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国際税務2025.03.05 非居住者が居住者となった場合の消費税納税義務判定

 

1.はじめに


 

以前のブログにて外国法人の消費税の納税義務判定について、紹介いたしました。

国外事業者の納税義務判定の改正についてはこちらをご覧下さい。

今回は、国外事業者の内、個人事業者である非居住者が居住者となった場合の消費税の納税義務がどうなるのかについて確認していきます。

 

 

2.基本的な個人事業者の消費税納税義務の考え方


 

国内で課税資産の譲渡等を行う限り、居住性によって納税義務の判断が異なることはありません。つまり、居住者であっても、非居住者であっても消費税の納税義務判定は必要です!

 

基準期間の課税売上高が1,000万円超の場合には、納税義務があります。
個人事業者の場合、基準期間とは、「その年の前々年」の期間をいいます。

 

ポイント

個人事業者の場合、あくまでも基準期間における課税売上高そのものが1,000万円以下となるかどうかにより判定することとされているという点です。

 

法人の基準期間(前々事業年度)が1年に満たない場合には、その事業年度開始の日の2年前の日の前日から同日以後1年を経過する日までの間に開始した各事業年度を合わせた期間とされています。
その場合、その基準期間における課税売上高は1年分に換算した上で1,000万円以下となるかどうかを判定することとされています。

 

したがって、個人事業者は、年の中途において事業を開始した場合や事業を廃止した場合等その基準期間において事業を行った期間が1年に満たないときであっても、その基準期間(その課税期間の2年前の1年間)における課税売上高そのもので1,000万円以下であるかどうかを判定することとなります。

 

基準期間が1,000万円以下である場合に、それだけで納税義務が免除されるわけではありません。
次は特定期間の課税売上高で判定します。
また、特定期間の課税売上高に代えて、個人事業者が支払った給与等の金額により判定することもできます。
特定期間の課税売上高(給与等)が1,000万円超の場合には、納税義務があります。
個人事業者の場合、特定期間とは、「その年の前年の1月1日から6月30日までの期間」をいいます

 

ポイント

特定期間の給与等の金額により判定できるのは、国内事業者のみに限られます。つまり、非居住者である場合には、特定期間の課税売上高のみで判定を行います。

 

 

3.途中で非居住者から居住者となった場合の消費税納税義務の判定


 

個人事業者は、基本的に納税義務判定は、2のように行います。
しかし、主に輸出取引を行っている経常的に消費税額が還付になる事業者等は、課税売上高が1,000万円以下である場合でも、敢えて課税事業者を選択し、還付申請を受けることができます。

 

具体的な例を参考に検討していきたいと思います。
【前提】
・国内で事業がある非居住者が何らかの理由で2025年2月に帰国(日本の居住者)
・課税事業者選択届や課税期間特例選択・変更届は未提出
・2023年1月-12月の課税売上高:500万円
・2024年1月-6月の課税売上高:1,200万円
・2024年1月-6月の給与額:500万円

 

★2025年の消費税の納税義務は?★

 

課税期間
個人事業者が課税期間を3か月ごとに短縮する場合には、1月1日から3月31日まで、4月1日から6月30日まで、7月1日から9月30日まで、10月1日から12月31日までの各期間を課税期間とすることができます。

 

基準期間
個人事業者の基準期間は、「その年の前々年」と決まっているため、2023年1月-12月となり、基準期間の課税売上高は、500万円となり納税義務は免除となりますので、特定期間の判定に移ります。

 

特定期間
個人事業者の特定期間は、「その年の前年の1月1日から6月30日までの期間」となるので、2024年1月-6月となり、特定期間の課税売上高は、1,200万円となります。特定期間の給与は500万円です。

 

課税期間ごとの納税義務判定
・2025年1-3月(非居住者)
国外事業者であるため、特定期間の給与での判定はできませんので、特定期間の課税売上(1,200万円>1,000万円)のみで判定します。
∴納税義務あり

 

・2025年4-6月、7-9月、10-12月(居住者)
国内事業者であるため、特定期間の給与での判定が可能となり、給与額(500万円<1,000万円)で判定できます。
∴納税義務なし

 

課税期間を短縮することで、4-12月の納税義務は免除されます。
逆に課税期間を短縮せず1-12月の課税期間で申告をする場合には、納税義務が生じます。

 

 

★提出する届出書は?★

 

【判定により課税事業者となる場合】消費税課税事業者届出
【提出時期】事由が生じた場合速やかに提出

 

【課税期間を短縮する場合】消費税課税期間特例選択・変更届出
【提出時期】課税期間の特例の適用を受けようとする期間の初日の前日まで(今回であれば、2024年12月31日までに)
注意点として、課税期間の短縮を選択した場合は、2年間は継続適用しなければなりません!

 

【納税義務がなくなった場合】消費税の納税義務者でなくなった旨の届出
【提出時期】事由が生じた場合速やかに提出

 

今回のケースでは、2025年の基準期間の課税売上高は、1,000万円超であり、課税事業者となるため、2025年は課税期間の短縮が適用されたまま3ヶ月毎の課税期間全て納税義務が生じることとなります。

あすか税理士法人

【スタッフ】渋谷優果