前回のBlogで「外国税額控除の対象となり得る『外国法人税』」について説明致しました。
「税」と名が付けば何でもOK!では無いですし、附加税は対象になるけれど、附帯税は対象にならないなど、内容をしっかり精査する必要がありました。
外国税額控除の対象となり得る税金について前回のBlogで確認したわけですが、実際の外国税額控除計算においては、「外国法人税」から一定金額を控除した「控除対象外国法人税額」が外国税額控除の対象となり、更にその上で実際に控除出来るのは「控除限度額」までとなります。
そこで今回のBlogでは『控除対象外国法人税額』と『控除限度額』について検討したいと思います。
法人税法第69条第1項は下記のように規定されています(一部筆者編集)。
内国法人が各事業年度において外国法人税(前回Blogで説明したもの)を納付することとなる場合には,当該事業年度の所得の金額につき各事業年度の所得に対する法人税額のうち当該事業年度の国外所得金額に対応するものとして政令で定めるところにより計算した金額(「控除限度額」)を限度として,その外国法人税の額(一定の外国法人税の額※を除いた「控除対象外国法人税の額」)を当該事業年度の所得に対する法人税の額から控除する。
※ 一定の外国法人税の額
・その所得に対する負担が高率な部分として政令で定める外国法人税の額
・内国法人の通常行われる取引と認められないものとして政令で定める取引に基因して生じた所得に対して課される外国法人税の額
・内国法人の法人税に関する法令の規定により法人税が課されないこととなる金額を課税標準として外国法人税に関する法令により課されるものとして政令で定める外国法人税の額
・その他政令で定める外国法人税の額
つまり、外国法人税に該当しても、一定の外国法人税は「控除対象外国法人税」から外れることとなります。
以下、外国法人税額から控除対象外国法人税額を計算する上で、控除するものについて一つずつ確認します。
(1)高率な部分の外国法人税
法人税法施行令第142条の2は下記のように規定されています。
法第69条第1項に規定するその所得に対する負担が高率な部分として政令で定める外国法人税の額は,同条第1項に規定する内国法人が納付することとなる外国法人税の額のうち当該外国法人税を課す国又は地域において当該外国法人税の課税標準とされる金額に100分の35を乗じて計算した金額を超える部分の金額とする。
35%が高率かどうかの分岐点です。なお、35%を超える外国法人税はその全額が対象から外れるわけでは無く、あくまで35%を超える部分だけが控除対象外国法人税の対象から除かれる点にご注意下さい。
この35%高率判定は、一の外国法人毎に、かつ当該外国法人税の課税標準とされる金額毎に判定することとなります(法人税法基本通達16-3-22)。
なお35%判定を行うタイミングについては、予定納税については行わず、確定申告時に予定納税控除前の年税額ベースで行います(法人税法基本通達16-3-23)。
(2)通常行わない取引に係る外国法人税
「通常行わない取引」がイメージしにくいと思いますが、下記が該当します。
A)外国法人 X から、内国法人が借入をおこし、その資金を外国法人 Y(外国法人 X と特殊な関係あり)に貸し付けた際の貸付利息に係る源泉税
B)外国法人 X から、内国法人が対外国法人 Y(外国法人 X と特殊な関係あり)の債権を譲渡してもらい、内国法人が有する対外国法人 Y 債権の利息に係る源泉税
→A)B)共に、外国法人同士で取引できるのに、敢えて日本法人をかませているイメージです。
これらにより生じた外国法人税は控除対象外国法人税の対象から外れることとなります。
(3)日本の法令により日本法人税が課されない所得を課税標準として課される外国法人税
外国税額控除は国際的二重課税を排除するために設けられた制度ですので、日本の法令で日本法人税が課税されない国外所得を起因とした外国法人税は、控除対象外国法人税額の対象から外れることとなります。
具体的には下記の外国法人税が該当します(法人税法施行令第142条の2第7項)。
・みなし配当に係る外国法人税の額
・移転価格課税に関して日本側で減額更正が行われ、しかし応分を外国居住者に支払わない場合に、みなし配当として課される外国法人税の額
・外国子会社配当益金不算入制度の対象となる配当に係る外国法人税の額(日本サイドで課税される配当の5%に対応する部分を含む)
・内部取引につき課される外国法人税の額
(4)その他政令で定める外国法人税の額
上記(1)~(3)の他、下記についても控除対象外国法人税額の対象から外れることとなります。
・「外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)の適用対象となった外国法人から受ける配当等の額で益金不算入とされたもの」を課税標準として課される外国法人税の額
・租税条約を締結している相手国等において課される外国法人税の額のうち、その租税条約の規定によりその相手国等において課することが出来るとされる額を超える部分に相当する金額又は免除することとされる額に相当する金額
如何でしょうか?
「外国法人税の額」ー「上記(1)~(4)に該当する金額」=「控除対象外国法人税額」
となる点、しつこいですが最期に申し添えます。
1.で「控除対象外国法人税額」について確認しましたが、日本の法人税から無条件で「控除対象外国法人税額」の全額が控除されるわけではありません。
控除のキャップである「控除限度額」が存在し、最終的に
「控除対象外国法人税額」と「控除限度額」のいずれか小さい金額
までが外国法人税額を受けられることとなります。
よって、次は「控除限度額」について確認したいと思います。
控除限度額については、まず結論となる算式を確認しましょう。
外税控除前の法人税額のうち、国外所得割合までを控除限度額とするイメージですが、これは外国税額控除の趣旨に基づきます。
日本の外国税額控除は、日本目線で考えた時の国際的二重課税を排除しようという趣旨なので、日本法人税のうち海外で得た所得に対応する部分(控除限度額)を超える部分までは外国税額控除出来ませんよ、という意味合いです。
なお、上記算式の「日本法人税額」は留保金課税や諸税額控除等を適用しないで計算した場合の法人税額となります。
全世界所得金額は法人税計算を行う中で自然と求められますが、分子の「調整国外所得金額」はまたいくつかポイントがあります。
この調整国外所得金額については次回のBlogで説明致します。
あすか税理士法人
【国際税務担当】高田和俊
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