主に以下の理由により海外銀行口座や証券口座の所得について確定申告を失念されているケースが少なくありません。
・申告する所得がないと思っている
・申告する必要がないと思っている
・バレないだろうからあえて申告しない
CRSの導入により海外の金融口座の情報は自動的に日本の税務当局が把握できるようになりました。
これにより申告漏れの税務調査が増加していると想定されます。
例えば海外銀行口座で下記のような取引がある場合、日本で申告すべき所得は何でしょうか。
1.配当所得
$1,000×111=111,000円を配当所得として確定申告において申告する必要があります。
申告分離課税又は総合課税により申告することになります。
2.利子所得
$500×112=56,000円を利子所得として確定申告する必要があります。
海外銀行口座から発生した利息は総合課税により申告することになります。
3.為替差損益(雑所得)
$10,000×(115-※109.35)=56,500円
為替差損益は雑所得に該当し、総合課税により申告する必要があります。
※11/15時点の取得レートを算出します。
①$100,000×110+$50,000×108+$1,000×111+$500×112=16,567,000
②16,567,000円÷$151,500=109.35
4.申告すべき所得合計
配当所得111,000円+利子所得56,000円+為替差益56,500円=223,500円
原則:所得が発生した日のTTM
例外:不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得について、収入又は資産についてはTTB、経費又は負債についてはTTSによることができます。
また、取引発生日のレートをその都度取得することは実務上煩雑であることから、継続的用を条件に以下のレートを利用することも可能です。
(1) 取引日の属する月若しくは週の前月若しくは前週の末日又は当月若しくは当週の初日の電信買相場若しくは電信売相場又はこれらの日における電信売買相場の仲値
(2) 取引日の属する月の前月又は前週の平均相場のように1月以内の一定期間における電信売買相場の仲値、電信買相場又は電信売相場の平均値
実務上、最も困難なのは取得レートの把握です。
利息、配当や様々な通貨の入出金等がある場合にはその都度円貨を把握し、取得レートを計算することになります。
上記は一部を抜粋したものです。もし取引がもっと頻繁にある場合、海外銀行口座を数年前、数十年前から保有している場合であっても取得レートは遡って計算することになります。その大変さは想像に難くないでしょう。
最近の税務調査ではこれらの海外銀行口座から発生した所得の申告漏れを指摘されるケースが増えています。
来年の確定申告に向け、申告すべき所得がないか、手遅れになる前に今一度ご確認ください。