新聞やネットで「○○株式会社で不正会計」というような記事を見かけることがあると思います。皆さんはどれくらい関心を持っておられるか分かりませんが、公認会計士の私としては、一体どのような事案だったのかとついつい関心を持ってしまいます(職業病です)。
そんな不正会計の現状について、公認会計士協会が公表している報告書を参考に少し考えてみたいと思います。
https://jicpa.or.jp/specialized_field/20190619qih.html
1.会計不正はどれくらいの頻度で発生しているのか?
上場会社の公表情報を対象にした調査では、会計不正が発生している会社は、年間で約30社とされています。東京証券取引所に上場している会社だけで、約3,600社ですから、全体の約1%という感じでしょうか。
しかし、毎年30社で会計不正が発生しており、基本的に同じ会社で何度も会計不正が起きることは少ないと考えると、10年間では約300社、すなわち全体の約10%で会計不正が起きると考えられます。こう考えると、あながち自分の会社でも無縁ではないと思われるのではないでしょうか。
2.会計不正はどこで発生するのか?
会計不正が発生した場所を親会社と子会社に分けると、約50%ずつという結果が出ています。子会社で起きた会計不正が連結業績に重要な影響を与えているケースが多いということです。
この点、子会社の財務数値に対するモニタリングや内部監査を充実させ、早く異常点に気付くということが必要であると考えられます。
3.どんな会計不正が行われるのか?
一般的に言われていることですが、不適切な売上の計上が最も多くなっています。その一方で、在庫の過大計上という事案が比較的多くなっている点にも留意が必要です。
不適切な売上の計上は経営者や管理者レベルで行われることが多い一方で、在庫の過大計上は現場レベルで行われることが多いという傾向もあるようです。
4.誰が会計不正を行うのか?
役員や管理職レベルの方が主体的に関与し、共謀者(内部が多い)と一緒に会計不正を行う事案が非常に多くなっています。これは、一般的に経営者による内部統制の無効化(Management override)と呼ばれるもので、会計監査においてもこのリスクを十分念頭に置くことが求められているようです。
役員や管理職の方のモラルが問われているといっても過言ではないでしょう。
5.会計不正はどうやって発見されたのか?
全体の約4分の1は内部統制によって発見されたという統計が出ています。一般的に不正は内部通報等により発覚することが多いという話もありますので、少し意外な結果ではありますが、上場会社の内部統制がそれなりに機能しているという1つの証左かもしれません。
一方で、約半分の会社は自社で会計不正を発見できていない(当局の調査や会計監査で発覚)という結果も出ています。このような事態に陥ってしまうと、会社の評判(レピュテーションリスク)にも繋がってしまう可能性があるため、十分気を付けなければいけません。
次回以降は、会計不正の具体的な事案と内部統制の弱点との関係について、考えてみたいと思います。