コロナ禍において、企業や個人事業主の方が受給される、様々な助成金。
これらの助成金は「課税されるのか?」「課税されるなら、いつ課税されるのか?」が気になるところです。
特に、課税されるタイミングについては、入金よりもかなり早いタイミングで収益計上が必要になる助成金もあり、誤った処理を行うと後日実施される税務調査で間違いを指摘されかねません。
今回は、法人と個人とに区分して、下記助成金がいつの事業年度に収益計上するのか、確認したいと思います。
・持続化給付金
・雇用調整助成金
・家賃支援給付金
・休業要請支援金
(1)課税対象
法人税では、その収受する助成金は原則的に収益(益金)となります(一部の要件を満たす補助金等については圧縮記帳の対象となり、課税が繰り延べられるケースがあります)。また、持続化給付金や家賃支援給付金等の冒頭で列挙した助成金等について「非課税にする」旨の法整備もありませんので、これらの助成金は課税対象となります。
(2)収益計上時期(課税タイミング)
法人税では「収益はその実現があったとき、すなわち、その収入すべき権利が確定したときの属する年度の益金に計上すべきもの」とされています(最高裁平成5年11月25日)。
具体的には「支給決定日」があった事業年度で収益計上するのが原則ですが、法人税法基本通達2-1-42に、下記例外規定が設けられています。
法人税法基本通達2-1-42
つまり「経費補填を前提に所定の法令の規定等に基づいて支給される給付金」は、その補填対象となった経費と同じ事業年度で給付金を収益計上する必要があることとなります。
具体的には次の通りの取扱いとなります。
【補填対象となる経費の支出事業年度に収益計上】
・雇用調整助成金
【支給決定日に収益計上】
・持続化給付金
・家賃支援給付金
・休業要請支援金
雇用調整助成金は、休業協定の締結及び実施、休業手当の支出、所定の手続きにより助成金の支給がなされる流れになっており、予め助成金等による経費補填を前提に休業手当支出等を行っていることが明白です。
よって休業手当経費(損金)事業年度と、給付金収益(益金)事業年度を合致させる必要があります。支給決定が事業年度を跨ぐケースは、益金計上漏れに注意が必要です。
「家賃支援給付金」については、「家賃」が給付額計算根拠になっており経費を補填しているとも考えられます。
しかし、雇用保険法等に基づく受給ではなく、またその支給目的も「事業の継続を下支えするための給付金を給付し、もって賃料等の円滑な支払に資することを目的とする(家賃支援給付金給付規定第2条)」と家賃支払いに「役立てる」ことがその目的であるに過ぎない点を鑑みると、例外規定は適用されず、原則的な「支給決定日」を持って収益計上すべきだと言えます。
(1)課税対象
所得税では「所得税法により非課税と定められているもの」「他の法令等により所得税が非課税となるもの」の2種類が非課税対象となり、それ以外が課税されるイメージです。具体的な非課税対象例は下記の通りです。
・新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金(事業主が休業手当を支給してくれなかった際の支援金)
・特別定額給付金(昨年支給遅延でニュースを賑わせた@10万円のアレです)
・子育て世帯への臨時特別給付金
・学生支援緊急給付金
・低所得のひとり親世帯への臨時特別給付金
・新型コロナウイルス感染症対応従事者への慰労金
・企業主導型ベビーシッター利用者支援事業の特例措置における割引券
つまり、本Blog冒頭で述べた「持続化給付金」「雇用調整助成金」「家賃支援給付金」「休業要請支援金」はいずれも課税対象となります。
(2)収益計上時期(課税タイミング)
収益計上時期は法人税と同様となります。
参考までに雇用調整助成金を計上するタイミングが、見合いの経費支出年分の収益に計上する根拠となる通達を記載します。
所得税法基本通達36・37共-48
(3)所得の区分
最後に、各助成金の所得区分について触れたいと思います。「事業所得」として課税されるのがベースです。
・持続化給付金
事業所得者向けの給付金:事業所得
給与所得者向けの給付金:一時所得
雑所得者向けの給付金:雑所得
・雇用調整助成金:事業所得
・家賃支援給付金:事業所得
・休業要請支援金:事業所得
如何でしたでしょうか。
日本では3月決算法人の次に12月決算法人が多く、また個人確定申告が始まる時期になってくるので、このタイミングで各助成金の課税関係について整理してみました。
雇用調整助成金の計上時期について、特にご注意下さいませ。
あすか税理士法人
【国際税務担当】高田和俊
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