毎年大きな税制改正がありますが、令和5年も様々な改正が入る見込みです。まだ確定した税制大綱ではありませんが、先取りで令和5年の税制改正大綱について国際税務の分野を中心に確認してみたいと思います。
(1)トリガー税率の引き下げ
ペーパーカンパニーやキャッシュボックス、又はブラックリスト国に所在する特定外国関係会社については、従来法人税等の負担率が30%未満である場合、会社単位の合算課税対象となっていました。
令和5年の税制改正大綱によれば、30%のトリガー税率が27%に引き下げられる見込みです。
この改正が通れば、ドイツやカリフォルニア州に子会社がある法人で影響が出る可能性があります。
改正の適用時期は2024年4月1日以後に開始する内国法人の事業年度となる 予定です。
(2)書類提出要件の簡素化
現行法令では、トリガー税率未満のすべての外国関係会社について財務諸表や税務申告書を提出する義務がありました。海外子会社が多いグローバル企業にとっては、この添付資料の多さが非常に大変でした(電子申告する際の添付データの容量も気にしなくてよくなるかもしれませんね)。
2024年4月1日以後に開始する内国法人の事業年度より、合算課税の適用がない外国関係会社(経済活動基準を満たす外国関係会社)に関しては、財務諸表を添付ではなく保存で良くなる見込みです。この改正の対象となる合算課税の適用がない外国関係会社には、部分適用対象金額(日本で加算される特定の所得)が2,000万円以下のため結果として加算対象から除外される外国関係会社も含みます。
ただ、注意が必要なのは「保存要件は残ること」です。申告添付なので頑張って財務諸表を収集していた場合でも、税制改正があったとしても海外子会社からは必要な書類を変わらず提供してもらうよう働きかけることには変わりがないと考えた方が良いと思います。
以前のBlogでも触れましたが、国際的な法人税率の不均衡による過度な節税策に対する政策のひとつとして、グローバル・ミニマム課税を導入することが主要国間で合意され、そこには日本も加わっています。当該合意に基づいて、日本でも税制改正が行われる予定です。
税制改正大綱では『各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税(仮称)』の創設とされています。
この新たに創設される税制では、軽課税国に所在する子会社の実効税率が15%(※)になるまでの差額を親会社(日本)で納めることとなります。
(※)15%×90.7%が国税、15%×9.3%が地方税(地方法人税)となります。
例えば現地の実効税率が10%である場合は、日本で15%-10%=5%の追加納付が行われることとなります。この納付が生じる場合だけ申告すればよい制度になっており申告納期限は1年3カ月と通常に比べると長い期間となっています。
適用対象法人は、直前4事業年度(対象会計年度)のうち連結総収入金額が7.5億ユーロ以上の年度が2年度以上ある多国籍企業グループ等に属する日本法人で、軽課税国に所在する子会社等の持分を直接又は間接に有する最終親会社等です。
連結総収入金額が7.5億ユーロ以上とのことで、かなり大きいグループ企業だけが対象となる可能性があります。
この制度も、外国子会社合算税制の見直しと同様、2024年4月1日以後に開始する対象事業年度から適用されます。
続きまして、国際税務以外の主たる税制改正大綱の内容をザっと確認したいと思います。
(1)所得税
(2)法人税
また自己発行暗号資産の取得価額は、その発効に要した費用により構成されることが明文化される見込みです。
(3) 相続税
(4) 消費税
如何でしたでしょうか。
私個人的には「外国子会社合算税制見直し」「相続時精算課税で110万円非課税」「暦年贈与課税の持ち戻し計算を7年に伸長」「税込1万円以下返還インボイス発行不要」が大きな改正になるかなと感じました。実際の改正、通達の整備等を見守り、新しい情報が入ればBlogしたいと思います。
あすか税理士法人
【国際税務・国内税務担当】高田和俊
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