明けましておめでとうございます。
2021年がスタートしましたね。今年も国際税務を中心にBlogを定期的にアップしたいと思いますので、お付き合いの程宜しくお願い申し上げます。
さて今回は、2021年 令和3年税制改正大綱より”海外子会社配当金に係る外国源泉税の取扱い”の改正点について、確認したいと思います。
(1)外国子会社配当益金不算入制度とは
現行法令では、外国子会社(※1)から配当金を受け取る場合は、国際的な二重課税を排除するために、受取配当額の95%を益金不算入にする制度(外国子会社配当益金不算入制度)があります[法人税法第23条の2]。
(※1)外国子会社
日本の親会社に発行済株式等の25%以上の株式等を配当支払義務確定日以前6ヶ月以上継続保有されている外国法人[法人税法施行令第22条の4第1項]
なお、当該25%は租税条約に異なる定めがある場合は租税条約優先です。
外国子会社配当益金不算入制度の適用を受ける場合の源泉税取扱いは下記の通りです。
・配当金に掛かる源泉税
損金不算入[法人税法第39条の2]
かつ
外国税額控除 不可[法人税施行令第142条の2第7項第3号]
(2)外国子会社配当益金不算入制度+タックスヘイブン対策税制該当の場合
(1)が一般的な外国子会社配当益金不算入制度となりますが、当該外国子会社の所得が、タックスヘイブン対策税制により、日本親会社の所得に合算される場合は、下記のような取扱いとなります。
・配当金
① タックスヘイブン対策税制により加算対象となる金額に達するまでの配当金については100%益金不算入[租税特別措置法第66条の8第2項]
② ①を超える部分の金額については95%益金不算入
・配当金に掛かる源泉税
損金算入可能[租税特別措置法第66条の8第2項]
かつ
外国税額控除 不可[法人税施行令第142条の2第8項第3号]
(3)外国子会社配当益金不算入制度の適用が無し+タックスヘイブン対策税制該当の場合
「外国子会社配当益金不算入制度の適用を受けない」&「タックスヘイブン対策税制の影響は受ける」子会社から配当金を受け取った場合は、下記の取扱いとなります。
・配当金
① タックスヘイブン対策税制により加算対象となる金額に達するまでの配当金については100%益金不算入[租税特別措置法第66条の8第1項]
② ①を超える部分の金額については課税対象(外国子会社配当益金不算入制度の適用が無いので当然ですが)
・配当金に掛かる源泉税
損金算入可能[租税特別措置法第66条の8第1項]
かつ
外国税額控除 不可[法人税施行令第142条の2第8項第3号]
1,にて現行法令の取扱いを見てきましたが、果たして令和3年度の税制改正大綱ではどのように変わる予定になっているのか、確認しましょう。
現行法令から2点、変更点が有ります。
改正点が分かりやすいよう、現行法令の説明に取り消し線を入れる形で記載しますね。
タックスヘイブン対策税制の影響を受ける場合が改正対象の取引となります。
(1)外国子会社配当益金不算入制度+タックスヘイブン対策税制該当の場合
タックスヘイブン対策税制により日本親会社に合算される所得を超える配当金を受領した場合の、当該超えた部分の配当金に係る源泉税について下記変更が生じます。
・配当金に掛かる源泉税
損金算入可能[租税特別措置法第66条の8第2項]不算入
かつ
外国税額控除 不可[法人税施行令第142条の2第8項第3号]
タックスヘイブン対策税制による合算対象額を超えた部分の配当金に係る外国源泉税ついては、合算課税がなかった場合の配当金に係る外国源泉税の取扱いについて、整合性がとれるようになった改正となります。
(2)外国子会社配当益金不算入制度の適用が無し+タックスヘイブン対策税制該当の場合
タックスヘイブン対策税制による合算対象額を超えた配当を受領した場合の、当該配当に係る源泉税の取扱いが改正対象です。
・配当金に掛かる源泉税
損金算入可能[租税特別措置法第66条の8第1項]
かつ
外国税額控除 不可[法人税施行令第142条の2第8項第3号]可能(外税控除する場合は損金不算入)
如何でしたでしょうか。
今回は速報性を重視してBlogを記載しましたが、上記内容はまだ大綱段階ですし、適用時期も大綱には明示されていません。
実際に税額計算される際は、法律や通達が整備された後の情報を必ず確認するようにして下さいませ。