令和6年12月27日に政府より発表された令和7年度税制改正の大綱のうち、中小企業経営強化税制(経営力向上計画)及び中小企業経営強化法(先端設備導入計画)について触れていきたいと思います。
経営力向上計画の認定を受けた中小企業が設備の取得した場合において、法人税について特別償却又は税額控除が選択適用できるものとなります。
改正概要は次のとおりです。
《類型及び要件、対象資産》
生産性向上設備(A類型):生産性が旧モデル比平均1%向上する設備
収益力強化設備(B類型):投資利益率が年平均7%以上の投資計画に係る設備
経営資源集約化設備(D類型):修正ROA又は有形固定資産回転率が一定割合以
上の投資計画に係る設備
上記の3類型の対象資産は
・機械装置(160万円以上)
・工具(30万円以上)
A類型の場合、測定工具又は検査工具に限る
・器具備品(30万円以上)
・建物附属設備(60万円以上)
・ソフトウェア(70万円以上)
A類型の場合、設備の稼働状況等に係る情報収集機能及び分析・指示機能を有するものに限る
税制措置は
特別償却(即時償却)又は税額控除7%(資本金の額が3,000万円以下の場合
10%)となります。
A類型、B類型の要件の見直し、デジタル化設備(C類型)が廃止されることとな
りました。
また、上記3類型に加え新たに100億企業の創出を促進するための拡充措置とし
て、売上高100億円超の達成に向けたロードマップ作成等を要件に、工場のライ
ンや店舗等の生産性向上に係る設備導入に伴う建物を対象設備に追加されること
となりました。
経営規模拡大設備(B類型の拡充):・投資利益率が年平均7%以上
・売上高100億円超を目指すロードマップの作成
・売上高成長率年平均10%以上を目指す
・前年度売上高10億円超90億円未満
・最低投資額1億円or前年度売上高5%以上
・賃上げ率2.5%or5.0%以上 など
対象資産は
・機械装置(160万円以上)
・工具(30万円以上)
・器具備品(30万円以上)
・ソフトウェア(70万円以上)
・建物及び建物附属設備(1,000万円以上)
(生産性向上に資する設備の導入に伴って新増設される建物及び建物附
属設備に限り、税制対象の設備投資額の上限は、60億円)
税制措置は
建物を新増設した際、その年度末の雇用者給与支給総額が前年度末と比較して2.5%以上増加した場合、特別償却15%又は税額控除1%、5.0%以上増 加した場合、特別償却25%又は税額控除2%となります。
《その他の要件》
・生産等設備を構成するもの
※事務用器具備品・本店・寄宿舎等に係る建物付属設備、福利厚生施設に係る
ものは該当しない。
・国内への投資であること
・中古資産・貸付資産 でないこと等
・発電用の機械装置、建物、建物附属設備については、発電量のうち、販売を行
うことが見込まれる電気の量が占める割合が2分の1を超える発電設備等を除
く。また、発電設備等について税制措置を適用する場合は、経営力向上計画の
認定申請時に報告書を提出する必要がある。
・ 医療保健業を行う事業者が取得又は製作をする器具備品(医療機器に限
る)、建物、建物附属設備を除く。
・ ソフトウェアについては、複写して販売するための原本、開発研究用のも
の、サーバー用OSのうち一定のものなどを除く。
・ コインランドリー業(主要な事業であるものを除く。)の用に供する資産で
その管理のおおむね全部を他の者に委託するもの又は暗号資産マイニング業の
用に供する資産を除く
先端設備導入計画のうち、中小企業者が取得する先端設備に係る固定資産税の課税標準の軽減の軽減について
改正内容は次のとおりです。
《現行》
適用期限:令和7年3月31日
対象企業:市町村より先端設備等導入計画の認定を受け、かつ、資本金1億円以
下等の税制上の要件を満たす中小企業
対象設備:投資利益率が年率5%以上の投資計画であると認定経営革新等支援機
関に確認された次の設備
機械装置(160万以上)
測定工具及び検査工具(30万円以上)
器具備品(30万円以上)
建物附属設備(60万円以上)
※中古資産や生産、販売活動に直接供されることのない(事務用備品など)
は対象外
特例措置:3年間、課税標準を2分の1に軽減
先端設備導入計画中に雇用者給与を1.5%引き上げる旨を表明
→5年又は4年間、課税標準を3分の1に軽減
《改正》
適用期限:令和9年3月31日
対象企業:変更なし
対象設備:変更なし
特例措置:先端設備導入計画中に雇用者給与を1.5%引き上げる旨を表明
→3年間、課税標準を2分の1に軽減
先端設備導入計画中に雇用者給与を3%引き上げる旨を表明
→5年間、課税標準を4分の1に軽減
このように、賃上げを行う中小企業の設備投資に伴う固定資産税の軽減措置というかたちとなっており、軽減額も拡充されることとなりました。
ここで、現行制度により賃上げを表明せず特例措置を受けている場合や賃上げ率を1.5%から3%に増加させる場合に現在、認定を受けている先端設備等導入計画の変更として申請することができるのか新たに認定を受ける必要があるのか、今後の内容も確認していきたいと思います。
上記の内容につきましては、現段階では確定されたものではございません。令和7年3月頃に国会にて可決され成立致しますのでご了承ください。
あすか税理士法人
白川 達也