前回に引き続き各種所得の解説をしていきます。
今回は国内源泉所得のうち「広告宣伝のための賞金、生命保険等に係る年金、金融所得」についてです。
国内において行う事業の広告宣伝のための賞金(事業の広告宣伝のための賞として支払われる金品その他経済的利益)は国内源泉所得とされ、源泉徴収の対象となります。(所得税法161条1項13号、所得税法212条1項)
1)広告宣伝のための賞金とは
「事業の広告宣伝のために賞として支払う金品その他の経済上の利益」とは,事業を営む者が商品又は事業の内容等を広く一般に知らせ顧客を誘引するために支払う賞金品等をいい,事業を営む者が自己の事業の広告宣伝のために直接支払うもののほか,次に掲げるものもこれに含まれます。(所基通204-31)
①商店会,同業組合等の業者団体がその所属する事業者の営む事業の広告宣伝のために支払う賞金品等
②事業を営む者又は事業を営む者の組織する団体から寄贈(低額譲渡を含む。)を受けた者が支払う賞金品等で,その寄贈者等の事業の広告宣伝のために支払うものと認められるもの
2)広告宣伝のための賞金等に該当しないもの
次の賞金等は上記1)②に該当するものを除き、広告宣伝のための賞金には該当しません。(所基通204-33)
①社会的に顕彰される行為,業績等を表彰するために支払う賞金品等で,社会通念上それが支払者の営む収益事業と密接な関連があると認められないもの
②使用者が自己の使用人等を対象とし又は団体が自己の構成員を対象として,その使用人等又は構成員の勤務,業務,競技又は演技等の成績を表彰するために支払う賞金品等
③行政官庁又はその協力団体が行政上の広報を目的として支払う賞金品等
国内にある営業所又は国内において契約の締結の代理をする者を通じて締結した生命保険会社又は損害保険会社の締結する保険契約これらに類する年金に係る契約で年金を給付する定めのあるものに基づいて受ける年金(いわゆる利殖年金)は国内源泉所得とされ、源泉徴収の対象となります。(所得税法161条1第14号、所得税法212条1項)
なお、この場合の年金には、年金の支払の開始の日以後に当該年金に係る契約に基づき分配を受ける剰余金又は割戻しを受ける割戻金及び当該契約に基づき年金に代えて支給される一時金が含まれます。
次の給付補填金、利息、利益、差益のうち国内の営業所で受け入れたものは国内源泉所得とされ、源泉徴収の対象となります(所得税法161条1項15号、所得税法212条1項)
①所得税法第174条第3号に掲げる給付補塡金(定期積金に係る契約に基づく給付補塡金)
②所得税法第174条第4号に掲げる給付補塡金(相互銀行の業務の契約に基づく給付補塡金)
③所得税法第174条第5号に掲げる利息(抵当証券に記載された債権の元本及び利息の支払い等に関する事項を含む契約により支払われる利息)
④所得税法第174条第6号に掲げる利益(金その他の貴金属その他これに類する物品の買入れ及び売戻しに関する契約で,当該契約に定められた期日において当該契約に定められた金額により当該物品を売り戻す旨の定めがあるものに基づく利益)
⑤所得税法第174条第7号に掲げる差益(外国通貨で表示された預貯金でその元本及び利子をあらかじめ約定した率により本邦通貨に換算して支払うこととされているものの差益)
⑥所得税法第174条第8号に掲げる差益(生命保険契約若しくは損害保険契約又はこれらに類する共済に係る契約で保険料等を一時に支払うもののうち保険期間等が5年以下のもの及び保険期間等が5年を超えるものでその保険期間等の初日から5年以内に解約されたものに基づく差益)
上記1~3に係る所得について、租税条約上は利子に該当するものは「利子所得」、その他は「その他所得」に該当するものと考えられます。
「利子所得」については源泉地ではない国にも課税権を認めている条約が多く、限度税率が定められていることも特徴です。
「その他所得」については原則として居住地国でのみ課税されるという規定となっていますが、国内にある営業所又は国内において契約締結の代理をする者を通じて締結された契約(つまり恒久的施設を通じて受け取るもの)については「事業所得」の条項に該当するとされています。
この場合、源泉地国での課税が認められますので、国内源泉所得として課税され、源泉徴収の対象となります。
いかがでしょうか。
見慣れない所得が多いとは思いますが、国際間でのこのような所得が発生した場合は契約の主体、恒久的施設の有無を確認し、租税条約のどの条項に当てはまるかを確認するように心がけてください。
あすか税理士法人
【国際税務担当】街 有帆
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