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国内税務2023.02.01 令和5年度税制大綱!~気になるポイント簡単解説~

2022年12月16日に、令和5年度税制改正大綱が公表されました。
その中から気になる改正をいくつか抜粋し解説していきます。

 

1.個人所得税


 

〇NISAの抜本的拡充・恒久化
資産を貯蓄から投資へ積極的に行い、資産所得倍増を目標にした改正となります。
【NISAとは】改正前のNISA、積立NISAについてまずはこちらをご覧ください!

【改正内容】
改正前のNISAの役割を引き継ぐ「成長投資枠」、積立NISAの役割を引き継ぐ「つみたて投資枠」として名称が変わり一つの新NISAとなります。
NISA・積立NISAそれぞれ口座開設可能期間が設けられていましたが、新NISAは恒久的な措置として口座開設可能期間の期限が設けていません。
今まではNISAと積立NISAのどちらかを選択しなければならず、併用することができませんでしたが、新NISAではその二つの枠を併用が可能となります!
さらに、改正前のNISAや積立NISAには、非課税投資期間や年間投資上限額、非課税限度額が設けられていましたが、今回の改正でその点が拡大されることも大きなポイントです。

それでは詳しく見ていきましょう。
非課税投資期間無期限となります。
年間投資上限額成長投資枠では年間240万円(改正前の2倍)、つみたて投資枠では年間120万円(改正前の3倍)まで投資が可能となります。
積立NISAで限度額を最大限に使っていた方は、毎月33,333を積立ていたかと思いますが、改正後は毎月最大10万円の積立が可能となります。
非課税投資限度額 :最大1,800万円となり、その内成長投資枠では1,200万円までとなります。二つの枠をうまく利用することで、より幅を持たせた資産運用が可能です。

また、現在NISAや積立NISAを既にしている場合は、改正後どうなるの?と思っている方もいるかと思います。
2023年末までに現行のNISA及び積立NISAを利用して投資した商品については、新NISAとは別枠で引き続き現行制度における非課税措置が適用されます。

【適用時期】
令和6年1月から適用する。

 

 

2.資産課税


 

〇相続時精算課税制度についての見直し
相続時精算課税制度をより利用しやすくすることで、資産移転の時期の選択により高齢者世代の保有する資産の若い世代への移転の促進を目的としています。

【相続時精算課税制度とは】
原則として60歳以上の父母または祖父母などから、18歳以上の子または孫などに対し、財産を贈与した場合において選択できる贈与税の制度です。
その後、贈与者である父母または祖父母などが亡くなった時の相続税の計算上、
相続財産の価額にこの制度を適用した贈与財産の価額(贈与時の時価)を加算して相続税額を計算する必要があります。

【改正内容】
・贈与税の計算方法の改正
相続時精算課税制度による贈与について、特別控除(累積2,500万円限度)に加え、基礎控除110万円ができるようになりました。
改正前:(贈与財産の価額の合計-2,500万円)×一律20%
改正後:(贈与財産の価額の合計-110万円-2,500万円)×一律20%
・相続時の贈与財産の加算額の改正
改正前:相続時精算課税の適用を受ける贈与財産の価額(贈与時の時価)の合計額
改正後:相続時精算課税の適用を受ける贈与財産の価額(贈与時の時価※)の合計額-毎年110万円
※贈与から相続までの間に贈与財産(土地または建物)が災害により被害を受けた場合には、その評価額を再計算できるようになりました。

【適用時期】
令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税又は贈与税について適用する。
令和6年1月1日以後に生ずる災害により被害を受ける場合について適用する。

 

〇生前贈与加算期間等についての見直し
相続前3年以内に暦年贈与によって生前に贈与を受けていた財産については、相続時の相続財産に加算する必要がありました。
今回の改正では、より早い段階から次世代へ資産移転を促進することを目的として、相続時に加算する必要がある生前贈与の加算期間が延長されました。

【改正内容】
・相続時加算期間
改正前:相続前3年以内
改正後:相続前7年以内
延長した4年間の贈与については、総額100万円まで相続財産に加算しない措置が取られます。
つまり、令和8年12月31日までに相続が開始した場合には、今回の改正の影響はありません。それ以降に相続が開始した場合には、段階的に今回の改正の影響がでることになります。

【適用時期】
令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税について適用する。

 

〇教育資金の一括贈与の非課税措置の見直し
節税的な利用につながらないよう措置の見直しを行った上で、高齢者世代の保有する資産の若い世代への移転を促進するため、適用期限を3年延長(令和6年3月31日まで)。

【教育資金の一括贈与の非課税措置とは】
直系尊属(父母または祖父母)が、30歳未満の子や孫のために将来の教育資金を一括して贈与し、金融機関に教育資金のための口座を開設等した上で、その口座から教育資金を支出していくものです。
金融機関を経由して一定の書類を添付した教育資金非課税申告書を提出することで、その一括贈与の金額が1,500万円までの場合、贈与税が非課税となります。
しかし、受贈者が30歳に達した場合等には、教育資金の残高に贈与税が課税される。

【改正内容】
・受贈者が30歳に達した場合等の贈与税計算の際の税率の変更
改正前:①受贈者の年齢が18歳以上…特例税率、②①以外…一般税率
改正後:一般税率に統一
・贈与者が死亡した場合の相続税の課税対象の拡大
贈与された教育資金が、贈与者が死亡した際に使い切れず残っていることがあります。その場合、その残っている教育資金は、贈与者の相続税の課税対象となります。
改正前:受贈者が贈与者の死亡日において、 ①23歳未満である場合、②学校等に在学している場合、又は③教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受けている場合は、相続等によって取得したものとはみなされませんでした。
改正後:贈与者の死亡に係る相続税の課税価格の合計額が5億円を超える時は、
上記の①~③であっても相続等によって取得したものとみなされることとなりました。

資産を多く持つ富裕層の方が有利にならないよう、非課税となる条件を厳しくする改正となっています。

【適用時期】
令和5年4月1日以後に取得する信託受益権等に係る贈与税について適用する。

 

3.消費税


 

令和5年10月1日より始まるインボイス制度についての改正。いよいよです。

〇適格請求書発行事業者となる小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置
【改正内容】その課税期間における課税標準額に対する消費税額から控除する金額を、当該課税標準額に対する消費税額に8割を乗じた額とすることにより、納付税額を当該課税標準額に対する消費税額の2割とすることができることとなります。この経過措置は、確定申告書にその旨を付記するものことで適用を受けることができます
【対象者】免税事業者が適格請求書発行事業者となったこと又は課税事業者選択届出書を提出したことにより事業者免税点制度の適用を受けられないこととなる事業者→今まで消費税の免税事業者でインボイス制度導入により課税事業者となった事業者が対象です!
【適用時期】令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間

 

〇適格請求書発行事業者登録制度についての見直し
【改正内容】
・免税事業者が課税期間の初日から登録を受けようとする場合には、登録申請書を課税期間の初日から起算して15日前の日までに登録申請書を提出する必要があります。改正前は、当該課税期間の初日の前日から起算して1月前の日であったため、より適格請求書発行事業者への登録をしやすい状況となりました。
・令和5年10月1日から適格請求書発行事業者の登録を受けようとする事業者は、令和5年3月31日までに登録申請書を提出することが原則です。しかし、その申請期限までに申請書を提出することができなかった事業者は、元々登録申請書に「困難な事情」を記載する必要がありました。
今回の改正では、令和5年4月1日以後に「困難な事情」の記載がない登録申請書が提出されたとしても、令和5年9月30日までの申請については、インボイス制度が開始する令和5年10月1日を登録開始日として登録されることとなります。

 

4.まとめ


個人的にNISAの改正は、限度額が引き上げられたところで、各個人で貯蓄(投資)に回せる資金は限られているので、富裕層の方向けかなと思いました。令和6年1月1日以降に贈与をする際には、自分にとって相続時精算課税を選択する方が有利であるのか、暦年課税を選択する方が有利であるのかの判断が重要になってくると考えられます。

 

あすか税理士法人

【スタッフ】渋谷優果