令和5年12月22日付で閣議決定された令和6年度税制改正大綱の内容にこのような記載がありました。
特定の基金に対する負担金等の損金算入の特例における独立行政法人中小企業基盤整備機構が行う中小企業倒産防止共済事業に係る措置について、中小企業倒産防止共済法の共済契約の解除があった後同法の共済契約を締結した場合には、その解除の日から同日以後2年を経過する日までの間に支出する当該 共済契約に係る掛金については、本特例の適用ができないこととする(所得税 についても同様とする。)。
(注)上記の改正は、令和6年 10 月1日以後の共済契約の解除について適用する。
これは一体どういうことなのでしょうか…
まず始めに倒産防止共済とは
倒産防止共済(経営セーフティ共済)のホームページより抜粋
取引先が突然、倒産・・・。
そんな「もしも」に備える安心のセーフティネット。
経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)は、取引先事業者が倒産した際に、中小企業が連鎖倒産や経営難に陥ることを防ぐための制度です。
無担保・無保証人で掛金の最高10倍(上限8,000万円)まで借入れでき、掛金は損金または必要経費に算入できる税制優遇も受けられます。
融資が受けられる場合
共済金の借入れが受けられる取引先の倒産 共済金の借入れが受けられない取引先の倒産
・法的整理 ・夜逃げ
・取引停止処分
・でんさいネットの取引停止処分
・私的整理
・災害による不渡り
・災害によるでんさいの支払不能
・特定非常災害による支払不能
経営セーフティ共済の安心の4つのポイント
ポイント1 無担保・無保証人で、掛金の10倍まで借入れ可能
共済金借入れは、無担保・無保証人、無利子で受けることできます。貸付金額の上限は回収困難となった売掛金債権等の額か納付された掛金の10倍(最高8,000万円)のいずれか少ない方の金額となります。
ただし、貸付けを受けた場合、貸付額の10分の1に相当する金額が積み立てた掛金総額より控除されます。
具体的には次のとおりとなります。
《取引先倒産時》
取引先に対する売掛金回収困難額2,000万円
この時点での掛金総額10万円×40か月=400万円である場合
2,000万円<400万円×10=4,000万円→共済金貸付額2,000万円
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《解約時》
貸付金は返済済みを前提
この時点での掛金総額10万円×60か月=600万円である場合
600万円-2,000万円×1/10=400万円→解約手当金が入金となります。
また、共済金貸付けとは別に臨時的に事業資金が必要とする事態が生じた場合、解約手当金の範囲内で受けることが出来る、一時貸付け制度(無担保・無保証人、有利子)もございます。
一時貸付制度は掛金納付月数に応じて(最低12か月掛金納付月数が必要)、受けることが出来る貸付け制度で貸付け限度額は次のとおりです。
掛金総額✖掛金納付月数に応じた割合(75%~100%)✖95%
ポイント2 取引先が倒産後、すぐに借入れできる
取引先の事業者が倒産し、売掛金などの回収が困難になったときは、その事業者との取引の確認が済み次第、すぐに借り入れることができます。
ポイント3 掛金を損金、または必要経費に算入できる
掛金月額は5,000円~20万円まで自由に選べ、増額・減額できます。また確定申告の際、掛金を損金(法人の場合)、または必要経費(個人事業主の場合)に算入できます。
ただし、掛金を損金又は必要経費に算入するには、確定申告時において、法人の場合は別表の記載(記載例等はこちら)、個人事業主の場合は必要経費算入明細書(記載例等はこちら)の記載添付が必要となりますのでご注意ください。
ポイント4 解約手当金が受け取れる
共済契約を解約された場合は、解約手当金を受け取れます。自己都合の解約であっても、掛金を12か月以上納めていれば掛金総額の8割以上が戻り、40か月以上納めていれば、掛金全額が戻ります(12か月未満は掛け捨てとなります)。
ただし、ポイント1でも触れたとおり、共済金貸付けを受けた場合の解約手当金は、融資額の1分の10控除がされた後の金額となります。
加入条件や手続きなど詳しいことはこちらでご確認ください。
このように、取引先が倒産し、売掛金などの回収が困難となった時などに連鎖倒産を防ぐために、最高8,000万円(掛金の10倍)融資を受けることができたり、解約することにより掛金が最大で全額が戻るので、資金繰りの一つとして活用することができます。
また、この共済のもう一つの魅力は、掛金が全額損金算入又は必要経費算入され、節税することができるということです。
この節税を目的として加入されている事業者様も多いのではないかと思います。
この中小機構は経済産業省所管の機関であり、国のお墨付きの節税対策であると言えます。
例えば、法人税等の税率を30%とした場合
月額最高掛金20万円×12か月=240万円
→240万円×30%=72万円
節税になります。
今回、税制改正大綱ではこの倒産防止共済を令和6年10月1日以降に解約した場合、解約から2年経過するまでの間に再度契約し、納めた掛金については損金算入しない(税金の計算上経費としない)こととなるかもしれません。
つまり、最高で72万円×2年分=144万円の節税効果が失われてしまうことになります。
投稿日現在、決定事項ではありませんが法案が可決されれば、令和6年10月1日以降、解約・再契約のタイミングの検討が必要となってきますのでご注意を…
あすか税理士法人 白川 達也