例えば、資本関係がない法人同士が合併する場合において、適格合併(税制上特典のある合併)となるためには「共同事業要件」というものを満たす必要があります。
「共同事業要件」のうちの一つに「従業者引継要件」というものがあります。
これは、
被合併法人(合併される側の法人)の合併直前の従業者のうち、おおむね80%以上が合併後に合併法人(合併する側の法人)の業務に従事することが見込まれていること
というものなのですが、合併直前に被合併法人から一旦全員退職し、合併法人に新たに雇用される場合はどうなるのでしょうか。
どうして一旦退職させるのかという話ですが、例えば被合併法人から退職金を支給してしまいたい、合併法人で退職給付債務を引き継ぎたくない、といったニーズもあるかと思います。
通常合併する場合は雇用契約もそのまま継続して引き継ぎますので(新たに合併法人で雇用契約しなおすのはめんどうなので)おおむね8割の従業員を引き継ぐ場合は、特に考えることなく「従業者引継要件」を満たすことができます。
被合併法人との間で締結された雇用契約を終了し、その雇用契約は合併法人に承継されないことから、合併法人は被合併法人の従業者を引き継いでおらず、従業者引継要件を満たしていないとも考えられるかと思います。
さてここでもう一度「従業者引継要件」の文言を確認してみましょう。
被合併法人(合併される側の法人)の合併直前の従業者のうち、おおむね80%以上が合併後に合併法人(合併する側の法人)の業務に従事することが見込まれていること
「業務に従事することが見込まれていること」ということですので「雇用契約を引き継ぐこと」までは要求されていません。
すなわち、被合併法人から一旦退職して、合併法人で新たに雇用したとしてもおおむね8割以上であれば「従業者引継要件」を満たすこととなります。
この判断を間違えてしまうと「非適格合併」と取り扱ってしまって税務的に大きく損をしてしまうかもしれません。
組織再編税制は慣れていないと大きな判断ミスをしてしまう可能性がありますのでご注意ください。(〇か×で大きく税負担が変わります)
無対価合併の適格判定についてはこちらをご覧ください。
あすか税理士法人
【国内税務担当】高田和俊
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