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国際税務2023.01.11 国際税務の基礎⑦~非居住者が課税される国内源泉所得その5(公社債利子)~

前回に引き続き非居住者が課税される国内源泉所得について解説していきます。今回は公社債利子です。

利子として規定されているもののうち、割引債の償還差益は利子に含まれないと勘違いしているケースがありますので今一度取扱いをご確認ください。

 

1.公社債利子とは


 

1)公社債利子とは

国内源泉所得に該当する公社債利子は所得税法第23条1項において次のように規定されています。

① 日本国の国債若しくは地方債又は内国法人の発行する債券の利子
② 外国法人の発行する債券の利子のうちその外国法人の恒久的施設を通じて行う事業に係るもの
③ 国内にある営業所,事務所その他これらに準ずるものに預け入れられた預貯金の利子
④ 国内にある営業所に信託された合同運用信託,公社債投資信託又は公募公社債等運用投資信託の収益の分配

 

2)割引債の償還差益の取扱い

所得税法及び法人税法上,割引債の償還差益は「国内にある資産の運用又は保有による所得」とされています(所法161条1項2号,法138条1項2号)。
この償還差益については,別途租税特別措置法の規定に基づき,割引債の償還時に償還金に係る差益金額に対し15%の源泉徴収を行うこととされていますので、源泉徴収漏れに注意が必要です(措法41条の12の2)。

 

 

3)租税条約上の取扱い

上記が国内法の取扱いですが、同時に租税条約における利子の取扱いを確認する必要があります。

 

① 利子等の範囲
所得税法上は,公社債の利子,預貯金の利子並びに合同運用信託,公社債投資信託及び公募公社債等運用投資信託の収益の分配について「公社債等の利子等(所法161条1項8号)」と規定し,「貸付金の利子(所法161条1項10号)」とは区分して規定しています。一方で租税条約上はこれらの利子等を同一のカテゴリーに属するものとして包括的に規定している例が多いです。

 

例えば、日米租税条約では利子の範囲を以下のように規定しています。

この条において、「利子」とは、すべての種類の信用に係る債権から生じた所得、特に、公債、債券又は社債から生じた所得及びその他の所得で当該所得が生じた締約国の租税に関する法令上貸付金から生じた所得と同様に取り扱われるものをいう。

 

また日本が締結する租税条約においては,債務者の居住地国を所得の源泉地国とする債務者主義が一般的となっています。

 

② 割引債の償還差益の取扱い
割引債の償還差益については,利子等として取り扱っている条約(アメリカ、イギリスなどほとんどの国)を締結している国と特段の規定がない条約を締結している国とがあり,次のイからハのように区分されます。

イ 利子等として取り扱っている場合
割引債の発行時に18%(特定のものは16%)の税率で源泉徴収をし,償還時に所定の手続を経た後,租税条約上の限度税率との差額について還付することとなります。

 

例)日米租税条約

「利子」とは、公債、債券又は社債から生じた所得(公債、債券又は社債の割増金及び賞金を含む。)~

 

ロ 我が国の国内法を適用する場合
租税条約上の規定がないか,又は租税条約のその他所得条項の適用により源泉地国課税が認められる場合には,原則,割引債の償還時に15%の税率で源泉徴収をする必要があります。なお,一定の割引債は,その発行時に18%(特定のものは16%)の源泉徴収をする必要があります。

 

例)日ブラジル租税条約(規定なし)

「利子」とは、公債、債券又は社債その他すべての種類の信用に係る債権からから生じた所得~

 

ハ その他の所得に該当し,居住地国課税
租税条約上のその他所得条項の適用により居住地国のみで課税となる場合には,割引債の発行時に,いつたん18%(特定のものは16%)の源泉徴収をし,償還時に還付手続を経て源泉徴収をした所得税の全額を還付することにより,最終的に免税となります。

 

 

いかがでしょうか。

割引債については租税条約は適用されますが、手続きが通常より煩雑となりますのでご注意ください。

 

 

あすか税理士法人

【国際税務担当】街 有帆

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