101.5%
上記の2要件を満たしている場合は適用可能となります。
② 税額控除額
(雇用者給与等支給額-前期の雇用者給与等支給額)×15%(※)
(※) 以下のイ、ロ又はイ、ハの要件を満たす場合…25%
イ:適用年度の継続雇用者給与等支給額≧前期の継続雇用者給与等支給額×102.5%
ロ:適用年度の教育訓練費の額≧前期の教育訓練費の額×110%
ハ:適用年度終了の日までに、中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定を受け、その計画に従って、経営力向上が確実に行われたものとして証明がされたこと
・控除額は適用年度の法人税額の20%を上限とする
2、令和三年度税制改正大綱(赤字が現行法令との相違点)
(1)大法人・中小企業共に適用可能な制度(要青色申告)
① 適用要件
・適用年度の雇用者給与等支給額>前期の雇用者給与等支給額
・適用年度の新規雇用者給与等支給額(※)≧前期の新規雇用者給与等支給額(※)×102%
(※) 上記の「新規雇用者給与等支給額」とは、国内の事業所において新たに雇用した雇用保険法の一般被保険者(支配関係がある法人から異動した者及び海外から異動した者を除く。)に対してその雇用した日から1年以内に支給する給与等の支給額をいい、上記の「新規雇用者比較給与等支給額」とは、前期の新規雇用者給与等支給額をいう。
また、新規雇用者給与等支給額からは雇用調整助成金及びこれに類するものの額を控除しない。
(設備投資要件は削除)
上記の2要件を満たしている場合は適用可能となります。
② 税額控除額
控除対象新規雇用者給与等支給額(※1)×15%(※2)
(※1) 上記の「控除対象新規雇用者給与等支給額」とは、国内の事業所において新たに雇用した者(支配関係がある法人から異動した者及び海外から異動した者を除く。)に対してその雇用した日から1年以内に支給する給与等の支給額をいう。ただし、雇用者給与等支給額から比較雇用者給与等支給額を控除した金額を上限とするとともに、地方活力向上地域等において雇用者の数が増加した場合の税額控除制度の適用がある場合には、所要の調整を行う。
(※2) 適用年度の教育訓練費の額≧前期の教育訓練費の額×120%の場合・・・20%
・控除額は適用年度の法人税額の20%を上限とする
(2)中小企業のみ適用可能な制度(要青色申告)
① 適用要件
適用年度の雇用者給与等支給額(※)≧前期の雇用者給与等支給額(※)×101.5%
(※) 雇用者給与等支給額からは雇用調整助成金及びこれに類するものの額を控除しない
要件はこの一点のみに絞られました。
② 税額控除額
(雇用者給与等支給額-前期の雇用者給与等支給額)(※1)×15%(※2)
(※1) 雇用調整助成金及びこれに類するものの額を控除して計算した金額を上限とする
(※2) 以下のイ、ロ又はイ、ハの要件を満たす場合…25%
イ:適用年度の雇用者給与等支給額≧前期の雇用者給与等支給額×102.5%(※)
(※) 雇用者給与等支給額からは雇用調整助成金及びこれに類するものの額を控除しない
ロ:適用年度の教育訓練費の額≧前期の教育訓練費の額×110%
ハ:適用年度終了の日までに、中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定を受け、その計画に従って、経営力向上が確実に行われたものとして証明がされたこと
・控除額は適用年度の法人税額の20%を上限とする
適用開始時期は2021年4月1日から2023年3月31日までの間に開始する事業年度からとなります。
以上です。ポイントは、
① 大法人向けの制度について、新型コロナの影響で新規雇用者に着目した判定及び控除額の計算となっていること
② 大法人向けの制度について、これも新型コロナの影響で設備投資要件が削除されること
③ 中小企業向けの制度について適用要件が簡素化されること
④ 雇用調整助成金の扱いが明確にされること
⑤ 中小企業向け制度の適用要件を満たしていなくても大法人向けの制度の適用要件を満たす可能性があること
だと考えます。
特に⑤については実務上、両制度の有利不利判定を行う必要がある企業が出てくるため、場合によっては手間が増えることが想定されます。
いずれにせよまだ大綱の段階ですので正式な法令の制定が待たれます。
あすか税理士法人
【国内税務担当】高田和俊
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