今回は国内源泉所得のうち最後の2項目、「匿名組合契約並びにその他の所得」について解説していきます。
国内源泉所得の紹介は今回で終了となります。次回以降は租税条約の紹介をしていきたいと思います。
1)国内法
国内において事業を行う者に対する出資につき,匿名組合契約(これに準ずる契約として政令で定めるものを含む。)に基づいて受ける利益の分配は,所得税法において国内源泉所得とされ、源泉徴収の対象となります。(所法161条1項16号、所法212条1項)
匿名組合契約に準ずる契約として政令で定めるものとは,当事者の一方が相手方の事業のために出資をし,相手方がその事業から生ずる利益を分配することを約する契約とされます(所令288条)。
2)租税条約条の取扱い
租税条約には,匿名組合契約その他これに類する契約に関連して匿名組合員が取得する所得等に対しては,その所得等の源泉地国においても,その国の国内法に従って課税できる旨を規定しているものがあります。
また,匿名組合契約等に関連して匿名組合員が取得する所得等を配当所得として取り扱う租税条約もあります。
詳細は次回以降の租税条約に関するブログにて紹介したいと思います。
1)その他の国内源泉所得
過去のブログで紹介してきた所得の他、政令で定めるものが国内源泉所得とされており、次のものが定められています。
① 国内において行う業務又は国内にある資産に関し受ける保険金,補償金又は損害賠償金(これらに類するものを含む。)に係る所得
② 国内にある資産の贈与を受けたことによる所得
③ 国内において発見された埋蔵物又は国内において拾得された遺失物に係る所得
④ 国内において行う懸賞募集に基づいて懸賞として受ける金品その他の経済的な利益に係る所得
⑤ ①から④までに掲げるもののほか,国内において行う業務又は国内にある資産に関し供与を受ける経済的な利益に係る所得
2)経済的利益とは
この経済的利益に関しては,納税義務者である非居住者自身や外国法人自身が国内において業務を行い、又は資産を有していることは要しません。
これに該当する所得項目は様々なものが考えられますが,例えば債務免除益なども対象となります。
上記①から⑤までの所得は所得税の総合課税又は法人税課税の対象となりますが,これらの所得が,恒久的施設帰属所得に該当せず,源泉徴収のみで課税関係が終了する各種国内源泉所得に該当する場合には,それらの所得への該当性が優先されることになります。
例えば,特許権の侵害による損害賠償金であっても,その金額が通常取得すべき使用料を補てんすべきものとして、その支払方式,支払の期間が使用料の支払に準じているような場合には,所得税法第161条第1項第11号に掲げる使用料として区分されることになります。
3)その他国内源泉所得の所得計算
日本に恒久的施設を有する外国法人は、恒久的施設帰属所得とそれ以外の国内源泉所得の2つの課税標準により法人税が課されます。
この恒久的施設帰属所得の所得金額の算定については法人税法142条から142条の9に規定されています。
一方で恒久的施設帰属所得以外の国内源泉所得又は恒久的施設を有しない外国法人の国内源泉所得については、「その他の国内源泉所得にかかる所得金額」として、恒久的施設帰属所得の計算に準じて計算することが定められています(法142条の10)
なお、保険会社の投資資産及び投資収益(法142条の3),恒久的施設に帰せられるべき資本に対応する負債の利子の損金算入(法142条の4),本店配賦経費に関する書類の保存がない場合における本店配賦経費の損金不算入(法142条の7)又は恒久的施設の閉鎖に伴う資産の時価評価損益(法142条の8)の規定等(法第142条第2項の「別段の定め」に相当する規定)は,恒久的施設帰属所得に係る所得の金額の計算における独自の規定であるため準じて計算する規定からは除かれています。
別段の定め以外の恒久的施設帰属所得については、内国法人の所得計算の規定に準じて計算することとなりますが、その際の具体的な調整については法人税法施行令184条にて定められていますので参考にしてください。
いかがでしょうか。
複数回に渡り国内源泉所得について紹介してきました。
国際課税を考える上では、まずその所得が国内源泉所得に該当するかを検討し、次に源泉徴収されるか否かを確認してください。最後に租税条約は国内法より優先されるという大原則を念頭に、租税条約において国内法と異なる扱いが定められていないかどうかを確認するという流れで最終的な取り扱いを判断してください。
あすか税理士法人
【国際税務担当】街 有帆
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