外国法人が日本へ拠点を作るケースが増加しています。
今回は日本法人の設立から税務の注意点までを解説したいと思います。
1.設立関係
外国法人が日本進出形態として子会社を選択した場合。
設立(登記)にはどの程度の時間がかかるのでしょうか。
登記に必要な資料が揃っていれば1週間ほどで設立可能です。
ですが、外国法人が株主になる場合はなかなかうまくいきません。
なぜか。
外国法人親会社の証明書など手続き書類が膨大になるからです。(この点ジェトロのHPが参考になります。)
資本金の払い込みは日本の銀行法に規定される金融機関に対して振り込む必要があります。
外国の金融機関ではダメだとお考えください。
通常、外国親会社や個人は日本に銀行口座はありませんのでどのようにすればいいのでしょうか?
この場合は以下の取扱となっています。
〈発起人及び設立時取締役の全員が日本国内に住所を有していない場合〉
この場合に限り口座の名義人は発起人及び設立時取締役以外の者(自然人に限られず、法人も含みます。以下「第三者」といいます。)であっても、預金通帳の口座名義人として認められます。
この際に、払込みがあったことを証する書面として、第三者が口座名義人である預金通帳の写しを添付する場合には、「発起人が第三者に対して払込金の受領権限を委任したことを明らかにする書面(委任状)」を併せて添付する必要があります。
現在は代表者が日本に住所を持っていること。という登記の要件が廃止されたので、一件簡単に会社を作れそうになっていますが、印鑑証明がないため大使館でサイン証明を取得する必要があるなど日本居住者に比べると必要資料は多くなります。
日本に在住しない人は日本で銀行口座を開設することが現時点ではほぼ不可能で、事務所の賃貸契約を結ぶことも困難です。
はどうするか。
私は日本の協力者(日本人で銀行口座を保有)を代表者にしてとりあえず法人を設立(これは簡単!)→設立後株を買い取る
という方法、あるいは既に存在する会社を買い取るという方法をお勧めいたします。
どの国でもそうですが、行政や金融機関は日本人(自国民)の会社設立や口座開設については比較的スムーズに進める傾向にあります。
2.税務
税法上、外国法人とは、内国法人以外の法人のことをいいます。
では内国法人とは??
これは法人税法上、国内に本店又は主たる事務所を有する法人と規定されています。
では日本進出形態として、日本に会社(子会社)を設立した場合、その会社は外国法人でしょうか。それとも内国法人でしょうか。
上記の通り、国内に本店を有することとなるため内国法人となります。
つまり、通常の日本法人と基本的に取扱は同じです。
税務上は以下の点にご注意ください。
外国親法人と取引が発生する場合は外国法人への支払について源泉徴収の有無を確認する必要があります。
国内法、租税条約の双方を確認し、その取引が源泉徴収義務のある所得かどうかを確認しましょう。
外国親法人との取引は免税取引となることが多いと思われます。
現状、日本では消費税の還付申請は非常に厳しくチェックされます。
プラットフォーム課税やリバーチャージなど特にインターネット上の取引についても毎年のように改正が入る点ですので自社の取引がこれらに該当しないかどうか確認しましょう。
事業年度末の外国親会社の資本金が5億円以上の場合は中小企業の特例が使えなくなります。
外国親会社の事業年度末の外貨建ての資本金の額をTTMにて換算して判定してください。
中小企業の特例はこちらをご参照ください
以下の税制についても抑えておいてください。
・過少資本税制
・過大利子税制
・移転価格税制
過少資本税制とは、海外関連会社からの資金調達に際し、配当は費用にならないことから出資ではなく、借入を増やして利息を費用にすることにより利益を少なくすることを規制する法律です。
過大利子税制とは、海外関連会社からの借入額を意図的に大きくし、過大な利息を費用として計上することにより利益を圧縮することを規制する法律です。
移転価格税制とは、海外関連会社同士の取引価格を通常(第三者)と異なる金額に設定することによりどちらかの国に利益を移転させることを規制する法律です。
外国法人の日本子会社はこのあたりの論点がおろそかになるケースがよく見られます。事前にきっちり対策して下さい。
あすか税理士法人
【国際税務担当】街 有帆
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