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会計・ファイナンス・監査2019.05.29 ここが変わる、有価証券報告書の記載内容

3月決算上場会社の決算発表も一段落し、経理関係のお仕事をされている皆さんは、有価証券報告書の提出準備にお忙しくされていることと思います。

 

ところで、2019年3月期の有価証券報告書から、新たに開示される内容が多く含まれているのをご存知でしょうか。

 

 

まず、主要な経営指標等の推移(ハイライト情報といいます)のところに、最近5年間の株主総利回りが記載されます。これは、5年前の株価をベースに、その後の配当や株価の増減によって、どれだけの利回りがあったのか(平たく言うと、儲かったのか)を示す指標です。このような指標が開示されると、経営者の皆さんも株価や配当を意識せざるを得なくなるかもしれません。

また、会社が選んだ株価指数(例.TOPIX、日経225、JPX日経インデックス400など)の利回りも合わせて開示されますので、その会社の利回りが一般的な株式運用の利回りよりも優れていたのかどうかを読み取ることができます。

 

 

次に、コーポレート・ガバナンスの状況です。ここでは、①コーポレート・ガバナンスの概要②役員の状況③監査の状況④役員等の報酬等⑤株式の保有状況と幅広い改正が行われています。今回は、このうち主なものを取り上げます。

 

①コーポレート・ガバナンスの概要では、企業統治の体制の概要の記載が求められます。ここでは、会社にどのような機関(会議体)が設置されているのか、その目的や権限はどのようなものか、誰がその機関に所属しているかまで記載が求められています。

会社が、どのようなガバナンス体制の下で経営されているのかということを、明確に読み取れることができそうです。

 

役員の報酬等では、報酬金額の実績だけでなく、報酬の算定方法はどのようになっているか、報酬の決定権限を持っているのは誰(どの会議体)か、業績連動報酬を採用している場合はその具体的な内容などが開示されます。

最近は、企業価値向上のために、役員の皆さんにどのような報酬インセンティブが与えられているのかが注目されており、業績に連動した報酬の比率を上げたり、報酬の一部を自社の株式で支払うといった動きも見られます。このような動きを踏まえての改正です。

 

⑤株式の保有状況では、いわゆる政策保有株式(持ち合い株式)に対して、詳細な開示が求められています。政策保有株式の保有の方針保有することの合理性を検証する方法保有の適否に関して取締役会等はどのように検証を行ったかの記載が求められています。

さらに、政策保有株式で上場株式であるものについては、株式の保有数・金額、保有目的、定量的な保有効果を金額の大きい順に最大60銘柄まで記載することが求められています。

政策保有株式については、経営の規律に影響を与えるとのことで、できるだけ減らしていくべきという方向性が示されていますが、この開示負担の影響も無視できなくなってきそうです。

 

 

コーポレート・ガバナンスの議論の進展とともに、有価証券報告書の記載内容も非常に充実してきています。作成側の負担は非常に大きいものとなっていますが、それだけ読み応えのあるものにもなってきていると思います。

 

一度、興味のある会社の有価証券報告書をご覧になってはいかがでしょうか。